戦闘実験参加の経緯(特殊「ヒーロー」)

リーゼロッテ・ヴィルシュテッターと近づく者

「つまらないわね。簡単に勝ち取れる『完璧』など」

 降り立った地球で、眼前の戦況を眺めるのは、大型かつ指揮機である人型機体、「レヴァレアス」。

 そして、それを内部で操る女性、リーゼロッテ・ヴィルシュテッター。

 彼女は、降下した地球での戦況を見て、退屈を覚えていた。

「さて、どうしたものかしらね……」

「リーゼロッテ・ヴィルシュテッターだな?」

 突如、無線に入った声。

「どなた?」

「機体を動かすな。メインカメラの前に立つ」

 声はリーゼロッテの質問を無視し、しばらく途絶えた。


 二分後。

「きゃっ!?」

 メインカメラの前に、獣人の女性が映りこんだ。

「驚かさないでくださいまし!」

「すまない。だが、こうでもしなければ素性を明かせない、といったものだろう」

「それで? どなたなのかしら?」

 リーゼロッテが問い詰めると、女性が答え始める。

「私の名前は『モナリザ・アライ』。ゆえあって理由は明かせないが、貴女の力を貸していただきたい。リーゼロッテ・ヴィルシュテッター殿」

「そんな話に乗るとでも?」

「貴女の求める報酬を、何でも出す。こちらは必死だ。どうか話だけでも!」

「そうねえ……。では、『完璧な勝利』を求めるわ」

「ならばお安い御用だ」

「言ったわね? 後で契約書を書かせるわよ」

「ああ。後でサインするから、一度契約は成立したものとして、これを受け取っていただきたい」

 モナリザは、手に「コイン入りの腕輪」を持っていた。

「受け取らなければ、契約に関わる事柄を遂行出来ないかしら?」

「ああ」

「わかったわ。今コクピットハッチを開けるから、待ってて」

 ハッチを解放し、「放り投げて!」と要求したリーゼロッテ。

 腕輪をキャッチすると、身に着けた。



「では、契約成立だな」



「きゃああああっ!?」

 リーゼロッテは、愛機ごと異世界に転移させられた。


 正確には、彼女の所属する機体全機もまた、同時に異世界に転移していたのだが――彼女はまだ、その事実を知らなかった。

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