機体不調

「ん……どうなったんだ!?」

 真っ先に目が覚めた龍野は、周囲の様子を確認する。

 相も変わらず、医務室の中であった。

「特におかしくなっちまった点は見当たらねえが……」

 龍野自身はもちろん、ヴァイスも、シュシュも、武蔵も、そしてフーダもちゃんといる。

「おい、お前等大丈夫か!?」

「ええ、何ともないわ龍野君」

「兄卑に心配されるほど、わたくしは打たれ弱くありませんわ」

「シュシュに同じく」

「うん……。へいき……」

 龍野の確認に、それぞれが肯定の返事を行った。

「なら一安心だな……ところで、機体は無事か!?」

「ええ、念の為に確認しましょうか。フーダちゃん、ついてきて」

「わかった……」

 五人は格納庫へ行き、愛機のチェックを行うことになった。


「ダメね、機能不全を起こしているわ。先ほどのアクシデントの、影響かしら……」

 ヴァイスは力なく首を振るう。いや、ヴァイスだけではない。

 シュシュも、武蔵も同様だった。

「わたくしの『ヴァイスリッター・ツヴァイ』もダメでしたわ……」

「後で『漆黒』のメンテナンスだな。二人も原因を探るべきだ」

「ええ、そのつもりですわ進藤少尉。そうだ、兄卑。まだ機体の確認を終えていないのではなくて?」

「そうだな。フーダのおりを頼むぜ」

 機体に向かい、コクピットに座る龍野。

(動作確認……。おっと、どうやら『シュヴァルツリッター』は動いてくれるようだな)

 バイザーが点灯し、起動完了を知らせる。

 龍野は拡声機能をオンにし、連絡を入れた。

「あーテステス、うるさくねえか?」

『大丈夫よ』

 ヴァイスが念話で龍野に知らせる。

「なら良かったぜ。結論から言う、俺の『シュヴァルツリッター』は動く」

『それなら、有事の戦闘は大丈夫ね。悪いけれど、しばらく戦ってくれないかしら?」

「言われるまでもねえ(漠然としているが、フーダがカギを握っていそうだ。協力あるのみだな)」


 龍野は機体から降りると、四人の元へと戻って行った。

『俺の機体は、全くもって無事だったぜ。そうだヴァイス、魔術は使えるよな?』

『後で確認するわ。進藤少尉とフーダちゃんを連れて、医務室へ行って』

『ああ』

 人払いのために、武蔵とフーダを連れて医務室へ戻る龍野。

 残されたヴァイスとシュシュは、魔術の発動確認を決行した。

「使えるわね。シュシュ、貴女は?」

「問題ありませんわ、お姉様」

「となると……一度機体の確認を行うべきね」

「ええ。少しだけ、待ってちょうだい」

 ヴァイスはシュシュを先に行かせ、龍野に念話で連絡した。

『龍野君。機体の点検を行うから、少し遅くなるわ』

『わかった。二人の見張りは任せてくれ』

『頼むわね』

 龍野の承諾を取り付けたヴァイスは、『ヴァイスリッター・アイン』のチェックを始めた。

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