第5話 茉莉

「転校生に会った?」

「ああ、多分そうかもしれない…。」

「どういうことなの、それ?」

「それは…。」


俺は、簡単にこれまでのいきさつを果歩かほに話した。


「…なるほどね、確かにそれは気になるわねえ…。」

「ああ、まあ、もしかしたら違うかもしれないが…。」

「そうね、あんたは頼りないし!」

「おっ、お前よりは頼りがいがあるわ!」

「また、またー…。」

「はあ…。」


でも、よくよく考えると俺が考えている西洋人のイメージ像がだいたい、金髪で、青い瞳で、色白の肌だから…この条件に合っていただけでもしかしたら違う人だったのかもしれない。


俺が、先程の白人女性の姿を思い返していると果歩が俺に声をかけてきた。


「ところで、雅刀まさと!」

「なんだよ…。」

「叔母さんたちもう居ないんだっけ?」

「うん、ああ…。」


俺の両親は、仕事でブラジルに向かった。

そこまで、長くはかからないはずなので8月辺りには帰ってくると言っていた。

母さんは、別に日本に残っていても良かったのだが、高校生なのだから家事くらいできるっと俺が見栄を張ったのもあって、親父と共にブラジルに行ってしまった。

まあ、なんやかんやで果歩の両親もブラジルに行ってしまった為、夕食を共にするようにした。


「晩御飯の用意はしたの?」

「今日は、茉莉まつりがやるって…。」

「また?あんまり、妹をこき使うのはどうかと思うんだけど?」

「…そうだな。」


妹の茉莉まつりは、両親がブラジルに行くことになってから急に家事を手伝うようになった。

そして、そのまま家の家事を一人でもこなせるようになってしまった為、正直なところ、家の中での俺の居場所はないに等しい。

言うまでもなく、俺は妹に甘えてしまっているようだった。


「そうだな…じゃなくて!あんたも何かしなさい!」

「…はい。」


俺と果歩は、家に向かって歩いた。

ところで、なぜ果歩が着替えたのにもかかわらず家に戻ってしまうのか、この時の俺は何も考えていなかった。


「それじゃあ、私は一回家に戻るわね。」

「ああ、また後で。」

「うん…。」

「…どうした?」

「…別に。」


家に着いた俺は、ポストの中を確認したポストの中には何やら手紙が入っていた。

俺は、それを持って家の扉を開けた。


「ただいまー。」

「おかえりー。」


中には、茉莉まつりが居た。

髪が濡れているからお風呂に入ったのだろう…果歩が家に持ち込んで置きっぱなしのコンディショナーの香りがした。


「果歩は、後から来るって。」

「本当?」

「ああ、本当だ。」

「やったー!お姉ちゃんが来る!」


…別に、毎日のように会っているからそんなに喜ばなければならないのだが…。


「そういえば、茉莉まつり、今日の晩御飯は?」

「うん、今日は、肉じゃがだよ。」

「わかった。」

「…皿洗いよろしく。」

「はいよっ!」


俺は、そのまま二階の自分の部屋にあがり、着替えてリビングルームに降りた。

ちょうど、ニュース番組がやっていた。


「「今日は、午前零時頃…連続殺人集団シルバーバレッツによる殺人事件が発生しました。殺害されたのは川崎市在住の46歳会社員の男性で、アパートの階段で死亡している所が発見されました。死因は、体内に大量に撃ち込まれた弾丸のせいで、発見された弾丸が全て純銀でできていたため警察はシルバーバレットによる殺人事件と断定しました。また、被害者の部屋を調査したところ荒らされた形跡がないことから家を出た後に殺されたと警察関係者の話からお話を聞くことができました。」」


…あいかわらず物騒な事件だと思った。

噂によると、連続殺人集団シルバーバレッツによる死体は凄惨な姿だそうだ。

一説によるとショットガンの弾を近距離で何度も撃たれたらしく穴が開いているようだとか…。


「…チャンネル変えるね。」

「ああ…。」

「何なんだろうね、シルバーバレットって?」

「さあ…正義の味方とか言われたりしているけど。」

「私は、信じられないかな…。」

「まあな…。」


連続殺人集団シルバーバレッツ、または、シルバーバレットは三年前に現れた殺人鬼または、殺人集団のことだ。

以前は、シルバーバレッツをメディアがもてはやしていたが、シルバーバレッツによる犯行により義賊ねずみ小僧のように祭り上げようとした記者、ディレクターがあいつで死亡したことによって、その後、沈静化した。


「…怖いね。」

「そうだな…。」


シルバーバレットが注目を集めたのは三年前、世界規模での大量殺人から始まった。

その時、犯行に使用された弾が純銀制の弾だったことだったため。

「「白銀シルバーバレット」」と名付けられた。





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