戦争開始(2日目)

vs 『試作自立鉄騎兵』鈴音(リンネ)

(さて、エリア“ファクトリオ”に行くか)

 龍野は「ダイバリオン」の完成を見届けると、素早く魔力を噴射して北方まで向かう。

「っておい!?」

 と、後方からの反応が迫っていた。

「嘘だろ……(この速度……飛んでるな。それが出来るヤツって、まさか……)」

『待ってよ龍野!』

「案の定だよ!」

 玲香が「ダイバリオン」で追ってきていたのだ。

『おい、どういう経緯で俺を追って来やがった!?』

『だってさー、ボクを差し置いて戦場に出るなんてひどくない?』

『ひどくねえよ! つーかいきなり来るって、ヴァイスの許可は取ったのか!?(ヴァイスが許すかどうか、俺でもわからねえってのに……!)』

『許可? うん、二つ返事で「行ってらっしゃい」って言ってたよ!』

『ヴァイスゥウウウウウウウッ!』

 龍野は叫びながらも、“ファクトリオ”跡地へ向かった。


「うわ、わかっちゃいたがひでえもんだな……」

 アル・デリアス・ベノムに壊滅させられた工場は、最早無人の地となっていた。

「けど、まだ調査の途中だったぜ。『カンパニー』に繋がる手がかりがあるかもしれねえからな」

 シュヴァルツリッター・ツヴァイに搭乗したまま、ひとしきり周囲を捜索する龍野と玲香。

「ん?」

 謎の空間を見つけた龍野。

 シュヴァルツリッター・ツヴァイを近づけ、内部を確認する。

「これは……弾薬庫、か?」

「ボクが行くよー!」

 玲香が「ダイバリオン」で屋根を撤去し、中を見る。

「ふむふむ、いろいろな規格の弾薬があるなあ。これ、いくつか持ってっていい?」

「勝手にしてくれ……(確か、現地調達はオッケーなんだったな)」

「それじゃ、遠慮なくいくよー」

 有りっ丈の弾薬(ただし残りはある)を持ち運び、拠点に戻る玲香。

『おっと、一応通信。何か来てるから気を付けてねー』

『あいよ(次の“代理”か……。だが仕掛けるなら、受けるだけだ!)』

 レーダーを確認し、敵機の位置を確かめる龍野。

『戦意ありだな……なら!』

 “ファクトリオ”から離れ、敵機の元へと向かった。


 エリア“ピクロス”の近くにいた6.4m程度の人型ロボットを見つけ、レーダーの反応と照合する龍野。

(こいつだな……!)

 ドラゴンのような頭部を有した、銀と赤ラインのカラーリングの機体。

『そちらにいらっしゃるのは、須王龍野様ですか?』

 と、声が飛んで来た。

『そうだぜ』

 否定する理由もないので、素直に肯定する。

『では、決闘を所望します』

『受けるぜ』

 戦力を削ぐ方針である龍野は、二つ返事で引き受ける。同時に、アナウンスが響いた。

「ただいま、J陣営の“須王龍野並びにシュヴァルツリッター”と、♠陣営の“『試作自立鉄騎兵』鈴音リンネ”との決闘が成立いたしました。繰り返します。ただいま、J陣営の“須王龍野並びにシュヴァルツリッター”と、♠陣営の“『試作自立鉄騎兵』鈴音リンネ”との決闘が成立いたしました。これよりカウントダウンを開始いたします。5, 4, 3...」

『手は抜かねえぞ。仕掛けたのはそっちだからな』

『ええ』

「2, 1, 0! 決闘開始!」

『行くぜ!』

 龍野は素早く、二本の大剣を眼前に構える。



「速攻で仕留める……!」

 剣を突き出すと同時に、光条レーザーを2発叩き込む。

『回避』

 だが――


 鈴音リンネが消えた。


(!? どこ行った……!)

『攻撃態勢に移行。フォトンセイバー、展開』

 シュヴァルツリッター・ツヴァイの背後にワープした鈴音リンネは、腕の先端と肘から赤く光る刃を展開。

 飛翔機構で跳躍し、頭部を切断しに掛かる。

『攻撃』

 しかし、高い切れ味を誇るフォトンセイバーも、障壁で防御された。

『パターンを再計算』

 ワープで距離を取り、シュヴァルツリッター・ツヴァイの正面に立つ鈴音リンネ

『俺をおちょくるのもいい加減にしてもらおうか……!』

 光条レーザーを放つ龍野。

 当然ワープされる。が。

『もう一発!』

 ワープ直後のインターバルを狙われ、直撃する。

(っと?)

 しかし、シールドに弾かれたようだ。もっとも、かなりギリギリで耐えたようなものであるが。

『だったら……!』

 もう一度同じ方法を試し、シールドを貫通する。

『右脚部に損傷。ナノマシン、作動開始』

 命中はしたが、ダメージは徐々に回復し始めた。

(だったら近距離だ!)

『龍野君、右腕側を狙いなさい!』

 と、ヴァイスの指示が飛んで来た。

『おうっ!』

 素早く大剣を振り抜き、防御させる。

 だが左腕の大剣への反応が間に合わず、胴体を切り裂かれた。

『深刻な損傷を確認。ナノマシン、活性化』

 鈴音リンネは龍野との鍔迫り合いを避けるつもりか、ワープで距離を置いた。

『今よ、広範囲攻撃でとどめを!』

 隙を突き、シュヴァルツリッター・ツヴァイが前かがみの姿勢を取る。

『攻撃態勢と推測、阻止開始』

 鈴音リンネがテレポートで距離を詰め、フォトンセイバーを乱舞する。

 しかしどれも障壁に弾かれ、意味を為さなかった。

『じゃあな』

 龍野がそう告げると、シュヴァルツリッター・ツヴァイから魔力によるドームが形成された。

『即時防御……しかし耐久能力に限界あり……対処、不能……』

 魔力の奔流が収まる頃には、鈴音リンネも“ベル”も、姿を残していなかった。


「決闘終了。勝者、“須王龍野並びにシュヴァルツリッター”。繰り返します。勝者、“須王龍野並びにシュヴァルツリッター”。これにより、J陣営に1のアグニカポイントが付与されました」

『ヴァイス、ありがとよ。終わったぜ』

『勝ってくれて良かったわ。それと遠山准尉が、弾薬をいくらか持ち込んでくれたから、しばらくは追加で戦えるわね』

『そうだな。さて、まだ中央の王城を調査してなかったぜ。行ってくる』

『行ってらっしゃい』

『あいよ(じゃあな。どうしてここに来ちまったのかわからねえけど、安らかに眠ってろよ)』

 龍野は哀れな機械に内心で別れを告げると、南へと飛んだ。



作者からの追伸


 有原です。

 ピンポイントで対策された機体を出されたので、「戦略的観点を戦術で圧倒する」という決着に持ち込みました。


 ただ、いくら龍野の魔力といえども無尽蔵ではありません(定期的に回復させているため、無尽蔵に見えますが)。

 なので冗談抜きで危なくなる場合がございます。


 さて、次はどいつを屠ろうか……?

 今回はここまで!

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