vs 姫木 眞白

※今回は機体に搭乗しません。悪しからず。


「たのもー!」

 謎の女声が、一軒家の前で響いた。

「ん……。誰だ? 来訪者か?」

 真っ先に目覚めた龍野が、玄関へ向かう。

「おっ? おはよう、武蔵」

「ああ、おはよう龍野。よく眠れたか?」

「ああ。武蔵は?」

おれも十分に寝たぞ」

「そうかい。それより、お客さんが来てるぜ」

「“ベル”にだけは気をつけろ」

「あいよ」

 軽いやり取りを交わしたのち、玄関のドアを開ける。

「どちら様ですか?」


「こやっ、こやっ、こやっ。お主らに決闘を挑みに来たのだ」


 そこには、狐耳の老女がいた。

「となると……。“ベル”を持っているのですか?」

「“べる”? ああ、この飾りのことか?」

 袴の帯にぶら下がっているものを見せながら、ケタケタ笑う。

 だが龍野は、この老女からただならぬ気配を感じていた。

(何て魔力量だ……!? 全力の俺と同等か、それ以上じゃねえか……!)

 老女は老女で、龍野に構わず話し続けていた。

「さて、どちらでもよい。わしと剣で、あるいは刀で戦ってくれる者を望む。名乗り出なければ、この家を微塵切りにするぞ? こやっ、こやっ、こやっ!」

「いいぜ。俺が相手になるさ。武蔵、オペレーター頼む」

「請け負った」

 武蔵が宣言すると、姿が消滅する。モニター室に転移したのだ。

 と同時に、アナウンスが鳴り響いた。

「ただいま、J陣営の“須王龍野並びにシュヴァルツリッター”と、♦️陣営の“姫木ひめぎ 眞白ましろ”との決闘が成立いたしました。繰り返します。ただいま、J陣営の“須王龍野並びにシュヴァルツリッター”と、♦️陣営の“姫木 眞白”との決闘が成立いたしました。これよりカウントダウンを開始いたします。5, 4, 3...」

「しゅヴぁ……? 何だ、それは? 美味しいものか?」

「違うぜ、バアさん」

 軽口を叩きつつ、魔術を発動する龍野。

「2, 1, 0! 決闘開始!」

「行くぜ!」

 黒騎士と化し、双剣を構えて疾駆した。



「速攻でケリ付けるぜ!」

 龍野が素早く切っ先を眞白に向け、魔力による光条レーザーを撃ち込む。

「何だそれは、手品か?」

 だが、命中と同時に霧散した。

「何だそりゃ……!(やっぱ魔力はダメか……! なら、接近戦だ……!)」

 魔力を噴射し、一気に距離を詰める。

「もらう!」

 そして眞白の体を三等分しようとした寸前――


「侮るなよ、小僧」


 いつの間にか両手に握っていた刀の鍔で、防御されていた。

「こやっ、こやっ、こやっ! 西洋の騎士とあらば、楽しめそうだ……!」

「そりゃよかったな! ってかバアさん、何者なにもんだよ……!(まさかハーゲンと同じ種族ってこたあねえよな!?)」

「どうでもよいわい! さあ、今度は儂から行くぞ!」

 啖呵と同時に、龍野のがら空きの胴体を刺突する。

「おっ?」

「悪いなバアさん。俺もただの人間じゃねえ」

 だが、障壁で刃先が欠けた。

「にゃわーっ!? わ、儂の『紅切』がーっ!」

「畳みかける!(どうやら得物を折られるのは、心に来るみてえだな……!)」

 と、龍野が一気に“ベル”を両断しようとし――


「そうだお主、先ほどの男とはどういう関係なのだ?」


「は?」

 突如、眞白が龍野に問いかけた。

「あの話し方……。さてはお主ら、恋仲だな?」

「ハァ!? 男同士で恋仲って、ねーよ!」

「嘘をつくでない! 普段は澄ました顔をしながら、夜ではお互い獣となるのだろう!? どっちが攻めだ!? どっちが受けだ!? まさか日によって入れ違い――」

「……(呆れてものも言えねえぜ……)」

 眞白の突然の妄想に、思考を停止してしまう。

「……龍野」

 だが武蔵は、強引に続けた。

「“ベル”を破壊しろ」

「了解」


「ああどっちが受けでも攻めでもいい! いやむしろ、どちらもありだ! ああ、妄想しきれない――」

 眞白はまだ妄想に耽っていたが、龍野は“ベル”に狙いを定める。

「ってお主、何を――」

「俺達で勝手に遊ぶんじゃねぇ!」

 そして素早く、“ベル”を両断した。

「決闘終了。勝者、“須王龍野並びにシュヴァルツリッター”。繰り返します。勝者、“須王龍野並びにシュヴァルツリッター”。これにより、J陣営に1のアグニカポイントが付与されました」

「あぁぁーーーーーーー!? わ、儂の帯が、切り裂かれとる……!」

「おい」

「へ?」

「ふんっ!」

 龍野は眞白の真上から、勢いよくゲンコツを振り下ろした。

「痛っ!」

「妄想も大概にしやがれ、バアさん!」

「は、はぁ~い……」

 年齢は5倍以上だというのに、今や立場は逆転していた。

「で? この後はどうすんだ?」

「お主らの近くにいさせてくれ」

「うーん……」

「いいわよ」

 と、ヴァイスの声が響いた。

「いらっしゃいな、おばあちゃん。生憎、朝食は食べてしまったけれど」

「いいわいいいわい、そんなもん! お主らと一緒にいられるだけで十分じゃ! こやっ、こやっ、こやっ!(楽しそうじゃのう……)」

 こうして、新たなる仲間(?)が加わった。



作者からの追伸


 有原です。

 今回は特別放送でございます。出てこい、2人と1機よ!


ブレイバ

「はいよー!」


ブランシュ

「参りましたわ!」


リナリア・シュヴァルツリッター

「またお二方のお守りですか。まあ“騎士”の名を冠している以上は全うしますよ」


ブレイバ

「さて、姫様」


ブランシュ

「何でしょうか?」


ブレイバ

「座標を送るので、テレポートをお願いするよ」


ブランシュ

「喜んで、騎士様」


リナリア・シュヴァルツリッター

「えっ、地球!? 日本!? どこなの、それ!?」


ブレイバ

「喋らないでー、舌噛むよー」


ブランシュ

「噛む舌もありませんけれどね」


リナリア・シュヴァルツリッター

「ちょ、えええええええええええ!?」


~三時間後~


《号外:岩国城(山口県)付近に巨大人型兵器出現》


 はい、特別放送はここまで!

 では、皆様ごきげんよう!

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