~幕間~ 情報提供

「わかりました。ですが、互いの素性を明かすのが先。一度機体から降り、その上で話し合いませんこと?」

 動揺する龍野をよそに、ヴァイスが切り出した。

「承知した。信用に値することを示す為に、まずおれから降りよう」

 武蔵はあっさりと承諾し、そして機体から降下した。

「では、私達も行きましょう」

「ああ……」

「はい」

 龍野達3人も続いて、機体から降下した。


 それぞれの機体から降りた4人は、自己紹介を始めた。

「改めて自己紹介させてもらう。俺の名前は進藤しんどう武蔵むさしだ。階級は少尉しょうい、所属は帝国軍第さん(3)機甲機動きこうきどう連隊。これから、よろしく頼みたい」

 口調はやや粗雑だが、所作は軍人にふさわしい整いぶりだった。

「あいよ、武蔵。俺は須王すおう龍野りゅうや。ここ、ヴァレンティア王国の騎士だ。そして、こちらは……」

 龍野は手のひらで、ヴァイスとシュシュを指し示した。

「ヴァイスシルト・リリア・ヴァレンティアと申します。ヴァレンティア王国第一王女ですわ。“ヴァイス”とお呼びくださいませ」

「シュヴァルツシュヴェーアト・ローゼ・ヴァレンティアですわ。ヴァレンティア王国第二王女。ヴァイスシルトお姉様の妹でございますわ。“シュシュ”とお呼びくださいまし」

 各々が自己紹介を終え、素性を確認する。

「で、武蔵……だっけ? 聞きたいことがあるんだが」

 早速の質問を龍野が飛ばす。

「何だ、龍野」

 あっさりと、武蔵は受けた。

「さっきのあいつら……。いったい、何なんだ?」

「順番に説明させてもらおうか。2種類の機体がいたのは、前提としては正解だな?」

「ええ、それは間違いありませんわ」

 肯定するヴァイス。

 それを確認した武蔵は、説明を始めた。

「機体の色は、2種類ともプラチナまたは銀といったものだな。だが、黄色いラインマーキングの有無による違いがあったはずだ。まずは、側の機体から始めよう」

「少し待って。記録の為に、一度ロボットに戻らせてもらうわ」

 ヴァイスが水を差した。が、武蔵は一分後に説明を再開した。


「まず、ラインマーキングの無い機体ヤツが“エーギアス”だ」

「“エーギアス”……」

「あっと、間違えた。エーギアスはエーギアスでも、“エーギアス(指揮型)”と言うべきだな」

「“指揮型”……?」

 龍野が眉をひそめる。

「ああ。エーギアスには、“指揮型”と“兵士型”の2種類がある。黄色いラインマーキングが無いのが“指揮型”、あるのが“兵士型”だな」

「違いは?」

 龍野がせっつくが、武蔵はペースを変えずに話し続けた。

「“指揮型”は武装が弱い代わりに、索敵能力が高い。反対に、“兵士型”は索敵能力では劣るが、武装が充実している。大雑把に言えばこんなところだ」

「一つ、質問がありますわ」

 割って入ったのはシュシュだ。

「貴方の話に、疑問がありますの。区分としては、それで良いのかもわかりません。実際、数の上では“兵士型”が多かったわけですから。けれど……そうだとすると、なぜ『“指揮型”を撃破しても、“兵士型”は活動を停止しなかった』のでしょう?」


「ああ、それか。簡単だ。“兵士型”は……いや、“兵士型”に限らず、の機体は全て、仕様というだけだ」


「!? だとしたら、意味が……」

「いや、意味はあるにはある。“指揮型”を潰せば、作戦遂行の効率は減少させられる。しかし、“撃墜の順序”という点で考えれば、厄介だな」

「ありがとうございます、進藤少尉。しかし、まだお聞きしていないことが」

「何だ」

 ヴァイスはゆっくりと息を吸い、武蔵の瞳を見つめて告げる。

「貴方は、どこから来たのですか?」

「あぁ、“どこ”、か……。そうだな……」

 武蔵は答えを探すために、目を閉じる。

「こう言うべきか」

 数秒後、目を開いて3人に言った。



から、だな」



「おい……どういうこった!?」

「おっと、おれに噛みついている暇は無いぞ。こうしている間にも、奴らの暴虐は続いているから……な!」

「ぐっ!(おいおい……なんて力だよ!)」

 武蔵は龍野を振り払うと、愛機である“漆黒しっこく”に乗り込む。

「兄卑、思うところはあるでしょうけれど……わたくし達も乗るわよ!」

「そうするぜ、ひと段落したら存分に問い詰めてやるけどな!」

 龍野とシュシュも、それぞれの愛機に搭乗した。

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