第25話 会いたくはなかった。

「まったく、面倒な事になっちまったな。」

「依然として、ターゲットは見つかっていません。」

「はあ…本当に2人なのか?」

「ええ、彼からの情報です。拳銃も同時に奪われたとの報告が…。」

「…射殺許可は?」

「認められません。」

「了解、それじゃあ無線を切る。何かあれば連絡してください。モニタリングはしてあるんでしょ?」

「はい、現在基地周辺に集結しています。」

「…こっちは、単独で行動する。」


そう告げると同時に無線は切れた。


「…どうしたものか。」


大吾だいごは、そう愚痴をこぼしながら辺りを見回した。

人気のなく、ただ暗いだけの街がそこにはある。

しかし、今回は話が別でいつものなら破壊しても何も問題はないのだが、今日は家で寝ている人達がいる。

…どうせ、この後起こしてしまうことになるので、どうでもいい。


大吾は、M1AGライフルを持つと行動を開始した。

いつもとは違う民間製品のライフルは気持ちが良いものではなかった。

だが、拳銃よりはいくらかまともではある。

ライフルの先端下部にナイフをつけ、弾倉に弾を込め一発抜いた。

背中に載せてあるIS12MGショットガンを再び背負いなおし街を歩く。


「…懐かしいな。」


そんなことを思いながら、俺は街を歩いた。

ここは、前とは違う場所で何もかも違うのになんでそんなことを思うのだろうか?

この町は、どこもあの町とは似ていないのに…。

結局、彼らはどこに行ったのかわからなかった。

…もしかしたら、これから会う2人は、そうかもしれない。

俺と同じセカンドワールドの住人だ。

けれど、何故だろうか?



俺は、どこか後ろめたさを感じながら彼らを探した。

皮肉なことに、俺は引き合わせたくなかった人達を引き合わせてしまったことを悔やんだ。




雅刀まさとは、走っていた。

ただただレーナを見つけるためだけに、学校まではほんの少しだ。


「…もう少し。」


そんな時だった、俺はまた、出会ってしまった。


『あら、まだ居たの?』

『…君も不幸だな。』


あと少しで学校だというのに、もう少しでレーナに会えるかもしれないのに…。

何で…また…。


「…何で?」


そこには、先ほどと同じような光景が有った。

顔が血で赤く染まった男性、周囲にある小道具、切れたワイヤーつきの拳銃…。

赤いドレスの人形と、紳士服の人形。

その間に置かれているのは人間だった。

ただその人間はうめき声を上げ、血を流していた。

人形はただ上っ面の表情を浮かべていた。


「すまないね。」


パンっと、乾いた音がした。

見ると俺は、撃たれていた。

痛くはない?撃たれた?死んだ?

どうやら、まだ、知覚はできていない。


「うっ…。」


一息遅れたように俺は、地面に這いつくばった。

ここで、やっと痛みを覚えた。

まるで、麻酔のように効いていたのは流れ出ていた俺の血液だった。


「あら、殺しちゃうの?」

「もうここまで来れば隠れる必要もない。」

「それもそうね…いつまで手に持っているつもり?」

「ああ、すまない。」


何かが落ちた音がする。

また、乾いた音がした。


…死ぬのかな、俺?


「雅刀!」


聞いたことのある声が一瞬、聞こえた。

しかし、音によってかき消される。


そして、また音がした。

何かが地面に叩き落とされた。


「…噓。」

「すまない…助かった。」

「あんたも魔法使いなんでしょ?これくらいのことも出来ないのに良く生き残れたわね。」

「まあね。」


…熱い。

何が燃えているんだろう?


「それじゃあ、嬢ちゃんすまないが、あんたもそこの坊主みたいに!」

「誰が、死ぬか!」


再び発砲音がした。

今度は、金属音が鳴り響いた。


「…まさか。」

「どうした、嬢ちゃん?」

「…魔法粒子結晶体クリスタル?」

「あら、知っているとわね…だったら、なおさら殺さなくちゃ!」

「…くっ!」


俺の横に、彼女が落ちてきた。

額に血が一筋走り、目を閉じていた。

服は、焼け焦げたあとがあり、彼女の白色の下着があらわになっていた。


「それじゃあ、2人ともさようなら…FIREファイア!」


また、音が聞こえた。

けれど…俺はもう目が開けなかった。

このまま、沈んでいくような感触を俺は覚え始めていた…。

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