第20話 甘味処 ろまん

放課後、雅刀まさとは掃除の終わった教室に居た。

明日は授業が無い為、月曜まで休みだ。

家に早めに帰って、それから買い物にでも行って、飯食べてあとは風呂に入って寝ればいいだけだ。

しかし、身体が言うことをきかない。一週間分の疲れが蓄積しているからだ。

だが、帰らなければゲームが出来ない。

とはいえ、そもそもそのゲームもソフトを一本しか持って無いのでもう飽きてしまっている。

スマートフォンアプリも、もう周回に疲れてしまい3日くらいログインしていない。

そんなわけで、重い体を持ち上げ家に帰ることにした。


「…。」


友人達は、ほとんど先に帰ってしまった。

まあ、だいたい大吾だいごのせいだが…。

ようするに、大吾との競争だ。

大吾より、早く教室から出て門を出られるのかというと…。

正直言って、子供っぽくはあるが言うまでもなく…自分も参加していた。

そして、今日も…いや、今日だけは女子も気合いが入ってたらしく競争が起きていた。

勿論、大吾が一番だった。


「あれっ、まだ、居たの?」

「はい。」


廊下に出るとレーナさんが居た。

何故かはよくわからないが…まるで、俺を待っていたような気がした。


「どうしたの?家の合鍵かぎなら渡してあるのに?」

「いえ、そういう事ではなくて一緒に帰りませんか?」

「ああ、それなら構わないけど…果歩かほはもう帰っちゃった?」

「はい、物凄く速かったです。何というか、うさぎみたいでした。」

「そうかな?」

「はい、うさぎって思っているよりも足が速いですよ。」

「そうなんだ、それじゃあ、帰ろうか。」

「はい。」


俺は、そうして学校を後にした。

あとは、まっすぐに家に帰るか寄り道をするかだった。


「あの雅刀さん?」

「何?」

「はい、大吾さんについてお聞きしたいのですが?」

「えっ、ああ…別に構わないけど。」

「そうですか…それじゃあ、いくつか質問を!」

「あっ、うん。」


何故かは知らないがレーナは、大吾について俺に聞いてきた。

とはいえ、俺が知っていることはそう多くはない。

果歩は、大吾の妹の京香きょうか柚香ゆずかといつも話しているから俺よりも彼女たちの方が良く知っているとは思う。

まあ、レーナさんだから別に、大吾のことを話しても問題ないような気がした。


「まず、大吾さんの性格について教えてください。」

「性格かな…面倒くさがりかな?それと、無頓着か天然も入ってそう。」

「なるほど…。それじゃあ、次に好きな物って、何ですか?」

「…あいつが、好きな物ねえ…エナジードリンクとか、ハンバーガーとか、あとは甘いものかな。コーヒーのブラックは苦手みたいだけど。家では、紅茶を飲むって言ってた。」

「甘いものですか。それじゃあ、いつもはどこに居ますか?」

「書店と、ゲームセンター…たまに駅前のフードコートとか、喫茶店にいるよ。」

「かなり幅広いですね。他には?」

「う~ん、神社かな。お団子を食べに行っているらしい。そこでは、ほうじ茶を頼んでいるらしい。」

「お団子…日本のお菓子ですか?」

「えっ、ああ…そうか…それじゃあ、今からそこに行ってみる?」

「神社にですか?」

「いや、正確にはその近くの喫茶店、急がないと閉まっちゃうから!」


そして、俺はレーナさんを連れて大吾がよく通っているらしい喫茶店へと向かった。


「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」

「2人です。」

「お煙草は…すいませんよね?」

「はい。」

「それでは、ご案内いたします。」


席に案内された俺とレーナは、互いにメニューを見て、俺は抹茶アイスを頼み、彼女は三色団子を頼んだ。

喫茶店というよりは、甘味処のようで和をイメージした店になっていた。

なかなか一人では、入る気にはなれないが大吾はなぜ、いつもこの店に来るのだろうか?

よほど、ここの甘味が美味しいのだろうか?


「…日本って、感じがしますね。」

「うん、そうだね。」

「このお店は古くからあるんですか?」

「どうだろう、俺が子供の頃からはあるみたいだけど…。」

「そうなんですか。なるほど…それじゃあ、あの…質問の続きを。」

「ああ。」


俺は、渡された水を一口飲み、レーナを見つめた。

何というか、まあ…綺麗だった。


「それじゃあ、質問です。大吾さんとは、いつから知り合いなんですか?」

「えっと…子供の頃からかな。」

「具体化な年数はわかりますか?」

「いや…でも、昔から何回も会っているような気がする。」

「そうですか…。」


俺の回答に何故かレーナさんは、暗い表情をした。

俺は、その表情がとても複雑そうな感じがした。


その後、店員から抹茶アイスを受け取った俺は、それを食べ。

また、レーナに顔を向けた。


抹茶アイスは、少し甘かった。

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