第12話 第二世界

テレビはなおもセカンドワールドでの軍事行動の話題だった。

そろそろ変えたい…とは思うのだが、肝心のテレビのリモコンが果歩かほの近くにあるため、取るに取りづらい…。

かくいう、果歩は真剣しんけんそうにテレビをのぞき込んでいた。


雅刀まさとも、いつか行くことになるかもね。」っと、果歩は言った。


正直言って、そんな所には行きたくないかな。

何故なら、ずっと前から戦争が起きているからだ。

セカンドワールドは、この世界の軍隊が向こうで戦争を開始する前から荒廃していたそうだ。

彼等が言うにはアメリカの加速実験施設で粒子が発生しそれにより人々が魔法を使えるようになったという。

けれど、そんな魔法は人々に害をもたらした。

その結果、彼等の地球は荒れたのだという。

魔法がなくなったのはヨーロッパの研究施設でその粒子のみを破壊(厳密にいうと破壊ではないならしい)する粒子を空気中に散布したためらしい。

どちらせによ、そんな話誰が信じるのだろうか…。

結局、研究資料と人員を失ってしまい魔法はもう無いとされている。

メディアが言うには、これは侵略を正当化するために作られたデマだとか、政府の隠蔽だとか言われている。

専門家の話では、科学技術的に後進的な世界ではそんな物が作れないと言っていた。

詳細を知っているのはセカンドワールドの人達だけだ。


「…セカンドワールドねえ。」

「どう思う?」

「どう思うって…あんまり行きたくないかな?」

「そうね…でも、気にならない?」

「えっ…まあ、それは…そうだけど。」

「いずれにしてもあなたが行くことになる可能性は高いものね♪」

「そうだな。」

(…行くことになるか。)


雅刀まさとがテレビに目を向けると陸軍の兵士が戦車で攻撃をしている映像が流された。

よほど物資が足りないのだろうか…所々につぎはぎがあり、弾丸が通り抜けた後のような物も見えた。

何故か戦車の外から弾を入れていた。

重くはないのだろうか?


「変わった形ね。」

「そうだね。」

「新型かしら?」

「さあ?あまり詳しくないからわからない。」


「雅刀も…行っちゃうのか…。」っと、果歩は小声で言ったが雅刀はそれを聞いていなかった。


そして、またテレビの画面が変わった。

アナウンサーが映し出され、今日の放送内容をまとめるとその番組は終わった。


「さて、それじゃあお休み。」

「ああ、お休み…ところで、さあ?」

「何?」


果歩が玄関に向けて歩きだすのをさえぎって話しかけた。


「いや…その…転校生についてなんだけど。」

「ああ…それね。うん…何か気になるの?」

「そのさあ…ちょっと、変わった子なのかなとか思っているんだけど。」

「う~ん、それもそうね。確かに今日、荷物が届いたのなら挨拶あいさつくらいしに来るよね?それとも違うのかな?」


果歩の言う通り、荷物が届いているのなら少なくとも家に挨拶しに来るんじゃないかとは思った。

けれど、妹の茉莉まつりが言うには部屋の簡易的な間取図が引っ越し業者に渡されていたようでそれに、準ずるように荷物を置いていったという。

それでも、本人が不在のままというのも釈然しゃくぜんとしない。


「ねえ、雅刀!やっぱり、おかしいよね?そうだよね?」

「そうだな。」

「明日…会えるかな?」

「会えると思うよ…多分。」

「そうだね、それじゃあ、また明日!」


俺は、果歩を見送るとコップを洗い、歯を磨いて部屋に戻った。

茉莉は部屋で課題に取り組んでいるようだった。

部屋の外にまで、彼女の聞いている曲が流れていた。

そして、俺は特にそれを気にすることなく廊下を歩き部屋に着く。

明日の荷物を確認した。


「あっ…そういえばシャーペンの芯無かったけ?」


そういえば、買いに行くの忘れてたなと思い出し、茉莉から借りようとしたが茉莉も残り少なく買ってきて欲しいと言われ、俺は結局、コンビニエンスストアに買いに行くことにした。


これが、彼女との出会いになるとは知らずに…。











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