覚醒せし三騎士 その3

「見えた、あの機体群か!」

 ヴァイスに続き、龍野が敵機を確認する。

 6機の、プラチナの機体。うち5機は、黄色のラインマーキングが施されていた。

「どれどれ……うわあ。絶賛侵略中、って状態だな」

 武器を手に、近隣の歩行者や自動車を威嚇している。ヴァレンティアの国民ではあり得ない行動だ。

「ええ。さて、まずは警告から始めなくてはね」

 ヴァイスは大きく息を吸うと、拡声機能をオンにして敵機に呼ばわった。

わたくしはヴァレンティア王国第一王女、ヴァイスシルト・リリア・ヴァレンティアでございます。貴機ききは我々ヴァレンティア王国に破壊行為を行っております。即刻武器を捨て、機体を停止し――」



「危ねえヴァイス!」



 龍野が叫び、ヴァイスリッター・アインの前に立ちふさがる。

 直後、シュヴァルツリッターの障壁が展開された。

「正当防衛成立だな、ヴァイス!」

「ええ。各機、迎撃を許可するわ。殲滅せんめつを」

「了解!」

「はい、お姉様!」

 3機が剣を構え、プラチナの機体群に突撃する。

『ヴァイス! 俺は奥の1機を狙う!』

 龍野が念話を展開し、秘密裏の通信を始めた。

『わかったわ。その機体だけ若干大きく、かつラインマーキングが見当たらないから、おそらく指揮機でしょうね』

『あいよ! 他の奴らは任せた!』

 龍野がヴァイスに向けた念話は、機体を通じてシュシュにも伝わっている。『わかったわよ、兄卑あにひ!』と返事が飛んできた。

(助かるぜ、二人とも。それじゃ、俺は俺のすべきことをさせてもらう!)

 距離を一気に詰めるシュヴァルツリッター。プラチナの機体はロケット弾やミサイルで抵抗を試みるが、全てが障壁に弾かれた。

「覚悟!」

 大剣を振り下ろし、一刀両断。

 指揮機と思われる機体は、数瞬の沈黙の後に爆発四散した。

『撃墜! そっちはどうだ、二人とも?(それにしても……やけに単調な動きだったな、さっきの機体。少し引っかかるぜ)』

『ダメね。抵抗は続いているわ』

『お姉様と同じく。わたくし達も1機ずつ撃墜したけれど、残る3機もとさなくてはね』

 姉妹揃って、否定の返答である。

『了解。だったら話は早いな!』

 龍野は近くの敵機に狙いを定め、剣先を向ける。

 挙動を察した敵機が防御態勢に移る。しかし。

「悪いが、いただくぜ!」

 龍野が光条レーザーを放つ。

 敵機はなすすべなく貫かれ、擱座かくざした。


 敵機の爆発を見届けた龍野は、周囲を見回した。

「ふうっ、終わったぜ……っと。どうやら、お前らも片付けたみてえだな」

「ええ」

「当然ね」

 ヴァイスもシュシュも、敵機を撃墜していた。

 3機は周囲を警戒しつつ、相談の為に一度集合した。

「さて、撃墜はしたが……」

、の調査は必要よね」

「それに、動きも単調だったわ。まさか、無人機かしら?」

「ああ、やっぱシュシュもそう思ってたか。ちょうどそこに1機いる。試してみるか」

「自爆には注意して、龍野君」

「わーってるよ。ちゃんと遠距離から試すさ」

 龍野はシュヴァルツリッターを操り、剣先を敵機に向けた。

「貴機のパイロットに告ぐ。コクピットから脱出し、武器を捨てて両手を頭に付けろ。従わなければ、貴機のコクピットを破壊する。繰り返す……」

 都合三回の呼びかけ。

 しかし機体は、何の反応も示さなかった。

「これは最後通告だ。従えば命だけは保障する」

 最後の呼びかけにも、やはり応じない。

『ヴァイス、シュシュ。いいか?』

『ええ。これだけ応答しても返答無し。結論は出たも同然だわ』

『お姉様に同じく』

 二人の返答を聞いた龍野は、光条レーザーを放ってコクピットを貫いた。

「さて、更なる調査が……」


「待って、龍野君! 西方向から正体不明機アンノウン接近!」


 ヴァイスの呼びかけを聞いてレーダーをチェックすると、西方向から黄色の矢印(矢じり)が迫ってきていた。

「アンノウンって……まさか、じゃねえか?」

「違うわね。だとしたら、味方の反応を示すように設定済みよ」

 ヴァイスが即座に否定する。

 すると、通信要請コールが飛んできた。

『出るか?』

『出るべきね』

『兄卑、お願い』

 確認を終えた龍野は、コールに応じた。

「誰だ?」

「こちらは進藤しんどう武蔵むさし、並びに機体漆黒しっこく。質問だ、先ほどの敵機群を撃墜したのは貴官らか?」

「敵機群? あのプラチナの機体6機のことかよ?」

「その通りだ。繰り返す、撃墜したのは貴官らか?」

「ああ、そうだぜ」

「承知した。ついては唐突な話だが――」

 武蔵の言葉に、龍野は身構えた。


「協力関係を結びたい。我々はあの機体群と敵対関係にある」


 龍野の動揺を表すかのように、風が吹いた。

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