vs ガンシップ・クロウラ

「ん、何だ?」

 西に進んで7.5km。


 龍野達一行は、巨大な芋虫状の何かを見つけた。


『生物……なの?』

 真っ先に反応を示したのは、ビアンカである。

『さあ。けれど、嫌な予感がするわ』

 リオネが警戒し、迂回するように進み始める。

『ぷはぁ! 迂回するべきだろうな、皆』

 ハーゲンが提案し、それを聞いた龍野が先んじて避けて進む。

(!?)


 しかし、芋虫はシュヴァルツリッターの進路を塞いできた。


『おい! ハーゲン達は迂回しろ!』

『龍野!?』

『多分、俺に用があるはずだ! おいお前、聞こえたら応答しろ! 俺との決闘が目的か?』

 巨大な芋虫は、言葉を発さなかった。

 代わりに、ゆっくり浮上し、旋回して「○」を描いたのであった。

『ハーゲン。先に行っててくれ』

『いいのか?』

『巻き添え食らわせるワケにもいかねえし、何より急ぎだろ? 後で追い付くからよ』

『わかった。リオネ、ビアンカ、行くぞ!』

 ハーゲンは2機に指示すると、西へ進んで行った。

『龍野君、あの3機にマーカーを取り付けたわ。後で手がかりにして』

 マーカーと言っても、物体ではない。レーダーに、特定の機体の位置を測定する機能を使用しただけである。

『あいよ、助かるぜ』

 龍野はヴァイスに一礼すると、拡声機能をオンにした。

『俺と決闘しろ、芋虫野郎!』

 巨大な芋虫は再度浮上し、旋回して「○」を描いた。

『決まりだな!』

「ただいま、J陣営の“須王龍野並びにシュヴァルツリッター”と、♣️陣営の“ガンシップ・クロウラ”との決闘が成立いたしました。繰り返します。ただいま、J陣営の“須王龍野並びにシュヴァルツリッター”と、♣️陣営の“ガンシップ・クロウラ”との決闘が成立いたしました。これよりカウントダウンを開始いたします。5, 4, 3...」

 再びアナウンスが響いた。

『覚悟しろ!』

 大剣と盾を正眼に構える龍野。

「2, 1, 0! 決闘開始!」



 決闘開始を告げるアナウンスが響くと同時に、光条レーザーを2発叩き込むシュヴァルツリッター。

 しかしレーザー対策をしているのか、表面で蒸発した。

(ッ、遠距離攻撃は無効か!)

 機体を飛翔させ、距離を詰める。

 すると、背中のハッチが一斉に開いた。

(何だ、何が来る!?)

 プシュウと何かがロケット噴射する。計8つだ。

(まさか――ッ!)

 それは即座にシュヴァルツリッター目掛け、一直線に飛翔してきた。

「ミサイルかよ……!」

 しかし即座に光条レーザーを展開。間に合わなかったものは障壁で強引に弾いた。

(障壁残量83%……! まだ十分ある!)

 一気に背中に乗り、開きっぱなしのミサイルコンテナに光条レーザーを叩き込む。

 装甲されていなかったようでダメージを与えたが、浅手だ。

 すると、芋虫が急旋回した。

「ぐっ!」

 シュヴァルツリッターのコクピットが常に重力に従い続ける(パイロットが回転しない)構造だったため、龍野への負荷はそこまで強いものではなかった。

 だが、咄嗟の出来事に対応しきれず、振り落とされる。

「畜生……! だがそこまで速くはねえな。すぐに飛んで――ッ!」

 尾部のビーム砲が、シュヴァルツリッターの障壁を削った。

(残量80.5%……! 何度も食らいたくねえな!)

 即座にサイドステップし、ブースターから魔力を噴射。

 側面――または脇腹――のビーム砲が連射してくるが、可能な限り魔力を纏わせた盾で受ける。

(盾の耐久力は65%か……! やっぱり桁違いの威力だな……!)

 しかし、どうにか接地面である下腹に移動する。

(頼むから、効いてくれよ……!)

 魔力を纏わせた大剣で、装甲を一突きする。

 ガヅンという音がしたが、僅かに亀裂を生んでいた。

(今だ、『重量調節グラビティ』発動! こいつの重量を、1000tにしろ……!)

 同時に素早く魔力を噴射し、脱出する。

 と、次の瞬間。


 辺りに猛烈な土煙を上げ、クロウラが地べたに落ちた。


『ヴァイス、弱点はどこだ!?』

 行動不能にし、確実にケリをつけるつもりだろう。

 龍野は離れた位置から、クロウラのいる土煙を眺めていた。

『正面の口にある大砲ね。普段は閉じているけれど、攻撃直前に数秒だけ開くわ。その間に撃ち貫いて』

『了解だ。さて……』

 光条レーザーを放ち、土煙をどける龍野。

『一騎打ちといこうじゃねえか!』

 龍野が叫ぶと、クロウラが口を開く。

『来いよ!』

 目からビーム砲が乱射される。

 いくらかもらうが、障壁と盾で防いだ。

『何をしているの龍野君!?』

 ヴァイスが叫ぶが、龍野は大剣と盾を構えたまま動かない。

 そして――


 クロウラの口から、約220mmの質量弾が放たれた。


『ふっ!』

 だが、龍野は絶妙なコントロールで、シュヴァルツリッターの体を軽く捻らせる。

 砲弾はシュヴァルツリッターの脇を空しく通り抜けた(衝撃波があるが、そちらは障壁で無効化している)。

『俺の勝ちだな』

 光条レーザーを放ちながら、宣言する。

 狙い通り、体内の弾薬や出力源にダメージを与え――クロウラは爆散した。


     *


「決闘終了。勝者、“須王龍野並びにシュヴァルツリッター”。繰り返します。勝者、“須王龍野並びにシュヴァルツリッター”。これにより、J陣営に1のアグニカポイントが付与されました」

『さて、ハーゲン達を追うか』

 龍野はクロウラに背を向け、魔力を一気に噴射する。

『この方角で間違いないな……』

『龍野君!』

 すると、ヴァイスから怒鳴り声が飛んできた。

『どういうつもりかしら、あの戦いは?』

『一騎打ちだぜ?』

『……』

 呆れてものも言えないとは、このことである。

 ヴァイスは顔を怒りと別の何かで赤らめながら、こう告げた。

『今夜、覚悟することね……』

『へいへい(やれやれ、眠れなくなるぜ)』

 軽く受け流しながら、西へ向かう龍野。


 ヴァイスのマーカーを頼りに、ハーゲン達の位置まで急行する。

 もう300mで到着すると、龍野が思った時――

(……ん?)

 集まっている機体、を発見する。

 そこには、リナリア、ゼクローザス、インスパイアと――


 リナリアによく似たカラーリングの機体が存在していた。



作者からの追伸


 有原です。

 次は、あの機体を出します。

 え、どうしてビンイン陣営に味方するような立ち位置か、って?

 それは……


 もうビンイン陣営のロボットをほぼ使い切ったからだよ!


 という訳で、アイツに「好奇心で引っ掻き回している」という思考を持たせております。

 今回はここまで!

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