謎の女性

 龍野は一時撤退直前の座標をヴァイスから受け取った後、周囲の調査を始めていた。

(うっ、やっぱこの辺はひでえな……。だが、どうやら無事なエリアもあるな。あの倉庫群に、行ってみるか……!)

 シュヴァルツリッターの向きを変え、素早く魔力を噴射して急行した。


「さて、このサイズだ。降りずに開けるとしようか……なッ!」

 “東向きに出入口が開いている”という事実に気づいていない龍野は、倉庫の一つを二本の大剣で三分割する。

「うわあッ! 何だよ、もう!」

 すると、中に女性がいた。

(ショートヘアに丸い目か……。ヴァイスでもシュシュでもねえな。だが、こんな場所で何をしている? 話の一つでも、聞かせてもらうか……)

 龍野はコクピットから降り、女性の前に姿を現す。

「驚かせてすまねえな。さっきのは俺の仕業だ」

「まったくもう……ん? キミって、よく見るとボク好みの男だね……。名前を教えてほしいな」

「俺か? 俺は須王すおう龍野りゅうや。あんたは?」

「ボクはね、遠山とおやま玲香れいか。これでも軍人だよ。階級は准尉じゅんい。よろしくね、龍野!(カッコイイ筋肉……いいなぁ! ボク、一目で惚れちゃった!)」

「ああ、よろしく頼むぜ。ところで……」

「何かな?」

「どうして、こんな場所にいるんだ? 詳細は後で教えるが、ここは戦場だ。単独行動してちゃマズいぞ」

「うん、そのくらいは知ってるよ。ここは立派な拠点になりそうだから、閉じこもってただけ。武器も心許ないし、格闘にも限界はあるからね。けれど驚いたなあ。まさか倉庫の壁と屋根をあっさり両断して、落とすなんて。危うく死ぬところだったよ」

「そりゃあ、まあ……済まなかったな」

「いいのいいの! ところで、キミこそどうしてここに?」

「ああ……この戦争の、正式参加者って事で……戦闘状態だったんだ(一応は嘘じゃねえな、うん)」

「へー、そうなんだ。まあいいや。で、どうやって来たの?」

「こいつでだ」

「何これ!?」

 シュヴァルツリッター・ツヴァイを見た玲香は、目を丸くした。

「ラングストとは全然違う、それでいて騎士のような洗練されたフォルム……カッコイイ! やっぱりキミって、何もかもカッコイイね!」

「そうか? そんな大したもんじゃねえぞ?」

「ううん、カッコイイよ! 乗せて乗せて!」

 食い気味に要求する玲香。

「いいぜ。ただ……」

 龍野は、あっさりと許可を出した。

「ただ?」


「これからの事は他言無用で頼むぜ」


 玲香の胴体をしっかり抱きしめる龍野。

「ううわぁ!? ちょ、キミ、何を……」

「飛ぶぜ!」

「わぁあああ!」

 そしてシュヴァルツリッター・ツヴァイの肩に上ると、コクピットを開いた。

「先に乗れ!」

 半ば放り込むようにして玲香を乗せる。

 乗ったのを見届けた龍野は、自らも乗り込み、玲香を膝の上に座らせた。

「何これ!? 全っ然、機械とか無いよ!? 動くの!?」

「動くんだなぁ、これが」

 龍野は肘掛けに腕を置くと、先端の球体に触れる。


 そして魔力を集中させると、全天周モニターが起動した。


「ううわぁ!? すごい、すごいよこれ!」

「ああ、俺の為の特別製だからな(本当は“ロボット”に該当する部分があるかわからないシロモノだけどな……)」

「けど、いつまでも見とれちゃいられないみたい。右を見て!」

「右? 何も無いぞ?」

 玲香の指示に疑問を抱く龍野。


 しかし程なくして、いやに巨大な推進ユニットを背負った、銀と黒の機体が目の前に現れた。



作者からの追伸


 有原です。


 新たなる戦力が追加されました。

 ただ、本格的に活動するのは、搭乗機体を手に入れてからです。


 龍野達Jの陣営には、予備機体などありません。

 後は、お分かりいただけますでしょうか?


 では今回はここまで!

 次は「ヴィラン」との対決でございます!

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