戦争開始(3日目=延長戦)
フーダニットからの手紙
その頃、一軒家に残っていたシュシュと武蔵は――
「さて、少し休ませていただくとしましょうか……えっ、何なのコイツ!?」
「コウモリだな。それにしては、妙に白い。
肩に止まったコウモリが、はらりと広がる。
シュシュと武蔵が、それぞれのコウモリを捕まえた。
「紙……!? っと、捕まえましたわ!」
「おっと、落ちるところだったな」
それぞれが手紙を広げると、文面にはこうあった。
*
『シュシュお姉ちゃんへ それと、戦っているみんなへ
まず、私から謝らせてください。ごめんなさい。
私は、あなたたちを命の危険にさらしています。にもかかわらず、私はずっと後ろで命令しているだけでした。私に力がないのはわかっています。だからこそ、あなたたちの力が必要なんです。
シュシュお姉ちゃん、今までバカにしてごめんね。
お姉ちゃん(ヴァイス)思いで、曲がった事が許せない優しいお姉ちゃん。
次は楽しく喧嘩したい、可愛いくてまっすぐなお姉ちゃん。
そんなあなたが、いまも命を懸けて戦っていると思うと、胸が苦しくなるのです。
シュシュお姉ちゃん、どうか死なないで。戦争に勝っても負けても、あなたと生き残ったみんなでお祝いをしたいんです。いまさらと思うかもしれませんが、私にはもうこれ以上みんなに死んでほしくありません。戦いをやめるわけにはいかないですが、きっとシュシュお姉ちゃんなら、最後までかっこよく戦ってくれると信じています。
カンパニーを倒すためにも、この世界のみんなが平和に暮らすためにも、改めて私に力を貸してください。
プリンセス・フーダニットより―――――』
「フーダ。貴女の気持ち、受け取りましたわよ」
シュシュは丁寧に手紙を折りたたむと、ポケットに仕舞った。
*
『武蔵へ それと、戦っているみんなへ
まず、私から謝らせてください。ごめんなさい。
私は、あなたたちを命の危険にさらしています。にもかかわらず、私はずっと後ろで命令しているだけでした。私に力がないのはわかっています。だからこそ、あなたたちの力が必要なんです。
武蔵、あなたは最初に会った時、私の元に一番に駆け寄って、私を助けてくれましたね。
そして、私の無礼の後始末も率先してやってくれた。見ていましたよ。
そんなあなたが、いまも命を懸けて戦っていると思うと、胸が苦しくなるのです。
武蔵、どうか死なないで。戦争に勝っても負けても、あなたと生き残ったみんなでお祝いをしたいんです。いまさらと思うかもしれませんが、私にはもうこれ以上みんなに死んでほしくありません。戦いをやめるわけにはいかないですが、きっと武蔵なら、最後までかっこよく戦ってくれると信じています。
カンパニーを倒すためにも、この世界のみんなが平和に暮らすためにも、改めて私に力を貸してください。
プリンセス・フーダニットより―――――』
「……その思い、受け止めた」
武蔵もまた、手紙を折りたたんでポケットに仕舞った。
***
「あら、龍野君。おばあちゃん……いえ、眞白さんを降ろすのね。ところで、このコウモリはどこから……ん」
モニター室に座っているヴァイスの元にも、白いコウモリがやって来た。
「広がった? “読め”という事かしら?」
ただの紙切れになったコウモリを拾い上げ、目を通す。
文面にはこうあった。
『ヴァイスお姉ちゃんへ それと、戦っているみんなへ
まず、私から謝らせてください。ごめんなさい。
私は、あなたたちを命の危険にさらしています。にもかかわらず、私はずっと後ろで命令しているだけでした。私に力がないのはわかっています。だからこそ、あなたたちの力が必要なんです。
ヴァイスお姉ちゃん、あなたに最初に会った時、おいしそうな食べ物をくれましたね。けれど、私はそれを無駄にした。ごめんなさい、お姉ちゃん。食べ物の大切さと、『食べ物の恨み』、今も覚えています。
そして、それでも私に優しく接してくれたお姉ちゃん。
そんなあなたが、いまも命を懸けて戦っていると思うと、胸が苦しくなるのです。
ヴァイスお姉ちゃん、どうか死なないで。戦争に勝っても負けても、あなたと生き残ったみんなでお祝いをしたいんです。いまさらと思うかもしれませんが、私にはもうこれ以上みんなに死んでほしくありません。戦いをやめるわけにはいかないですが、きっとファラなら、最後までかっこよく戦ってくれると信じています。
カンパニーを倒すためにも、この世界のみんなが平和に暮らすためにも、改めて私に力を貸してください。
プリンセス・フーダニットより―――――』
「その願い、私に――いえ、私達に叶えさせてほしいわね。フーダちゃん」
ヴァイスは手紙を広げたまま、机の上に置いた。
すぐに手が届く場所へ。
***
「さて、バアさんも強引に帰した事だし――ん?」
シュヴァルツリッター・ツヴァイのシートに座っていた龍野は、接近してくる小さな何かを見つけた。
「コウモリ? にしてはやけに白いな……っと! カメラ前でつっかかられちゃ困るんだよ……な!」
コクピットのハッチを解放し、取りに向かう。
「よし、捕まえたぜ! っと、こりゃあ手紙か……?」
素早くコクピットに戻り、ハッチを閉じて文面を読み始める龍野。
そこには、こう書いてあった。
『騎士様へ それと、戦っているみんなへ
まず、私から謝らせてください。ごめんなさい。
私は、あなたたちを命の危険にさらしています。にもかかわらず、私はずっと後ろで命令しているだけでした。私に力がないのはわかっています。だからこそ、あなたたちの力が必要なんです。
騎士様、あなたは私が失礼な真似をしたのにも関わらず、優しく接してくれましたね。ごつごつしててカッコいい肩に乗せてくれたり、大きな鎧の騎士に乗せてくれて、風景を見せてくれたり。
正直、ちょっとだけヴァイスお姉ちゃんが羨ましいと思いました。
そんなあなたが、いまも命を懸けて戦っていると思うと、胸が苦しくなるのです。
騎士様、どうか死なないで。戦争に勝っても負けても、あなたと生き残ったみんなでお祝いをしたいんです。いまさらと思うかもしれませんが、私にはもうこれ以上みんなに死んでほしくありません。戦いをやめるわけにはいかないですが、きっと騎士様なら、最後までかっこよく戦ってくれると信じています。
カンパニーを倒すためにも、この世界のみんなが平和に暮らすためにも、改めて私に力を貸してください。
プリンセス・フーダニットより―――――』
「やってやるさ。俺が、俺達が……!」
龍野は自分に、フーダに向かって叫ぶと、手紙を折りたたんでポケットに仕舞った。
そして、新たなる影の元へと機体を疾駆させた……。
作者からの追伸
有原です。
フーダが手書きで書いた、数十枚の手紙。
その内の4枚は、無事に龍野達の元へと届きました。
彼女の想いを知った龍野達は、なお戦います。
さて、次こそ本当に、2日目最後の戦いです。
いでよ、紺の騎士よ!
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