vs 大型トリプルDラングスト(対戦者:龍野)

「ヴァイス、これを」

「何かしら?」

「“レジェンド”で見つけた道具だ。魔力の残滓があったから、回収してきたぜ。扱いはお前が上だろうから、渡すことにした」

「あら、ありがと。それじゃあ、遠慮なくいただくわね」

「そんじゃ、俺は休憩するぜ」

「ええ。補給はやっておくわ。フェオさん、後でこの機体も整備お願いします。わたくしも立ち会いますので」

「はい!(ヴァイスシルト殿下と共に整備、補給……光栄の極みです!)」

 フェオの返事と、龍野が玄関を通るのはほぼ同時だった。


 一時間後。

 既に空は、明かり無しではまともに周囲が見えないほど暗くなっていた。

「龍野君、もういいの?」

「ああ。

 休憩と補給を済ませた龍野は、再びシュヴァルツリッター・ツヴァイに搭乗した。

『それじゃあ、ちょっくら行ってくるぜ……! まだ戦いの途中だからな!』

「行ってらっしゃい、龍野君」

 ヴァイスに見送られ、魔力を噴射するシュヴァルツリッター・ツヴァイ――

『待ちなよ!』

 と、謎の声に阻まれる。

『玲香……おめえも来るのかよ!』

『当然でしょ! 龍野が行くとなったら、ボクがじっとしてるワケにはいかないもん!』

「玲香さんも行ってらっしゃいな」

『ちょ、ヴァイス!?』

『では、お言葉に甘えて……!』

 ヴァイスに見送られた玲香は、シュヴァルツリッター・ツヴァイと共に偵察へ向かった。


『どういうつもりだ、玲香さん……!』

 機体が空中に滞空したのを確認した龍野は、偵察そっちのけで玲香を怒鳴りつける。

『龍野が行くんだもの、ボクもいかなくちゃ!』

『それは本来ヴァイスの役目だ!』

『その本人からオーケー貰ってるの! って……龍野、10時半の方角! 蛙が集まってるよ!』

『あいよ!』

 シュヴァルツリッター・ツヴァイとダイバリオンは降下しながら、それぞれ光条レーザーとビームで先制攻撃を仕掛ける。

『行くぞオラァッ!』

『ボクも負けないよ!』

 2機は実体剣を抜き、レギオンの残党を撃破し始めた。


     *


『これでラストだ!』

 大剣を素早く振るい、付近に残ったレギオンの内、最後の一個体を撃破する。

『お疲れ~。それじゃあ、帰投し――』


『吞気なものだな、須王龍野』


 突如響く、声。

『その声は!』

『あの時の恨み……!』

 龍野と玲香が、同時に反応する。


『その甘さをあの世で悔いるがいい!』


 再び響いた声。

『龍野、5時方向に下がって!』

『おうよ!』

 と、極大出力のビームが龍野のいた箇所を通り抜けた。

『っぶねえ……! となると、あいつか……!』

『だろうねぇ……! それに、まだ残党のレギオンもいるよ龍野……!』

『じゃあ、そっちは頼むぜ……! おっと!』

 再び、龍野のそばをビームが掠める。


 そして――巨大な伊勢海老が姿を現した。


(何だあの海老は……! あれもロボットだってのかよ!)

『須王龍野……! 三度、貴様に決闘を挑む……!』

『ならば引き受ける……! 玲香、手ェ出すなよ!』

『そんな甘い事で勝てはせんぞ! 二体一で構わん、来るが良い!』

「ただいま、J陣営の“須王龍野並びにシュヴァルツリッター”と、♠陣営の“ネルソン・ガラナ並びにラングスト”との決闘が成立いたしました。繰り返します。ただいま、J陣営の“須王龍野並びにシュヴァルツリッター”と、♠陣営の“ネルソン・ガラナ並びにラングスト”との決闘が成立いたしました。これよりカウントダウンを開始いたします。5, 4, 3...」

『だったら……!』

『来るが良い、須王龍野、遠山玲香……!』

「2, 1, 0! 決闘開始!」



『先手必勝!』

 龍野は光条レーザーを連射しながら、素早く側面に回り込む。

(ッ、速い……! 何だあの機体は、DDDではないぞ……! 別の私を倒した機体……! だが――!)

 殻状の装甲の隙間から、多数の誘導弾が姿を現す。

「遅いぜ!」

 発射前の誘導弾を、“ストライカー改(サブマシンガン)”“ブレイズ(アサルトマシンガン)”で叩き落す。

 そして装甲に密着し、2門を叩き込んだ。

『フハハハハハ、そんなものでは効かんぞ!』

 しかし、想像以上の装甲厚に全弾が弾かれた。

(ダメか……! なら……!)

 2門を投棄し、手にする大剣に魔力を纏わせてから突き立てる。

『まだまだぁ!』

 それでもまだ、伊勢海老は歩き続けていた。

(チッ、致命傷には程遠いぜ……!)


『龍野君、装甲の隙間にあるバーニアを狙って!』


 と、その時。

 ヴァイスからの念話が飛んで来た。

『あいよ!』

 素早く指示に従い、背面へ跳躍する。

『なんの! 近づけなければ……』

 気づいたネルソンもシュヴァルツリッター・ツヴァイを振り下ろそうとするが、シュヴァルツリッター・ツヴァイが双剣をバーニアに突き立てるのが先だった。

『な……にっ!?(まさか、そんな事が……! 有り得ない……!)』

 未来を察したネルソン。

 しかし、最早未来は確定していた。


『いくぜ、ネルソン……。だけどてめえを仕留めるのは俺じゃねえ。遠山玲香の役割だ!』


 大剣を握りしめながら、魔力を機体の周囲に凝縮させる。

 そして――


「ヤツの“ベル”だけ、叩き壊せ!」


 大剣に魔力を流し込み、ラングストに浸透させる。

『なっ――』

 あっという間に魔力が侵食し、ネルソンの“ベル”は音を立てて破壊された。


「決闘終了。勝者、“須王龍野並びにシュヴァルツリッター”。繰り返します。勝者、“須王龍野並びにシュヴァルツリッター”。これにより、J陣営に1のアグニカポイントが付与されました」

『終わっちゃねえがな。玲香!』

 アナウンスが響いたのを確認した龍野は、玲香を呼びつけた。


『こいつはお前が仕留めるべきだ。そうだろう?』


『うん! ボクもこいつには、相当たまったものがあるんだよね!』

 ダイバリオンと役割を後退するように、シュヴァルツリッター・ツヴァイはラングストの背中から降りた。



作者からの追伸


 有原です。


 決闘である以上は一対一を厳守させましたが、この「ラングスト」、元々は遠山玲香准尉との因縁があります。

 じゃあどうするかって?


「ルールに則った上で遠山准尉と戦わせればいい」、というだけです。

 ですので、ネルソンの“ベル”を最優先で破壊した龍野でございます。


 後は因縁を決着させるだけですね。


 ところで、「ラングスト」を始末してからの「ヴィラン」は、どうしようか……?

 それはさておき、今回はここまで!

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