休息の時

 龍野達の拠点である一軒家では、既に豪勢な料理が揃っていた。

「歓迎の用意は整っておりますわ、帝国の皆様。あら、そちらのお二方は初めてですわね」

 ヴァイスが指したのは、フェオとビアンカの事である。

「初めまして。わたくしはヴァイスシルト・リリア・ヴァレンティアと申します。異界にある王国、ヴァレンティア王国の第一王女ですわ。そして、こちらは……」

「初めまして皆様、わたくしはシュヴァルツシュヴェーアト・ローゼ・ヴァレンティアと申します。ヴァレンティア王国の第二王女ですわ!」

「進藤武蔵だ。階級は少尉しょうい、所属は帝国軍第さん(3)機甲機動きこうきどう連隊。とはいえ、あんたらの帝国では当然ない。以後、よろしく頼む」

 各々名乗りを終える。

「初めまして、皆様方。わたくしは、ネーゼ・アルマ・ウェーバーと申します。同じく異界に存在する帝国、アルマ帝国の第一皇女ですわ。以後、お見知り置きを」

「私は軍医のリオネ・ガルシアです。よろしくお願いいたします、皆様方」

「リオネとハーゲンの同僚、ウーサル・ビアンカと申します。よろしくお願いいたします」

「整備士のフェオ・シチリアです。元はハーゲン少尉専用のゼクローザスの整備をしておりました。以後、よろしくお願いいたします」

 アルマ帝国の面々も、名乗りを終える。

「では、事前に得た情報を元に、ネームプレートを用意しております。皆様方、ご自身のお名前が書かれた席へどうぞ」

 ヴァイスが各々を、事前に割り振った席に座らせる。当然、ネーゼが一番上の席だ。

 龍野とヴァイスを残し、全員が着席する。

「このような場を設けてくださりありがとうございます、ヴァイスシルト姫殿下」

「いえいえ。以前にもお世話になったのです、このくらいはさせていただかなくては」

「ところで、貴女と黒騎士は相席されないのですか?」

「いえ。少しだけ、席を外させていただくだけです」

「そうですか。ではお先に、いただきます」

「ええ、どうぞ存分に。多めに作っておりますので」

 ヴァイスが許可を出すと同時に、賑やかになるネーゼ達。

 だがヴァイスと龍野は、そんな彼女たちを尻目に自室へ向かっていた。



「さて、龍野君。貴方を私の部屋へ呼び出したのは……有り体に言って、処罰の為よ」

「ああ」

 ヴァイスが龍野の後頭部を両手で掴む。

 そして――


「うっ、ううっ、龍野君のばかぁ!」


 涙を流し、龍野を叱り始めた。

「心配したんだからね!? 湖に沈んだあの戦い、私がいなければどうなってたか……!」

「悪かった。どうかしていたぜ、あの時は」

 ヴァイスの声には威圧感が全く無いが、それがかえって龍野の良心を傷つける。

「許しはわない。ただ、臨むままに」

「言われなくても、許さないわよ……! ここで死なれたら、全て水の泡なのに……! そうならないよう、シュヴァルツリッターも作ったのに……!」

 ヴァイスは龍野の厚い胸板にすがりつき、ひたすら泣いた。



「さて、龍野君」

 30分後。

 ひとしきり泣いてすっきりしたヴァイスは、次の言葉を告げた。

「まだ処罰は終わっていないわ。一晩使って、きっちり罰させてもらうから」

「あいよ」

「では……最初の一回、ね」

 ヴァイスは龍野の後頭部を掴む。


 そして、自らの豊かな胸に龍野の顔をうずめた。


「……ッ!」

「そう簡単には、離さないわよ(ああ、龍野君の温もりが……。うふふ、安らぐわ。やっぱり、恋人とは特別なものなのね……)」

 とはいいつつも、きっちり手心は加えている。

 自らの用意した晩餐を忘れるほどに、ヴァイスは龍野の温もりを味わっていた。



「遅いですね、ヴァイスシルト姫殿下」

「こら、失礼でしょフェオ」

 その頃テーブルでは、フェオの失言をリオネがたしなめていた。

「用事か何かが……っと。戻って来たわ」

 カツンカツンと、ヒールの靴音が響く。遅れて、ザッザッという軍靴ぐんかの音もついてきた。

「皆様、楽しまれておりますか?」

「ええ、姫様!」

 ヴァイスの問いかけに真っ先に応じたのは、フェオであった。

 その様子を見ていたリオネが、小声で問いただす。

(あら、もしかしてヴァイスシルト姫殿下にホの字なのかしら~フェオ君?)

(そんなワケ無いじゃないですかリオネさん!)

「仲が良いのは、よろしいことですわ」

「あ……ありがとうございます!」

「あらあら」

「おいおいヴァイス、あまりからかい過ぎるなよ?」

「わかっているわ、龍野君。それよりも、そろそろいただきましょう?」

「ああ、そうだな(といいつつ、お前が作ったんだけどな)」

 龍野達も、席についた。

「いただきます!」

「いただきます(さて、今晩は龍野君と私、ハーゲン少尉とネーゼ殿下、この二組のカップリングが……ふふふ)」

 挨拶をしながら、妖しい笑みを浮かべるヴァイスであった。



作者からの追伸


 有原です。


 描写してはいないのですが……実は、料理には薬が盛られております。

 睡眠薬と媚薬です。


 内訳としては、

睡眠薬……シュシュ、リオネ、フェオ

 媚薬……龍野、ハーゲン


 となっております。

 当然、女性陣二人(ヴァイスとネーゼ)は念話で談合済みですので、存在を知っております。


 え、武蔵には盛らないのかって?

 武蔵はホテルで、一人寂しく寝たいそうです。


 これだけ書けば、もうお分かりでしょう?

 さあ、次回、が始まりますよぉおおおおおおおおおおおおおッ!!


 今回はここまで!

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