第4話 行き帰り
(…はあ、なりゆきでああなったけど…まあ、いいか。)
こうなると、どこかに行きたくなるものだ。
どうせ家に帰ってもゲームしかしないだろうし…。
それに、口うるさい妹が居るからだ。
「ん?あれ、雅刀じゃん?」
「…なんだよ。」
道を歩いていると、幼なじみで同じクラスの
彼女は、既に帰宅してようで私服姿だった。
まあ、それは当然かもしれないが…ただ、単に俺が遅かっただけだ。
「別に?何、呼出し喰らったとか?」
「違うわ…ちょっと、道案内を頼まれただけだ!」
「本当に?」
「本当だって!」
「う~ん、信用できませんねえ、どうせ道草してから帰るつもりだったんでしょ?」
「そんなことはないって!」
「そう?
「…あいつは、たいてい駅前にいるだろ?」
「そうだけど…はあ、それよりも…。」
「なんだよ…。」
正直言って、もう家に帰りたいのだが、それを直接言うと機嫌をそこねて、その結果、妹の
昔から、茉莉は果歩の味方なので絶対に果歩に従うのだ…。
とはいえ、そんなことよりもこの話を無事に終えて早く帰りたい…。
「知ってる?明日、欧州連合(E.U)からお偉いさんが来るみたいなんだって!」
「ふーん…。」
「興味ないの?」
「別に…。」
「そう、まあ、私たちには直接関係ないけどね…。あっ、でも、こっちの話は関係がありそうよ。」
「…興味ない。」
「辛辣!」
正直言って、どうでもいい…というか、興味がない。
基本、果歩の話は情報の出元があいまいな物が多く、うわさや虚偽などが多い。
学校の情報は逐一メモをしているようなので頼りにはなるのだが、それ以外の情報は信頼性が低い。
前の時は、ネットの掲示板に書かれた物がリソースだったりした。
そして、中でも恋愛関係の話はまったくあてにならなかった。
小学校三年生の時は、2人でうわさのお相手をうまく引き合わせようとセッティングしたこともあった。
だが、当時の俺と件の彼は色恋沙汰になんか興味もなく、ましてや、男女の関係すらもわかったので…あえなく失敗した。
その後も、幾度かそんなことがあったが、少しませていた女子の情報だったことがわかり、後は全部断った。
その度に、果歩は茉莉と共に俺に愚痴をぶつけるのだった。
「…仕方ないだろう。」
興味がない物に、興味を持つにはそれ相応の何かがなければっと、思った。
「はあ、それじゃ、もう教えたあげる!」
内心もうどうでもいい…っと、思っていたが形式的に返事をする。
「…なんだよ。」
「ふふっ…なんと、うちのクラスに転校生が来ます!しかも、ドイツから来た白人女性で髪は金髪、日本語もできるそうです!」
キラーんっと、得意げな顔で果歩はこちらを見ていた。
「…転校生か。」
「そうなのよ!転校生で、ドイツ人!」
「…ドイツ人か。」
俺が、そうつぶやくと果歩は何かを思い出したように口を開いた。
「…なるほど…雅刀はそっちの方が大事か。」
「いや…大事じゃなくてさ…その…覚えていないか、あの子のこと?」
「あの子?」
「ああ、金髪で目が青くて可愛かった女の子…ほら、ずっと前に遊んだことがある…。」
「ええ、覚えているわ…その子がどうしたの?」
「いや…もしかしたらとか思って…。」
「そんなことあるわけないでしょ!だいたい、名前もわからないんだから!」
「それもそうだな…。」
「ええ、そうよ…。」
昔、俺と果歩はいつものように遊んでいた。
すると、金色の髪で、目が青くて、人形のように可愛くて、白い肌の女の子がこちらにやって来た。
恥ずかしがっているのか、無言だった。
俺は、彼女を誘うと一緒に鬼ごっこやかくれんぼをした。
果歩よりも足が遅くて、彼女は連続して鬼をやっていた。
それから、何度か一緒に遊んだがその後、会うことはなかった。
今となっては、どこで彼女と出会い、遊んだのかもわからなかった。
「…そういえばさ。」
「何?」
雅刀は、ここに来る途中に出会った女性のことを思い出した。
彼女は、金髪で蒼い瞳を持ち、どこか人形のような可愛さがあった。
そして、彼女は基地を探していると行った。
この近くの基地は、旧立川飛行場跡地統合陸空合同軍基地だった。
東京攻撃後の復興計画、新規住宅地計画に基づき整備された基地で雅刀の学校もこの基地の一部である。
そのため、彼女はもしかしたら基地ではなく学校に向かっていたのかもしれないっと、考えることができる。
とすれば、彼女は…。
「転校生に会ったかも。」
「え?」
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