第11話 テレビ

「ただいま…。」

「おかえりー、晩御飯できてるよ。」

「あっ、うん…ところでこの段ボールの山は?」


雅刀《まさと》が家に帰ると、玄関に段ボールが無造作に置かれていた。

中身を取り出したのは明らかで梱包材が少し散らばっていた。


「あれ、聞いてないの?」

「…いや…何も?」


慌てて茉莉まつりに話しかけたが、茉莉は特に慌てた様子もなく平然としていた。


「お兄ちゃん、お母さんから連絡あったよね?」

「…いつだっけ?」

「うーん、2週間前くらいかな?ほら、留学生を受け入れるとかなんとか?」


そんなことあったのかと思ったら、ふいに思い出した。

そういえば確かにそんな感じの話があったと思う。

確かホストファミリーとかなんとか…でも、結局その後は学校のことで忙しかったし、両親もブラジルにいかなければならなかったのでうやむやにされていた。

しかし、なぜこの家なのだろうか?

母が連絡しなかったのか疑問には思った。


「…なんか思い出したような思い出せてないような…。」

「もう、しっかりしてよ!」


そうは言われても、思い出せるはずもなかった。

そんな感じでとりあえず靴を脱いで上がろうとしたところ…。


「雅刀!」


玄関のドアを打ち破るかのごとく果歩かほがやって来た。


「…いらっしゃい。」

「いらっしゃいじゃなくて、転校生は?」

「あっ、お姉ちゃんいらっしゃい!」

「ええ、お邪魔します。ところで、茉莉ちゃん転校生のこと何かわかる?」

「うん、今日は引越しの人が荷物を置いていったよ。」

「そう…それで実際にあった?」

「ううん、会ってないよお姉ちゃん。」

「そう…。」

「お姉ちゃんもご飯食べてく?」

「えっ…あっ…うん…それじゃあ、上がらせてもらうわね。」


その後、夜ご飯を食べた俺達は昨日と同じように食後の時間をくつろいだ。

茉莉は、いつものように二階に上がり俺と果歩はテレビを見ていた。


「「シルバーバレットによる事件が増発しているようです。昨日に引き続き犠牲者が後を絶えません。」」

「「番組では独自の視点でシルバーバレットに迫っていきました。」」


そうして、テロップが流れ、専門家が何か語ったあと、コマーシャルが流れ、その番組は終わった。

果歩は、チャンネルを変えてニュース番組を選んだ。


「「メキシコとアメリカの軍事境界線で、またもや、緊張が高まる事態となりました。現地時間の午前2時頃大規模な亡命が実行されメキシコ軍、国連軍により一部が射殺されました。メキシコ、アメリカ両国による移民抑制政策の見直しを迫るデモは勢いを増すばかりです。この事件に対しメキシコ政府は、麻薬を持って亡命することで、マフィアやバイヤーとの取引をしている自国民が多いことを発表し、また、亡命したメキシコ人の中には再びメキシコに戻り麻薬を得て入国していると発表、そして、その実行犯のほとんどが少年や少女であることも発表されました。アメリカ南部では、移民規制のさらなる強化を求め、北部では規制に対してのデモが横行しており、銃撃事件も後を絶えません。アメリカを二分する問題に直面する中、政府は極東、セカンドワールドでの軍事行動を進める方針です。」」


「セカンドワールドか…。」っと、果歩は呟いた。


今から、20年前の話だこの世界は、他の世界と融合した。

最初に発見したのは、人工衛星だった。

初めは、人工衛星の誤作動だったと思われたが違った。

そして、それ以降セカンドワールドと呼ばれるようになった。

大規模戦争後、各国の軍隊はこの世界からセカンドワールドへと戦場を変えていった。



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