一章 二部 世界との距離感

第8話 事件発生

幼い頃から、母が嫌いだった。

当時から母は、既に壊れていたようだ。

何もかも変わってしまったのか、それとも最初からそうだったのかは俺にはわからなかった。

ただ、やはり、こうなってしまったのだろうか…いや、もしかしたら違ったのかもしれない。

どちらにせよ…俺は、彼女の収入源としてしか使われなかったのだろうか…。


父と別れた時、母は泣いていた。

父は、怒り狂っていた。

父の手には、紙が二枚握られていた。

ひとつは、両親二人の名前が書かれていた。

もう一枚の紙には自分の名前が書かれていた。


あの時は、わからなかったが…あれはおそらく、DNA判定の結果が記載されたものだろう。


そして、俺は母親に連れ去られた…。

ある男の家に向かい、そして、しばらくしてまた、別の家に向かった。

それからは痛かった。

部屋からは、酒とたばこのにおいがした。

俺は、吸い殻や酒瓶を片付けいた。

学校では、長い服を着た。

家にそれしか無かったからだ…。

家には、訪問者が多かった…その度に母は追い返していた。

母の顔は醜くく歪んでいた。

もっとも最初から、歪んでいたかもしれない…。

手に持っていても匂ってくるほど不快なにおいだった。

部屋には、そう言った不快な匂いが充満していた。

そして、母の香水の匂いがさらにそれを不快な物に変えていった。

その度に、お前は臭いと言われ、水をかけられた。

母の体はいつも芳香剤のような匂いが漂っていた。

ただただ、気持ちが悪いものだった。


そして、僕の前にはある人が現れた。

それがシルバーバレットだった。

彼は、悪い奴らを殺す正義のヒーローだった。

だから、僕の母も殺してくれると思った。

けれども、一向に僕の所へは来なかった…。

きっと…いつかは…っと、思った。


最近になって、母からの暴力は増していった。

母は、時間がないと言った。

足りない、足りなくなる…っと、言っていた。


最近は、家を出ている時間の方が多かった。

どこかに行っているのだろうか?

母のリップクリームは剥げていた…。


母は、次第に酒を飲む時間が長くなっていた。

そして、寝ていた。

最近は、夜にだけ活動をしていた。

部屋は以前よりも汚くなっていった。

俺は、それをきれいにした。


そして、俺は、母を殺した。

これで、良かった。

邪魔だった。

救いの手を全て母によってはじき返されたのだから当たり前だと思った。

シルバーバレットは、俺を受け入れてくれるのだろうか?

俺のような子供を増やさないように協力してくれるのだろうか?


臭いのする袋を持って、交番に運んだ。

すぐに、俺を見て何かに気付いた。

助かったと思った。


「それで、君が殺したのかい?」

「はい…。」


取り調べが始まった。

母の身体はちゃんと見つかったのだろうか?

浴槽に置いてある。


結局…シルバーバレットは来なかった。

警察署の前には、たくさんの記者がいた。

ライトが痛い…。


その時、急に痛くなった。

何か当たったようだ…。


「…。」


彼は、来てくれたようだった。


身体に痛みを感じる前に、次の痛みが来る…。

でもそれ程、悪くはなかった…かな?


「…なっ!」


容疑者の少年が倒れ込んだ…。

確認すると、身体に穴が開いていた。


「おい!」


まさかっ!っと、男は驚いた。

しかし、そんなに珍しくはないことだと思っていた。

どうやらシルバーバレットが現れたようだとわかったが…そうも行かなかった。


「…早く!」


彼は、血の海に沈んでいった。


そして、この日…彼と同じように何人も死んだ。




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