vs ホワイトネクサス(戦闘者:ヴァイス&ヴァイスリッター・アイン)

『ネーゼ殿下とフェオさんに見ていただきましたわ、お姉様』

 悲しげな表情で、シュシュはヴァイスに告げた。

『お姉様から賜った“ヴァイスリッター・ツヴァイ”ですが……憑り付いた怨霊は祓っていただいたものの、「装甲やフレームにガタが来ていた」とフェオさんから言われまして、その……。出撃、不可能でございます……』

『分かったわ。では、次からは私が出撃するわね。シュシュ、貴女にはオペレーターの任をお願いしたいのだけれど……まず最初に、“ヴァイスリッター・ツヴァイ”に感謝を告げなさい』

『はい、お姉様』

 シュシュは格納庫に向かい、ヴァイスリッター・ツヴァイに「今までありがとう」と述べる。

 そして“ベル”を握りしめ、ホテルへと転移した。


     *


「来たわね、シュシュ。これで安心して戦えるわ」

 そこには、既にヴァイスが待ち構えていた。

「ええ、お姉様。ご武運を」

「よろしく頼むわね」

「はい!」

 自らが慕う姉に期待されたのだ。シュシュのやる気は一気に最高潮になる。

「では、行って参ります」

 ヴァイスも“ベル”を握りしめると、戦場へと戻った。


     *


「では、頼みますわね。ヴァイスリッター・アイン」

 搭乗を完了したヴァイスは、格納庫から機体を発進させる。

 低高度での飛行を開始し、北方へと進む。

『えー、テステス。シュシュ、聞こえたら返事をお願い』

『聞こえております、お姉様』

 念話による通信も良好だ。

『問題無いわね。各部チェックの結果も良好……』

『お姉様、高高度に敵が! 高度3,500(m)、距離5,000(m)!』

『レーダーでも確認したわ。いるわね……』

『この進路、どうやら拠点ではなくお姉様を狙ってらっしゃる様ですわね』

『素敵なお方。生憎、もう体も心も許した殿方はいるのですが、心意気は買わせていただきましょうか……うふふ』

 ヴァイスは柔らかく微笑むと、高度を上昇させてから敵に接近した。


『どなたかしら、わたくしを狙っているお方は? 逃げも隠れもしませんわ、名乗り出なさいな』

 拡声機能をオンにして高らかに宣誓するヴァイス。

『その機体、私に間近で見せてもらおう』

 男の声が響く。

 と、そこには赤色に黄色いラインマーキングを施した機体がいた。

『あら。貴方でしたの、わたくしを狙っているのは? わたくしはヴァイスシルト・リリア・ヴァレンティア。異世界の王国、ヴァレンティア王国の第一王女ですわ』

『王女殿下おん自ら名乗られるとは痛み入る。私は……そうだな、ノイベルトとでも呼んでもらおうか。だが……一つだけ、残念な知らせがある』

『何でしょうか?』

『私は女ではなく、その機体を狙っていたのだよ。ヴァイスシルト殿下』

 ノイベルトは冷ややかな声で告げる。

『そういう訳だから、早い所明け渡してもらおうか』

『あら、同じロボット乗りならば、戦いで白黒はっきりさせるべきではなくて?』

『ロボットではない、鋼鉄人形だ! 間違えるな!』

 と、ノイベルトが激高した。

『あらあら。それは申し訳ありませんわね。して、その機体……名前は何と言うのですか?』

『“ホワイトネクサス”だ』

『そのような派手なカラーリングで?』

『デモンストレーション用のカラーリングだ! 一般機はちゃんと白いぞ! さあ、もういいだろうヴァイスシルト殿下?』

『ええ。わたくしの“ベル”を奪う事が出来たら、どうぞこの“ヴァイスリッター・アイン”をお好きになさいな』

『その名前……覚えたぞ』

 ヴァイスとノイベルトが覚悟を決め、互いの得物を構える。

 と、アナウンスが響いた。

「ただいま、J陣営の“ヴァイスシルト・リリア・ヴァレンティア並びにヴァイスリッター・アイン”と、❤陣営の“ホワイトネクサス並びにドクター・ノイベルト”との決闘が成立いたしました。繰り返します。ただいま、J陣営の“ヴァイスシルト・リリア・ヴァレンティア並びにヴァイスリッター・アイン”と、❤陣営の“ホワイトネクサス並びにドクター・ノイベルト”との決闘が成立いたしました。これよりカウントダウンを開始いたします。5, 4, 3...」

『コクピットは胸部ですわ。そちらは?』

『同じだ』

「2, 1, 0! 決闘開始!」

『参りますわよ!』

 アナウンスを聞き届けたヴァイスは、先手必勝とばかりに光条レーザーを放つ。



 だが、翼状のブースターから噴射炎が見えたかと思うと、ホワイトネクサスは軽やかに光条レーザーを回避していた。

『侮るなよ、ヴァイスリッター・アイン』

 回避シーケンスの終了後、ホワイトネクサスは素早く光剣を構え、ヴァイスリッター・アインに接近する。

『まずは一撃!』

 正面から仕掛ける。

 が、魔力を纏わせたヴァイスリッター・アインの氷剣により、防御されてしまった。

『「侮るな」? それはわたくしの言葉ですわ』

 鍔迫り合うと同時に、蹴りを叩き込む。

 ホワイトネクサスが衝撃で吹っ飛び、体勢を崩した。

『ぐっ……! やはりと言うか何と言うか、ホワイトネクサスよりも性能は上か!』

 だがすぐに態勢を整え、光剣を収納して76.2mm速射砲を構える。

『ならば、これはどうかな……!』

 素早く2発放たれる。

 しかしどちらも、障壁で弾かれてしまった。HESH粘着榴弾が無意味なものと化す。

『効きませんわよ……!』

 ヴァイスも素早く応射する。

『ちぃっ……!』

 ノイベルトが速射砲を投棄しながら回避する。ヴァイスリッター・アインの剣先から放たれた光条レーザーは、速射砲を丸ごと呑み込んだ。

(外した……? 並の使い手ではありませんわね……)

(危なかった……。あの反応の速さ、間違いなく“の最強の操縦士ドールマスターの息子”に匹敵するな……!)

 互いに一瞬の雑念を浮かべるが、すぐに目の前に意識を引き戻す。

『はぁあっ!』

『負けられぬ……ッ!』

 再びの交錯。

『お姉様、押し切ってくださいませ!』

(!)

 だが、シュシュの指示に従ったヴァイスが、魔力を有りっ丈氷剣とブースターに回す。

 強引に押し切るつもりだ。

『クソッ……! 受け、流さねば……!』

 ヴァイスの意図を察したノイベルトも、全霊力をホワイトネクサスに回す。

(しかし……あの優雅な見た目に反して、何と言う力だ……! いくらこのホワイトネクサスが相対的に小型だとしても、これは規格外だ……潰されるッ!)

 もはやこれまでと判断したノイベルトは、ブースターの向きを転換する。

 一気に高度を落とすが、結果的に受け流す形となった。


『ふう……。しかし、逃げる過程でメインカメラをやられたか』

 ノイベルトの言葉通り、ホワイトネクサスの頭部に大きな刀傷が刻まれていた。

『ならばサブカメラに切り替える』

 そう。

 ホワイトネクサスのカメラは、頭部に限定されていた訳ではない。発光部位付近に点在する予備のカメラを用いて、視界の把握は引き続き可能である。

『……ッ、アラートか!』

 警告に反応するが、遅かった。

 左腕ごと、盾を持って行かれる。

『あら、残念ね。今の一撃で屠っていたはずなのですけれど』

『生憎、私は美しい機体を前にするとしぶとくなる性分でね』

『あらあら、とんだ変態ね。わたくしの騎士様とは別のベクトルで、理性のタガが外れておりますのね?』

『そうだとも。さあ、決着としようか』

『ええ』

 ホワイトネクサスが無事な右腕で光剣を構え、突進する。

 ヴァイスリッター・アインもまた、両手で氷剣を構えて疾駆した。

『これで――』

『終わりだ!』


 三度、剣が交錯する。


 程なくして、ホワイトネクサスの胸部が真っ二つに分断され、ズルリと落下した。

「決闘終了。勝者、“ヴァイスシルト・リリア・ヴァレンティア並びにヴァイスリッター・アイン”。繰り返します。勝者、“ヴァイスシルト・リリア・ヴァレンティア並びにヴァイスリッター・アイン”。これにより、J陣営に1のアグニカポイントが付与されました」

『ドクター・ノイベルト……。貴方の機体への、いえ、鋼鉄人形への愛、認めなくてはね……』

 ヴァイスは落下するホワイトネクサスの残骸を見ると、ボソリと呟いた。


     *


 その頃、真紅の機体が近くの地上を歩いていた。

「フフ、私が一人死んだか。だが、まだあの機体を確保する機会はある」

 が、一人不気味に笑っていた。



作者からの追伸


 有原です。

 はい、早速依頼させていただきました。


 率直な話、オレンジネクサスやブルーネクサスでは、ここまで行かなかったはずです。それだけドクター・ノイベルトがトンデモ改造を行った、という訳ですね。


 ところで、そこにいる君たちはナニやってんのかな?


(少々過激な寸劇、開始)

---


リナリア・シュヴァルツリッター

「あっ、気づかれてしまいましたか」


ブランシュ

「叔母様……❤」


ブレイバ

「姫様へのプレゼントってこれですか、ドクター」


ドクター・ノイベルト

「ああ。正直“抱き枕”というのは専門外だったが、『出来るものは全てこなす』のが私の信条だからな」


ブランシュ

「ああ、ララ叔母様ララ叔母様ララ叔母様……! 可愛いですわ……!」


ブレイバ

「しかもバリエーションが5種類(ドレス、戦闘服、露出多めのビキニ、幼稚園児の服、おしゃぶり咥えた赤ちゃんの姿)って……」

※全てブランシュの要望を反映した衣装です。何なのだ、この性癖を抱えた姪は!?


ドクター・ノイベルト

「助手のゲープハルトにも手伝わせた」


ドクター・ゲープハルト

「まったく、先生の気まぐれにも困ったものです」


リナリア・シュヴァルツリッター

「やれやれ、今日も今日とて自重なされないのですね、皆様……」


リナリア・バーンスタイン

「私のマスターが、小石を拾ったぞ。最早逃げても無意味だな、ノイベルトにゲープハルトとやら。ちなみに、ブランシュ殿下は後で説教だそうな」


---

(少々過激な寸劇、終了)


 さて、ゲリラ的な寸劇はこれでおしまいです。今回はね。


 という訳で、今回はここまで!

 さて、投擲される石から全力で逃げるか。


追伸:暗黒星雲様。

「俺アン」最終話の時点で、西暦何年かを教えてはいただけますでしょうか?

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