vs 火竜指揮官用(前半)

『どうした、ハーゲン!』

 念話で直接連絡を取る龍野。

 同時にレーダーを確認すると、“クリスタルレイク”近辺であった。

『ああ、“クリスタルレイク”には到着したんだが……。まさに今、邪魔されている状態だ……!』

 ハーゲンの近くにいる機体を、最大望遠で確認する龍野。

(リナリアに似たカラーリングだが、形状は全然違う。リナリア特有の上品さが無い。それに背丈も若干小さいな……)

 謎の機体が、ライフル銃を構える。

『ハーゲン、機体を伏せろ!』

 念話と同時に、シュヴァルツリッターが盾を投げる。

 機体は盾を、危なげなくバックステップで回避した。

『先制攻撃をした以上は言わせてもらう! 宣戦布告だ、白い機体!』

 龍野が拡声機能をオンにして叫ぶと、謎の機体から声が響いた。

『受けて立とう、シュヴァルツリッター。いや、須王龍野』

(!? 何故、俺の名前を知っている……!)

「問いかけても意味は無い」と思ったのか、内心で思うにとどまる。

「ただいま、J陣営の“須王龍野並びにシュヴァルツリッター”と、♠陣営の“ネルソン・ガラナ並びに火竜指揮官用”との決闘が成立いたしました。繰り返します。ただいま、J陣営の“須王龍野並びにシュヴァルツリッター”と、♠陣営の“ネルソン・ガラナ並びに火竜指揮官用”との決闘が成立いたしました。これよりカウントダウンを開始いたします。5, 4, 3...」

『ハーゲン! 俺に任せて行ってろ!』

『ああ!』

 念話でハーゲン達を進ませる龍野。

「2, 1, 0! 決闘開始!」

「覚悟しろ!」

 決闘開始と同時に、シュヴァルツリッターが光条レーザーを発射した。


     *


 その頃、モニター室では。

(龍野君が闘志を押さえきれなくなっているわね……。一度落ち着かせるべきかしら?)

 ヴァイスが思案しながら、シュシュと武蔵の後ろをカツカツと歩き回っていた。

「お、お姉様……」

「悪いけれど、話しかけないでシュシュ」

「はい……」

 ひとしきり歩き回ったヴァイスだが、やがて着席した。

「どうにも、良案が浮かばないわね……」

「おっ、龍野は戦うつもりだぞ」

「えっ……?」

 画面をチェックするヴァイス。

 そこには、謎の機体に盾を投げつけるシュヴァルツリッターが映っていた。

(もう、何を……って、少し待って! あの機体、まさか……搭乗者は!)

 画面を注視するヴァイス。

(データ照合……ッ! やっぱり、ね……!)

 席から立ち上がると、「少し外すわね。すぐ戻るから」と二人に告げるヴァイス。そして、ホテルに転移した。

「何としてでも勝ってもらうわよ、龍野君……! あった……!」

 青い宝石がはめ込まれたネックレスを手に、ヴァイスは歓声を上げた。


     *


「ッ!?」

 放たれたはずの光条レーザーは、避けられていた。

『単調だな』

 ネルソンの火竜がビームライフルを構え、数発連射する。

(そっちこそ……!)

 龍野はシュヴァルツリッターを左右に振る。

「ッ!?」

 しかし、

(どういう事だ……!?)

『まるで的だぞ、須王龍野……!』

 龍野が避けようと動かせば動かすほど、ビームが命中する。

 障壁の耐久は十分に残っていたが、このままでは膠着状態であった。

『だったら……!』

 一気に距離を詰め、接近戦に持ち込む。

『どうだ!?』

『甘いな』

 最初の斬撃は、軽く機体を動かすだけでかわされる。

(なら……!)

 魔術機関砲を連射するが、これも軽く回避された。

(ッ、当たらねえ!?)

 回避の動きを、そのまま斬撃に乗せてくるネルソンの火竜。

『そこだ!』

「ぐっ!」

 光剣をもろに受け止めてしまうシュヴァルツリッター。

 と、ネルソンの火竜が湖に向かって走り始めた。

(俺をおちょくってんのか……!?)

 魔力を噴出し、追跡する。

 背中を向けている間に光条レーザーを連射するが、当然のように全て外れる。

 だが、十分に距離を詰めた。大剣の間合いに入っている……!

(今だ……!)

『兄卑、下がって!』

 シュシュが慌てて叫ぶ。

 しかし、間に合わなかった。シュヴァルツリッターは既に大剣を振り下ろしていた。

『愚かなり!』

 ネルソンが叫ぶと、機体を全力で跳躍させる。

『ぐっ……!?』

 龍野が態勢を崩し、前に突っ込む。


 突っ込んだ先は、湖だった。

 派手な水音を上げ、シュヴァルツリッターは湖に沈んだ。



作者からの追伸


 初の前後編です。

 ラスボスと聞いたので、これくらいはしなくては。


 あ、ちゃんと後編もありますからね?

 シュヴァルツリッターと龍野が、水没する終わりなんてありませんからね?

 では、今回はここまで!

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