vs トリプルDハドロン改

「しっかしまあ、よくわかったなお前」

「そうだよ? ボクの持ち味は、カミサマから与えられた直感だもんねー」

 吞気に会話しているが、玲香の感覚は鋭敏である。

「ところでさあ、一つお願いがあるんだけど」

「何だ?」

「武装が心許ないからさ、あの機体を鹵獲ろかくしてほしいな。ダメ?」

「いや、大丈夫だ。やってみるぜ。ただ、損傷はさせるかもな。ああ、後……ちょっとだけ、うるさくするぞ(“ベル”だけはぶっ壊さねえと、決着しねえからな)」

 龍野は深呼吸すると、大剣を突きつけ、拡声機能をオンにして告げた。

『こちらは須王龍野、並びに機体“シュヴァルツリッター・ツヴァイ”だ。決闘の意思があるならば、手にしている剣の切っ先をこちらに向けろ』

 そう宣言すると、銀と黒の機体は実体剣の切っ先をシュヴァルツリッター・ツヴァイに向ける。

『意志ありと見なす。いざ、尋常に勝負』

「やっぱりカッコイイね、キミ!」

「あー……。こういうのは慣れねえんだよ」

 二人が会話していると、アナウンスが響いた。

「ただいま、J陣営の“須王龍野並びにシュヴァルツリッター”と、♦️陣営の“トリプルDハドロン改”との決闘が成立いたしました。繰り返します。ただいま、J陣営の“須王龍野並びにシュヴァルツリッター”と、♦️陣営の“トリプルDハドロン改”との決闘が成立いたしました。これよりカウントダウンを開始いたします。5, 4, 3...」

「それじゃ、いっちょ鹵獲してやりますか」

「がんばれー!」

「2, 1, 0! 決闘開始!」



「玲香さん、舌噛むなよ!」

「“玲香”でいいよー」

 決闘開始の合図と同時に、一気に加速する龍野。

(まずは……!)

 大剣を構え、時間差で二本の光条レーザーを叩き込む。

「効かないよー!」

 だが、玲香が叫ぶ。

 言葉通り、ほとんどダメージになっていなかった。

「近づかないと!」

「わかってるぜ!」

 一気に距離を近づけ、魔力を纏った大剣で決着を狙う。


 しかし、奪ったのは実体剣だけだった。


(かわされた……? いや、違う。受け流されたのか……!)

「ねー、空を飛ぶのもいいけどさー、降りようよー」

「どうしてだ?」

 玲香の提案の意図を掴めない龍野。

 しかし、玲香はさも当然であるかのように話した。

「あれさー、地上に降ろしたら鈍重だよー?」

「あいよ……!(なら、手は一つだ!)」

 龍野は再び突撃し、大剣を掠めさせる。

(今だ……! こいつを200tにしろ……!)

重量調節グラビティ』が発動し、ハドロン改から紫の煙が立ち上る。推進力不足で落下したハドロン改は、着地の衝撃で倉庫周辺を吹き飛ばした。

(これでもう鈍重だ……なら!)

 一気に決着させんと、急接近するシュヴァルツリッター・ツヴァイ。

「離れて!」

 だが、玲香が何かを察知したようだ。

「口閉じろ!」

 機体を急旋回させ、ハドロン改から距離を取る。直後。


 先ほどアル・デリアス・ベノムによって壊滅した工場の方角へ、高出力ビーム砲が走り抜けた。


「何だありゃ……!」

「それよりも、捕まえるなら今だよ!」

 そう。

 強制的に重量を大幅増加させて着地させたが、ハドロン改は今にも上昇しようとしていた。

(だったら……!)

 今度こそ、と言わんばかりに急接近し、同時に背面から胸部を貫通する。

 しかし、数秒経ってもアナウンスが響かない。

「頭はどうかな?」

 玲香の提案で、素早く頭を狙う。脳天を縦に貫通した。

「決闘終了。勝者、“須王龍野並びにシュヴァルツリッター”。繰り返します。勝者、“須王龍野並びにシュヴァルツリッター”。これにより、J陣営に1のアグニカポイントが付与されました」


「どうやら、正解だったみたいだね龍野!」

「おう(ん? 呼び方変えたか?)」

「それじゃあ、ボクが貰うからねー。乗せて乗せてー」

「あいよ。左肩に行け」

 機体を操作し、左肩の前に右手を差し出す。

 玲香が右手に乗ったのを確認した龍野は、ハドロン改の前に右手を差し出した。

『乗れるか?』

『大丈夫! うん、乗ったよ!』

 ハドロン改に搭乗した玲香。

『おっといけね、少し待ってろよ!』

 素早くハドロン改に触れ、シュヴァルツリッター・ツヴァイ越しに『重量調節グラビティ』をかける龍野。

(30tになれ。それくらいなら適当だろう)

 ハドロン改から、紫の煙が立ち上った。

「おっ、軽い軽ーい!」

 に驚愕する玲香。

(あれ、重量軽くし過ぎたか? あれくらいが適当だと思ったんだけどな……)

 龍野は戸惑いつつも、玲香を拠点の一軒家に案内した。



作者からの追伸


 有原です。


 須王龍野の一派の面々(とその戦力である機動兵器群)が、とあるシミュレーションRPGじみてまいりました。

 そして、龍野が獲得したアグニカポイントは10となりました(龍野の戦功のみをカウントしております)。


 この後はもう一度あの工場(エリア“ファクトリオ”)に戻り、再調査を行う予定です。

 また、「ハドロン改」も「ハドロン改二」となるでしょう。

 しかしまあ、龍野とシュヴァルツリッター(今は“ツヴァイ”ですが)は迂回に迂回を重ねておりますね。


 あ、そうそう。

 書きたくなったので一言。



 シュヴァルツリッター(・ツヴァイ)、ヴァイスリッター・アイン、ヴァイスリッター・ツヴァイが剣に魔力を纏わせると、


「防御無効の分子(金属なら原子)分離ブレード」


 と化します。


 これは、


「魔力は水素原子より小さい」

「纏わせると、同じ属性以外の魔力やただの物質には、強力な反発力で強引に構成を分離する」


 というものです。



 うん。

 我ながら、やりすぎた気もしますね。


 では、今回はここまで!

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