第3話 道

何となく今日も終わった。

そんな気がしてきた…結局、試験自体は何とかやれたがそこまでは良くないような気がする。

やっぱり、練習が必要なのだろうか?

そもそも、身体を鍛えていないからなのだろうか?

銃が重かった、あるいはあまり状態が良くなかったのだろうか?

そんなマイナス、ネガティブなイメージが頭に浮かんでいる。

この後も、やる事あるけど…やる気が起きない。

特に何も考えずに、清水しみず雅刀まさとは帰り道を歩いていた。


「ん?」


目の前に、金髪の少女が居た。

何やら道に迷ってしまったようだ。

戦争以後、海外からの観光客もようやく日本にやってこれるようになった。

戦争前の姿を覚えていて、その記憶を頼りに街を散策したりする人もいる。

しかし、大規模な区画整備によりそのほとんどが失われた。

彼女もその一人だろうか?

この辺りも、だいぶ変わってしまったが店のほとんどは昔の場所に戻ってきていたはずだ。

整備計画として、土地にとどまってくれる人が一人でもいれば他の人も帰ってきてくれる…帰ってきて欲しいという願いからだ。


「あの、どうしましたか?」


とりあえず日本語で話しかけてみた。

英語はイマイチだが、道案内くらいはできるかと思ったからだ。


「すいません、この辺りに基地があるはず何ですが…。」


彼女は、流暢な日本語で答えた。

俺は、驚いたのと同時に安堵した。


「あっ、はい。ありますよ。」

「どこですか?」

「はい、この先の通りをまっすぐ進んで右に行き、踏切を越えて、少し進んで右に行けばあります。」

「…案内してもらえる?」

「…はい。」


…そんなに、わかりづらい説明だったのかなと思いながら、彼女を案内することになった。

ようするに、学校にまた、行くのだ。

俺は、多分、言葉がわからなかったのではないかと思った。

彼女は、ラフな格好で、ダッフルバッグを一つ持っていた。

寒くはないのに、長そでを羽織っていたが特に気にしなかった。

よく考えると、彼女は何故、基地に向かうのだろうか?

そんなことを考えているうちに、着いてしまった。


「ここが入り口です。それでは…。」

「はい、ありがとうございました。」


俺は、彼女を見送ると帰路についた。

彼女は、門の警備員に何かを話、基地の中に入っていった。


「…留学生かな?」


そんなことを思いながら、雅刀は学校を後にした。


「やあ、ようこそわが基地へ。」

「はい、ありがとうございます。」

「…そうだな…ヨーロッパからの統合戦技生として来たからにはそれなりの理由でもあるんじゃないのかな?」

「はい、希望してきましたので…理由をお聞きになりますか?」

「いや…そこまでは重要な事柄ではないのでね。私が気にしているのはこの学校になじめるか否かだ。」

「…学生としての本文ですか?」

「ああ、どうも戦争後はなかなか教育の方に意識を向けて貰えないからね。…それに、帰国するのは難しくなっているのも一因かな…結局、その国の教育機関に行く人も多いからね…少子化は持ち直しつつあるんだ。」

「私の国でもそうですよ、ベビーブームとか言われていますが、保育所の確保が大変とのことです。急激なニーズに即急に答えるのは難しいですからね。枠が決まっている以上そういった漏れがあるとその後の人生にも影響がありますものね。」

「その通りだ、あるのは創造的な仕事と戦争関係のものしかないからね、ほとんどの作業は機械が導入されている以上、仕事はないだろう。私大学生を卒業した頃は、皆、口を揃えて失業者が増えると言っていたよ。…残念ながらその通りではなかったかな…。」

「…海外に行かされたんですか?」

「いや…正確には自主的に向かったんだ。終わりゆく日本で死ぬよりも、日本を捨ててでも日本人として生きられる場所で家族と生きていく為にね。」

「…でも、結果としては…どうだったんでしょう。」

「国としては疎開先としては有用だったんだろうね。先に住んでいてなおかつ日本語で話せるのだから心強かったのかもしれない。けれど、今も帰りたい人は居るって聞いているよ。」

「…この国にですか?」

「ああ、そうだ…もう既に無くなっていてもその近くに住みたいということだな。」

「…私にも、わかります。」



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