社長候補(4名)による評議

 壁の内側に存在する、古風な地下建造物にて。

 金髪の女性が機体から降り、いずこかへと一直線に歩む。ある所で立ち止まり、声高らかに告げた。

「私の映像は見てくれたかしら?」

 すると、アライグマの耳が壁から現れた。

「見たぞ。あの機体のいる戦力は桁違いだな」

「貴女、私達よりも上の立場なのでしょう? どうにか戦力を削ぐことが出来ないのかしら?」

「そうだな……」

 金髪の女性とは別の声が、押し黙る。

「む? こんな時に何だ?」

 耳を押し当て、何かを聞き取るアライグマ。

「緊急招集? わかった、すぐに向かう。済まないリーゼロッテ、私と彼らへの映像提供に感謝する。また会おう」

「わかったわよ、モナリザ」

 モナリザことモナリザ・アライは転移を始め、一瞬で消え去った。

「さて……レヴァレアスを戻しておかないとね」

 女性型機体――レヴァレアスのパイロットであるリーゼロッテ・ヴィルシュテッターは、堂々とした足取りでコックピットへ向かって行った。

「うふふ……この子はいつ、強くなるのかしら……?」


     *


 龍野やリーゼロッテ達がいる場所とは別の世界にて。

「あいつを今呼びつけた。本来ならサイボーグの研究をしながら妹をでている時間なのだが、緊急事態なら仕方がない」

 身体に傷一つ無い男が、突然の招集を行ったらしい。

「そう言うな。余もあやつらの過剰な戦力は、削いでおきたかった」

 そう話したのは、黄金の装飾品を身に着けた赤黒い骸骨だった。彼もまた、招集に関わったのだろう。

「ただ、ルールの範囲内においては戦力を残しておきましょう。幸い“代理”のデータ登録は、終わっているようですから」

 自走するモニター越しに話しかけたのは、比較的短く薄い金髪と真紅の瞳、それに純白の肌を持つ少女だ。

「こちらとしては『公平な査定』を行いたいのですが、

 大好きな仕事を前にした仕事人のような顔つきで、宣言する。


「済まない、ソリティア、ビンイン、リンド!」


 そこにモナリザ・アライが到着し、Jの陣営を除く社長候補が全員揃った。

「来たか。遅いぞ」

「まあ落ち着け。始めようではないか」

「賛成ですね」

 それぞれの反応を示しながら、集会が開催される。

「各々映像は観てくれたな?」

「ああ。城一つ丸ごととは、あの小娘も思い切った事をしてくれた」

「加えてあの黒騎士……我々の戦力の内、何体が勝利出来るのだろうか」

「同感です。他にも意見はあるのですが、一度モナリザさんの言葉を聞かせていただいてから発言します。どうでしょう、モナリザさん?」

 リンドが話を振ると、モナリザは決断する。

「戦力――少なくとも城と中の人員――は削るべきだ。それについては、皆と方針は変わらない。しかし、どうやって減らすのか? それが問題だ」

「でしたら、私が遂行致しましょう」

 リンドが発言すると、モニターがブツリと切れた。

「ここからは"SOUND ONLY"でお願いしますね。今こそ能力に感謝する時ですから」


 先程と変わらない、しかし上機嫌な声が、暗転したモニターから響いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る