一章 三部 彼女との出会い

第13話 邂逅

雅刀まさとは、一人コンビニに向かい歩いていた。

別に、自転車で行けば良かったのだが…あいにくタイヤの空気が抜けていた。

今思えば、自転車のタイヤに空気入れで空気を入れてそのままコンビニに向かえば良かったなと思った。

ほどなくして、コンビニに着いた。

俺は、中に入りシャーペンの芯を見つけ、ついでにスナック菓子を手に取りレジの前に並ぼうとちらりとレジの方を見たのだが…。


「だからな…兄ちゃん?俺が頼んだのはマルボロなんだよ!これじゃねえの!」

「はい、すいません…えっと、どのようなパッケージで?」

「だから、マルボロだよ!マルボロ!なんだ、煙草たばこのパッケージすら満足にわからないでレジに立ってんのか?やる気あんの?」

「すいません…普段、吸わないもので。」

「ああ、うるせえな、ほんとによおお!どこもかしこも禁煙、禁煙うるせえの!」


視線の先では、レジの店員とガラの悪いおっさんが揉めていた。

店員は、平静を保とうと努めているのに対して、その客はいかにも横暴な態度をとっていた。

おそらくというか…完全に酒に酔っていた。

普段は、ただの会社員なのだろう。

ネチネチネチネチしつこくレジの店員に絡むその様は、ただ愚痴のはけ口に店員を利用しているように見える。


「ああ、まったく…さっさと出せよ!」

「ええっと…何番で?」

「だから、マルボロだっつてんだろうが!さっさと出せよ!」

「ええっと、これですか?」

「ああ、それだよ、それ!」


どうやら店員は、パッケージの文字からマルボロを見つけ出したらしい。


「よっし、じゃあ…お前のおごりな?」

「えっ!」

「遅刻だよ、遅刻ぅぅ…社会人としては当然だよねぇー、詫びろよ、詫び!」

「いや…それは…。」

「なんだよ、客に迷惑かけてその態度かよ?」

「申し訳ございませんが…。」

「いいから出せよ!」


よほど酒が回っているのか、ストレスが溜まっているのか男は、強気に出ていた。

俺は、彼が買った物を見た。

焼酎と週刊誌とビール…そして、タバコだった。


「早くしろよ…いつまで待たせんの?」

「すいません…。」


すっかり、店員は弱気になっていた。

すると、男は俺のいる方に目を向けてきたのでとっさに背を向けた。


「…まったく。」

「すいません、これください!」

「ん?なんだ、お前?抜かしてんじゃねえぞ!」

「いつまで私を待たせるつもり?何、それともお詫びでもしてくれるの?」

(なっ…。)


この状況で、空気を読まずにレジで支払いを済ませるのかっと、思った。

振り向いて、空気を読めていないのか、あるいはただの馬鹿なのか…それとも、ただうんざりしてこの場から逃げ出したいだけの奴なのか確認すると…。


「はぁ?詫びぃ?」

「そうよ、さっさと出しなさいよ?日本では待たせることがダメなんじゃないの?」

「いや…それは、俺がこの店員に…。」

「だから、なに?番号で頼めないあんたが悪いんじゃないのかしら?」

「なっ!だから…な!」

「いいから、どうせ私はもう行くし…。」

「てめえ、調子乗ってんじゃねえよ!」


さっきの男が腕を振りかぶるのが見えた。

すると、どうしたのだろうか?

彼が、背をのけ反らせ、そのまま、床に落ちていった。


「はあ…いくら?」

「165円です。」

「はい。」

「…お買い上げありがとうございました。」


そして、彼女は出ていった。

声からして、多分女性だと思う。

金色の髪で、青い瞳を持っていた。

五月だと言うのに赤い長いコートを羽織っていた。


俺は、彼女を追うようにレジで会計を済ませて、逃げるようにコンビニを後にした。









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