(過激描写注意)vs エリダーナ・セイバー

「まだいたとはな。しかし動かねえってのは、妙だな……」

 眞白を強引に降ろし、一人になった龍野。

 セイントβとの戦闘終了後、突如出現した紺色の騎士は、地上に降りてから一歩も動いていなかった。

『ヴァイス。あの騎士から、“ベル”の反応はあるか?』

『あるわね』

『となると……決闘の申し込みは確定だな』

『ええ。ところで、ウィットのセンスが磨かれてきたわね龍野君』

『どういう事だ?』

『騎士だから“決闘”。なるほどそれは、しゃれているじゃないの』

『そういう事かよ……』

 嘆息した龍野だが、気持ちが切り替わった。

 拡声機能をオンにし、紺色の騎士に呼びかける。

『あー、もしもしそこの機体。俺は須王龍野、陣営はJ。機体はシュヴァルツリッター・ツヴァイと言う。貴公との決闘を望む』

 言葉を区切り、反応を見る。

 と――

『あっはははは! 何その騎士様のような話し方!? 見た目だけじゃなくて、中身まで騎士様だったよこの機体とパイロット!』

 女性の声が響いた。

『誰だ!?(また女か! しかも玲香とは違う――いや、違うには違うが、気配が似ているな。ところでその口ぶり……まさか俺を、知っているのか?)』

『オレ? オレの名前はディノ。そしてこいつは、“エリダーナ・セイバー”さ』

『エリダーナ・セイバー? 俺の仕留めた、あのエリダーナの亜種か? だが、三つ目なデザインは似ているな』

『そうだよ、騎士様。けど、あんなゴリラとは違うさ。見た目も、中身もね』

『その言葉、承諾と受け取ろう』

『いいよ。オレはソリティア・なんちゃらってヤツの陣営。♣️クラブ……だったかな?』

『あいよ』

 龍野が承諾の意を伝えると、アナウンスが響いた。

「ただいま、J陣営の“須王龍野並びにシュヴァルツリッター”と、♣️陣営の“ディノ並びにエリダーナ・セイバー”との決闘が成立いたしました。繰り返します。ただいま、J陣営の“須王龍野並びにシュヴァルツリッター”と、♣️陣営の“ディノ並びにエリダーナ・セイバー”との決闘が成立いたしました。これよりカウントダウンを開始いたします。5, 4, 3...」

『行くぜ』

 シュヴァルツリッター・ツヴァイが双剣を構える。

『勿論さ。オレも正々堂々戦うよ』

 対するエリダーナ・セイバーも、実体剣と盾を構える。

「2, 1, 0! 決闘開始!」



『覚悟!』

 素早く距離を詰め、速攻を仕掛ける。二振りの大剣に魔力を纏わせ、短期決戦を狙う龍野。

『またかよ、騎士様。けど、その心構えは立派だねぇ!』

 素早く実体剣を打ち込むシュヴァルツリッター・ツヴァイとエリダーナ・セイバー。

『まだまだ!』

 だが、龍野は二刀流という特性を活かしてもう一撃撃ち込む。

『ぐっ!』

 超振動を与えられた実体剣といえども、刀身が歪み始めた。

『もらうぜ!』

 シュヴァルツリッター・ツヴァイの右腕が、下がり始める。

重量調節グラビティ! 大剣の重量を10tにしろ!)

 繰り出す突きに合わせ、重量調節グラビティを発動する龍野。

(まずい――!)

 致命の一撃と察知したディノは、実体剣を捨てて勢いよくバックステップする。

 龍野の一撃は装甲を掠めるが、大したダメージは与えられていない。

『やるな。重い一撃のはずだったんだが』

『まあな。けど、嫌な予感がしたからな』

 エリダーナ・セイバーは背面から、ライフルを取り出して構える。

『まともにやり合うのはマズいからな、こうするぜ!』

 ホバー移動しつつ、距離を取りながら射撃を始める。

 だが、案の定障壁に阻まれた。

『!? オレの攻撃を通さねえってのか……!』

『そういうこった。けど、射撃戦を望むなら付き合うぜ』

 シュヴァルツリッター・ツヴァイが右腕の大剣を構え、照準を合わせる。

『クソがっ……!』

 素早く対戦車誘導弾を発射するエリダーナ・セイバー。

 だが同時に、龍野のシュヴァルツリッター・ツヴァイも光条レーザーを放った。

『くっ!』

 エリダーナ・セイバーが素早く構えた盾で、強引に弾き飛ばす。

『大した事ねえな』

 対戦車誘導弾も障壁に弾かれる。

『危なかったぜ、騎士様……!』

『まあな。コイツは特別製だからな』

『それを操る騎士様も特別だろ……!(どんな人間なんだ? オレに姿を見せてくれ……!)』

 もはや無意味と悟ったのか、エリダーナ・セイバーが携行火器を全て投棄する。

 そして空いた右手にレーザーソードを装備し、シュヴァルツリッター・ツヴァイに突っ込んできた。

『行くぜ騎士様……決着の時間だ!』

『ああ、来やがれディノ! エリダーナ・セイバーごと受け止めて、ぶった切ってやらぁ!』

 エリダーナ・セイバーを迎え撃つシュヴァルツリッター・ツヴァイ。

『はああっ!』

 レーザーソードが振るわれた。

『残念……!』

 だが、魔力を纏わせた大剣で防御するシュヴァルツリッター・ツヴァイ。

『もう一丁……!』

 右腕の大剣を振るい、エリダーナ・セイバーを両断せんと試みる。

『まだ終わっちゃねえ……!』

 しかし、エリダーナ・セイバーも盾で防御する。

 物理防御とビームシールドの併用により、魔力を纏わせた大剣でも切れなくなっていた。

『だったら……!(重量調節グラビティ発動……! 100tの機体で圧し潰す……!)』

 シュヴァルツリッター・ツヴァイの重量を増やし、エリダーナ・セイバーを圧し潰そうと試みる龍野。

 誰がどう見ても、一方的な展開であった。


     *


「ぐっ……!」

 フレームへの強烈な圧力を知らせるアラートが、モニターのほぼ全体を覆っていた。

「この機体もそろそろ限界かな……! けど、まだまだ負けないぜ……!」

 少しでも機体の負荷を軽減する体勢にしようと、エリダーナ・セイバーを駆動させる。

「……ん?」

 だが、シュヴァルツリッター・ツヴァイの右腕の剣がわずかに動いているのを見つけた。

「まさか……!」

 と、全てを察したディノ。

 大剣は盾を滑るように動き――


 やがて、エリダーナ・セイバーの肩部を抉った。


「ぐっ!」

 集中が断ち切られる程の衝撃が、ディノを襲う。

 霊力で強引に防御してはいるが、いつまで持つかわからなかった。

 と、シュヴァルツリッター・ツヴァイが脚を引いた。

(何だよ、今度は……!?)

 再び、衝撃がディノを、エリダーナ・セイバーを襲う。

「がはっ……!(蹴られたってか……! チクショウ、脱出だ……!)」

 背面装甲をパージし、手動で強引に脱出する。


「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」

 脱出と退避が完了すると同時に、エリダーナ・セイバーは圧し潰された。同時に、シュヴァルツリッター・ツヴァイから紫の煙が上がる。

(まったくもう……何て強さだよ! この変態騎士め!)

 心の中で悪態を吐くと、拡声機能をオンにしたシュヴァルツリッター・ツヴァイから声が響いた。

「俺の勝ちだな! ベルを壊せ、ディノ!」

 龍野が――性格にはシュヴァルツリッター・ツヴァイだが――大剣を突きつけながら、“ベル”の破壊を要求する。

「勿論だよ、龍野。いや、マスター様」

「え?」

 唐突な発言に驚愕する龍野だが、ディノは“ベル”を握りつぶした。


「決闘終了。勝者、“須王龍野並びにシュヴァルツリッター”。繰り返します。勝者、“須王龍野並びにシュヴァルツリッター”。これにより、J陣営に1のアグニカポイントが付与されました」


 アナウンスが、決闘終了を告げる。

 しかし、龍野とディノの会話は続いていた。

「ねえ、姿を見せてほしいな」

『おいおいおいおい! 何を言ってやがる!?』

「ダメ?」

『ダメじゃねえが……』

「だったらいいよね。コクピットのハッチだけ開けてよ、そっちに行くから」

 と、ディノの姿が

(!? どこ行きやがった……!)

「ここだ! この黒騎士の肩だよ!」

『なっ!?』

「開けないなら、こじ開けるよ?」

『待て、やめろ! 俺から開ける!』

 龍野が大慌てで、コクピットのハッチを解放する。

「やったー♪」

 と、ディノが滑り込んできた。

「のわっ!?(プロポーションはヴァイスに似てるな……。けれど肌は浅黒く、髪も短いな。そして若干重い(注:ヴァイスは体重45kgです)!)」

「よろしく、マスター!」

「おい、何の話だ!?」

 龍野が驚愕すると、ディノが指を振って答えた。


「オレ……絶対防御兵器なんだ。正確にはインターフェイスだけどね」


「はぁああああああっ!?」

 龍野の絶叫が、シュヴァルツリッター・ツヴァイに木霊したのであった。



作者からの追伸


 有原です。

 ディノの性格を一部変更させました。


 龍野、見初められちゃいましたね。まあ龍野が腎虚になる事は、そうないですけれど(一晩10回は最低ライン。我ながら、とんでもない設定にしたものである)。


 ところで、ホテルの一室では、ヴァイスが「ハーゲンとネーゼ様」の様子を見て、何やら悪巧みを考え付いている様子。

(注:“新たなる未来”が出来ます。その遠回しな予告です)

 

 そういう訳で、今回はネーゼ様の妄想に電波ジャックされちゃいます。

 ちなみに場所は、戦場の一軒家です。龍野達の拠点ですね。


     *


 貸与された部屋で、ハーゲンがわたくしに迫る。

 その眼光は、“野獣”そのものと表現すべきものであった。

 わたくしは後ずさりするが、ベッドに脚が当たる。

 これ以上は下がれない、そう察すると同時にハーゲンがわたくしの肩を掴んだ。

「あんっ」

 そしてハーゲンはわたくしを強引に押し倒すと、唇を奪った。

「ん……んんんっ……!」

 呼吸を塞がれた苦しさのあまり、ハーゲンにしっかりとしがみつく。

 意識が茫然とした頃合いを見計らったかのように、ハーゲンがキスを止めた。


「……っ」

 と、ドレスに触れるハーゲン。

 その鮮やかな手さばきに、わたくしはただただされるがままを貫き通すしか出来なかった。

「ひゃうっ」

 一通り後、わたくしの果実を貪るハーゲン。

 しばらく貪っていたけれど、ハーゲンはわたくしを四つん這いにさせた。

「……えっ? ひゃん……!」

 と、ハーゲンの熱を直に感じる。

 ああ、そっか、今はもう……。わたくしはハーゲンの激しい熱情を感じながら、ぼやけた思考で現状を認識していた。


 ハーゲンはずっと、飽きずに続けていた。

 けれど、一向に落ち着く様子が無い。

 懇願が口をつくけれど、それでもハーゲンは止めない。止めてくれない。

「……っ!」

 痺れるような感覚がわたくしを襲う。リネンを掴む手が強張る。

「………………ッ!」

「ああっ!」

 と、ハーゲンもわたくし同様の結果を迎えたようだ。

 迸る情動に、わたくしは、わたくしの思考は染められていく。



 一度は落ち着いてくれたみたいね。

 ハーゲンが、わたくしを後ろから抱きしめてくれる。

「んっ……。大好きよ、ハーゲン……」

 わたくしもまた、ハーゲンに応える。


 けれど、ハーゲンの肉体は別の思考を有していたようね。

 そう……例えば、「刻み付けたい」というように。

 いつになったら、完全に落ち着くのか……などと考えた瞬間、わたくしの意識は途絶えてしまった。


     ***


「ハーゲンには、こうあってほしいですわね。わたくしをさらう、大罪人……。その覚悟を持ってほしいですわ」

 一軒家の自室にいるネーゼは、布団を握りしめながら脳内の悦楽に耽っていた。


     *


 はい、ネーゼ様の妄想はここまでです。

 妄想ですので、ハーゲンの体力面が極端なものになっております(注:龍野並、というよりそれ以上)。


 ところで、特別放送はって?

 あぁ、あれですか。


 中継が完全に途絶えたので、あれでおしまいでございます。

 申し訳ございません。


 では、今回はここまで!

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