第7話 桃華

いつも通り制服に着替えて家を出た。

結局、昨日はよる遅くまで起きていた。

いくら高校生だからといって若さがありふれているわけではない…。

高校生だって、疲れるのだから早めに寝るべきだと思う。

…実践できてはいないが。


「…眠い。」


高校までの道のりはもう慣れているようなものだった。

最も小学校、中学校も徒歩圏内だったため何も問題はなかった。

別段、この時間に開いている店も少なく、誘惑と言ってもコンビニくらいだった。

ただの住宅地を雅刀まさとはだらだら歩いていると同じクラスの杉澤すぎさわ正幸まさゆきを見つけた。


「おはよう。」っと、声をかけてみた。


「おはよう…今日は早いな?」

「そうか?」


正幸まさゆきは、だいたい遅刻しない時間に登校するのでどうやらまだ、余裕がありそうだ。


「ところで、雅刀まさと?」

「なんだ?」

「ああ、昨日、クラスの方で騒いでいたんだけどどうやら俺らのクラスに転校生が来るっぽいな!」

「ああ、それ…果歩かほから聞いたわ。」

「おう、どうやら彼女超美人で!金髪碧眼らしいわ!」

「…あ、うん。」


正幸は朝から元気だった…やっぱり金髪の女性とはテンションが上がるものかもしれない…。

しかし、残念ながら眠い俺は、そのテンションに乗れなかった。

というか、喜んでいる正幸に対して少し引いてしまっている。


「どうした、興味ねえの?」

「いや、少し眠いだけだ…。」

「そっか…どんな子だろうな…金髪で眼鏡で巨乳…いや、金髪で貧乳でツンデレかも…。」


なぜ、そんな女性像しか思い浮かばないのかと疑問に思ったが、止めた。

俺も正幸と同じくそういった女性像を思い浮かべていたからだ。

そして、しばらくその話をしていたところ…。


「おはよう!」っと、後ろから声をかけられた。

「ん…ああ、おはよう委員長。」っと、正幸が声をかけた。

俺も彼女におはようと返した。


彼女は、クラス委員長の前園まえぞの桃華とうかだった。

彼女も正幸や、果歩のように昔から付き合いのある幼馴染のような存在だった。

幼いころは、内気だったが今となっては、しっかりしていて凛とした雰囲気ふいんきを漂わせていた。


「はあ…何やら真剣に話しているかと思えば…朝から女の子の話をしているとわね。」

「なっ…別にいいだろ!」

「そうね…ところで雅刀まさとは大丈夫?」

「ああ…ちょっと眠いだけ…。」

「そう、体には気を付けなさいよ。」

「わかってるって…。」

「さあ、どうかしら?それより、転校生について何か知ってる?」

「いや、昨日、クラスの奴らと話したくらいだぞ…委員長は?」

「私もそれくらいね…というか、私も昨日、初めて聞いたわ。」

「そっか…。」

「それよりも少し不思議だと思ったわ…。」

「何でだ、別に転校生くらい珍しくもないんじゃないのか?」

「それは、日本人のことでしょ、正幸。帰国してきているし…。」

「それじゃあ、何か疑問でもあるのか桃華?」

「ええ、この時期に転校するのは珍しいことかなあ…って、そもそも日本と海外じゃ色々と違うしね。」

「そうだな…。」

「さて、そろそろ行きましょうか!…ところで、和人あいつは?」

「さあ…。」

「今日も見てないか…あとで、京香きょうかちゃんと、柚香ゆずかちゃんに聞いておかないと…。」

「委員長も大変だな…。」

「まあね、特に和人は妹さんから頼まれているからね。」

「まあ、でも…居場所くらいすぐにわかるだろ?」

「そうもいかないのよ…はあ、仕方ないか…。」

「まじめだな、桃華は…。」

「あんた達も手伝いなさいよ…兄妹きょうだい仲が良くないから何とかして欲しいんだけどね…。」

「わかったよ…まあ、あいつ自体そんなに悪くはないんだけどな。」

「それはわかっているけど…なんか、可哀そうじゃない?兄妹なんだからとは、言いたくないけどね。」

「まあ、言いたいことはわかるよ。」

「うん…ありがとう。」

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