救出
先行していたハーゲン達は、“キューブ山”に到着した。
『ここよ。私が捕まっていた場所は』
拡声機能をオンにしたゼクローザスから、リオネの声が響く。
『山、か……?』
『そうよ。隙を見て脱出したけれど、フェオは……』
涙声になるリオネ。
『お前のせいじゃない。俺達が助け出せばいいだけだ』
『そうよ。今ならまだ、間に合うかもしれないわ。おっと、噂をすれば、ね。フェオの霊力を探知したわ。行きましょう』
ハーゲンとネーゼが励ます。
『ただ、一人見張りが欲しいな』
『なら私が』
名乗り出たのは、ビアンカである。
『三人で行ってらっしゃいな。ハーゲンの機体以外でまともに動くの、このインスパイアだけだし』
『わかった。頼むぞ、ビアンカ』
ハーゲン、ネーゼ、リオネは、入り口から山に突入した。
*
(あれは……リナリア、ゼクローザス、インスパイアか。マーカーがあるから、帝国軍の皆だな)
機体を操作しつつ、拡声機能から『おーい!』と呼びかける。
『貴方……須王龍野!』
ビアンカが返事をすると、龍野はシュヴァルツリッターをインスパイアの目の前に降ろす。
『ハーゲン達は? 見たところ、機体だけはあるようだが』
『山の中に突入したわ』
『おいおい……。アテはあんのか?』
『ネーゼ様が、「フェオの霊力を探知した」、とか……』
『すげえな!』
以前にも最低限の交流はあった龍野とネーゼだが、龍野はネーゼの実力を知らなかったのだ(もっとも、以前主力となっていたのはハーゲンとゼクローザスだった為、無理は無いが)。
『ところで、行かないの?』
『行くぜ。ただ、少し気になる事があってな……』
『どういう事?』
龍野は、レーダーが示している状況を告げた。
『これ、包囲されてねえか……?』
“敵”を示す赤い矢じりは、龍野達を円状に囲むようにして迫ってきていた。
(およそ5km……さて、どういうもんか確かめるために、上に行くか)
龍野は次の行動を決断すると、ビアンカに『まだ動くなよ。ハーゲンに連絡しとけ』と告げて機体を飛翔させた。
*
その頃。
「んーっ!? んむーっ!」
ギャグボールを噛まされたフェオは、山頂の花畑に連行されていた。
「動くな」
「大人しく、彼らが
フェオの側には、二人の男がいた。
犬歯は鋭く尖っている。リオネと同じ、吸血鬼だ。
「んんーっ!」
もがくフェオだが、怪力には抗えない。
「無駄だ、諦めて絶望を刻め……む?」
「何の音だ?」
その時。
『あーテステス、フェオだな?』
(!)
喋れはしなかったが、全力で首を縦に振る。
『あいよ、今助けるからな!』
声の主は、言うまでもなく龍野であった。
「何だ、コイツは!?」
「仕留めるぞ!」
二人の吸血鬼が跳躍し、乗り移ろうとする。
だが。
『よっと』
「ぐあああああっ!?」
軽く機体を上昇させると、いともたやすく振り落とされた。
『トドメだ!』
落ちた先は、山の表面だった。
龍野はまず
『さて、自然を荒らすようで心苦しいが』
シュヴァルツリッターが、花畑に着地する。
程なくして、龍野が降りてきた。
「大丈夫か?」
「んんっ?(貴方は?)」
「俺か? ハーゲンとリオネさんの知り合い、と言ったらどうする?」
ギャグボールを外しながら、フェオの質問に答える龍野。
「あの二人の、ですか!?」
「ああ。そいつらがお前を捜していると聞いてな、手伝うことにした。おっと、少し待ってろ」
一度会話を中断すると、念話を始める龍野。
『おうハーゲン、フェオ君を見つけたぞ。ネーゼ様とリオネに「すぐUターンして機体に乗れ」、という内容を伝えてくれ』
『了解。どこにいた?』
『山頂の花畑だ。念の為に飛行したが、正解だったぜ』
『そうか、ありがとう。伝えとくぜ』
『ただ、気がかりな点が一つある』
『何だ?』
『俺達、包囲されてる気がするぜ』
神妙な声音で告げるヴァイス。
『聞こえてる、須王龍野!? 多数の鋼鉄人形らしきシルエットが、こちらに向かってくるわ!』
と、ビアンカから念話が飛んできた。
『聞こえてるぜ! 今向かう!』
龍野はフェオの手首を掴むと、「悪いが、俺の機体のコクピットに同乗してろ」と言いながら、強引にコクピットへ連れ込んだ。
そしてレーダーを確認すると――
シュヴァルツリッターを山頂に向かわせる直前に見た敵の識別信号が、“キューブ山”周辺1kmをほぼ完全に包囲していた。
作者からの追伸
有原です。
今度も包囲陣形突破となります。
ただし、先にネタバレをば。
今回の戦闘では全滅させません!
ここまで!
ロケット弾の残弾数:18発(これはメモです)
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