第15話 出会い

「…眠い。」


目覚まし時計の電子音で目を覚ました。

何というか、めんどくさいことになりそうだなっと、思った。

結局のところ、昨晩の少女が誰なのかはわからなかった。

よくよく考えたらだいたい、ドイツからの転校生が金髪って言うのが固定観念的なものだったかもしれない。

だが、もし…昨晩の暴力女?が…いや…もう諦めた方がいいのかもしれない。

…冷静になれ、清水しみず雅刀まさと

まだ、そうと決まった訳じゃないけど…ああ、もう!


俺は、重い体を引きずって洗面所へと向かった。


「おはよう~。」

っと、茉莉まつりが声を掛けてきたので、おはようと返した。

そのまま、台所に向かい朝ごはん(…っと、言ってもトースターに食パンを突っ込み卵とベーコンを焼くだけだが)を、作った。


「お兄ちゃん、今日は転校生が来るの?」

「来るんじゃないのか?さすがに、荷物を置きっぱなしってわけにもいかないだろうし。」

「そうかな?土日に纏めてやっちゃうのかもしれないよ?」

「…それまで、段ボールを置いとくのか。」

「そうかもね、でも、今日から学校に来るんでしょう?」

「ああ、たぶん来るよ。」

「それじゃあ、お兄ちゃん学校が終わったら家に来るように言っといてね。」

「わかったよ。」


いつも通り、特に変わりのないような朝だった。

俺は、テレビでニュース番組でこれまでに起きた出来事を確認した。

また、シルバーバレットが事件を起こしたそうだった。

それは、もはや常態化しつつあるのでもう表立って取り上げられることは少なくなった。

今日は、それとは別に事件が起きていた。


「「ええ、今朝日本の大型タンカーが太平洋上で突如行方不明となりました。GPSの故障かと思われ付近には現在捜索中とのことです。消失地点付近には、アメリカ、中国の艦船が航海をしていたとベトナムのメディアにより報道されています。また、民間航空機も付近で行方わからなくなり付近では両件ともに捜索中とのことです。」」


さて、そろそろ果歩かほが来るのではと考えていた通りに果歩がやって来た。

俺は、戸締りをして学校へと向かった。


教室に入ると昨日に引き続き騒がしかった。


「おはよう、正幸まさゆき大吾だいご。」

「ああ、おはよう雅刀。」

「いよいよ今日だな…楽しみだ。」


二人とも留学生の姿が気になるようだった。

俺は、とりあえず席に座りHR《ホームルーム》が始まるのを待った。

そして、担任の福山ふくやま先生がやって来た。


「おはようございます、皆さん着席してください。」

「せんせー!転校生はー!」

「今日は、会えるんですよねー?」

「まあ、落ち着いてください。誰かいない人は居ませんか?」

「はい、全員います。けれど、大吾君がまた、遅刻ギリギリに登校してきました!」

一条いちじょう君、また、ですか?」

「はい、けれど遅刻はしていません。」

「そうですね、けれど、前園まえぞのさんの事も考えてくださいね。」

「はい。」

「う~ん、前園さんが言うんだから全員居るのか…。よっし、それじゃあ来てもらいましょうか。」

「はやく、はやく~!」

「はい、それじゃあ、入って来てください!」


教室の扉が横にスライドした。

クラス全員の視線が外の廊下の方へと固定される。

ほのやかに揺れる金色の髪が見えた。

そして、そこには金髪きんぱつ碧眼へきがんの美少女が立っていた。


教室は女子の嬌声と、男子の声に満たされていた。

その中に、雅刀はただ一人佇んでいた。


そして、彼女は教室へと入った。


「それじゃあ、名前を黒板に書いてもらえるかしら?」

「はい、先生。」


黒板に白いチョークで文字が描かれる。

筆記体で書かれているため、よくわからない。


「Leena・Neithardtさんか。」っと、大吾が呟いた。


「初めまして、レーナ・ナイトハルトと申します。」


それが、彼女の名前だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る