出撃登録(主人公機4機)

登録――シュヴァルツリッター

「これ」

 フーダが紙切れを差し出す。

「あの大きいのに乗ってから、読んで」

「読めって? なになに……」

 言われた通り、シュヴァルツリッターに搭乗してから紙切れを読んだ龍野。

「ん……? 何も書いて……って、浮かび上がってきたぞ」

 そこには、次のように記されていた。


・コイン型装置”ベル”の常時装着

・一辺が10mの立方体に入り切るスペースであること(重量は問わない。また、装備は携行していれば装備していなくても問題ない。ただし入り切るだけしか認めない)

・通信機器の無料貸与及び規格

・オペレーター(名前を記入すること。上限三名)


「あいよ。となると、『オペレーター』三人は、あいつらに頼むか」

 ヴァイスとシュシュの名前は、で書ける。

 しかし『しんどうむさし』の字は、龍野には(どれが正解か)わからなかった。

「なら、話は一つだな」

 龍野は機体から降りると、武蔵にサインを貰おうとした。

「ん……?」

 すると、通りがかったときにを見つけた。

(ああ、サイズチェッカーか……)

 武蔵の前に来た龍野は、紙とペンを出してこう言った。

「武蔵。この四角いスペースに、サインしてくれ」

「先に読ませろ。ふむ……ならば協力しよう」

 紙を一読してから、すらすらとサインする武蔵。

「力を惜しむ軍人は軍人ではないからな。これでいいだろう」

 サインを見せながら、龍野に紙とペンを返す。

「ありがとよ(メンテ中だな……けど、許可だけ貰うか)」

 ヴァイスとシュシュの順番で、念話を入れるのを決定した。

『ヴァイス。お前の名前で、サインしたいんだが』

『ご自由に。言っておくけれど、私、地獄耳なのよ?』

『聞こえてたのかよ』

『盗み聞きしちゃったのはごめんなさいね。けれど、進藤少尉とのやり取りは聞いていたわ。軍人に協力を約束させる内容なのでしょ?』

『ああ……』

『となると、「“戦力”として求める必要がある」。そう判断するのが自然。そして龍野君、今更私と貴方の仲を疑う余地は無いでしょ?』

『なら決まりだ。サインさせてもらうぜ』

『ええ』

 龍野はヴァイスの名前をサインし、念話を打ち切った。

「よし、もう一人」

 シュシュにも念話を入れる。

『おう、シュシュ』

『何かしら?』

『紙切れへのサインを入れさせてもらうぜ』

『ふざけないで!』

(ああやっぱ、そういう反応かよ……)

 龍野は当然の反応と知りつつも、応戦した。

『ヴァイスからのサインはいただいているぜ』

『ッ……何のサインよ?』

(やっぱ、そういう反応だな……)

 龍野は相変わらずのシュシュの反応に、内心で軽く笑った。

『「ナビゲートなどの案内」』

『勝手にしなさい!』

 シュシュからの投げやりな許可を受け、龍野はサインした。

(さてと……。それじゃ、後はシュヴァルツリッターの全装備を、謎の枠に収めるだけか)

 龍野はシュヴァルツリッターの操縦席まで駆け戻ると、起動させた。


『ヴァイス。装備はどこにある?』

『「ヴァイスリッター・ツヴァイ」のさらに奥よ。黒色の枠で囲った兵器を、全て持って行っていいわ(ふふ、龍野君。何をしているかは、後でフーダちゃんに聞かせてもらうわよ)』

『あいよ』

 龍野は黒い太枠にあった全ての武器を回収する。

 基本装備の大剣とロケット弾内蔵の大盾。

 加えて、


 30mmハンドガン、『HG-300 ダガー』、


 30mmサブマシンガン型連射砲、『NMG-300 ストライカー改』、


 1.50インチ(38.1mm)アサルトライフル型連射砲、『AR-381 ブレイズ』、


 40mmヘッドセット状兵装、『魔術機関砲』。


 有りっ丈の兵装を抱え込み、一度シュヴァルツリッターの収納されていたスペースに寝かせる。

「じゃ、行くか……!」

 龍野はシュヴァルツリッターを往復させる。

 まず大剣と盾をスペースに放り込む。

(大剣は斜めで、どうにか入りそうだ。盾も地面に斜めの向きにして寝かせれば、入るな)

 慎重にスペースに収める。

 一見薄い箱の外枠だが、びくともしなかった。

(他の装備類も、うまくすれば入るな。場合によっては直接機体で持つ必要があるが……)

 悩んだ末に、サイズの大きな『NMG-300 ストライカー改』と『AR-381 ブレイズ』だけは寝かせ、残りは手に持つことにした。

(しゃがめば……)

『見えているから言うわね、龍野君。よ』

(“王への礼儀”――? そうか! その姿勢なら……!)

 龍野は西洋の礼儀――即ち、左ひざを立ててひざまずく姿勢――を、ヴァイスの言葉で思い出した。

(うっ、なかなかキツいな……けど……!)

 少しずつ入り、最後は盾の上に乗って動きを止めた。

(これで、どうだ……!?)

 その五秒後。

 青い光が、シュヴァルツリッターや周辺の装備を通り抜けた。


(ん? もう終わり、か……?)

 龍野は装備一式を愛機ごとどけ、元あった場所に戻す。

 そして機体から降りると――


「お願いね。騎士様」

 フーダが無表情に、龍野に告げた。


 これで須王龍野と愛機『シュヴァルツリッター』、そしてその装備一式の登録が完了した。

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