影人

葵流星

影人

「影人」、それが見えたらその人は死ぬ。

彼または彼女が何者なのかはわからない。

ただ、死神というにはいささか恐怖が足りないのだ。

彼に出会った人は、幾人も居た。

そして、残念なことに私の友達もそれに出会ってしまったのだ。


これは、私の祖父が体験した話である。


ある夏の暑い日、祖父は仕事場で仕事をしていた。

書類をひと通り片付け私の祖父は机を後にして、飲み物を取りに行った。

そんな時に、祖父はこの体験をしたそうだ…。


私は、通路を歩いていた部下を発見した。

しかし、彼はどこか理性を逸脱している…正気では無いような気がした。

私は、どうしたのか?っと、彼に聞いた。

当時はまだ、熱中症とは使われておらず確か、日射病だったはずだ。

私は、医務室へ行くように注意を促した。

だが、彼は大丈夫、少し疲れただけだと言い、そして、幻覚が見えたのだという。

私は、もう一度注意をして、ともに飲み物を取りに行った。

結局、この後、彼は帰宅した。


次の日、彼にあったが悪い意味で変わりがなかった。

元気はあったのだが、何かに追われているようなそういった切迫した表情をしていた。

彼は所帯を持っていたので、子供の具合が悪いのかを聞くと、そうではないと答えた。

同様に彼の妻や両親の事かと聞いたがそうではないかと彼は答えた。

私は、彼を問い詰めた。

そして、彼から出された答えはそれだった。

彼は「黒っぽい人」にいつも見られていると言った。

「影のような透けた感じの黒い人」が、見える。

いつも私が視線を感じる方向に目を向けるとそこに居るのだ。

初めは、ただの幻覚だと思ったがこう何度も遭遇するとおかしく感じたそうだ。

どこに行っても付いてくる。

逆に、追いかけてもどこにも居ない。

そう、彼は言ったのだった。

彼は、誠実な性格だったので私は、どこか心を病んでしまったのだと思った。

私は、休暇を取ることを勧めた。

そして、家族と共に彼は旅行に出かけた。

彼が、出かけていた間、事故が起き死亡者が出た。

事故の原因は、階段からの転落だった。

事件性は無いとされ、改善するように言われた。

死亡者について、調べていたところ部下と同じ様に何かに追われていたそうだ。

彼は、死ぬ前に「黒っぽい人」に追われているっと、同僚に話していたそうだ。

結局、この話は無いものとして扱われた。

死亡者の名誉の為にという理由だった。

精神に異常をきたしたということは、不本意だったからだ。

そして、私はこの事が他の場所でも起きていたことを偶然にも聞いてしまった。

どうやら、官民両方のしかも複数の場所で起きていた。

工場であったり、事務所だったり、街中であったりした。

言い方は悪いが、発症した人の年齢、性別、場所は全てバラバラだった。

一番若い人は、4歳の男の子と、同じく4歳の女の子だった。

2件は、距離が離れている為、無関係だとされた。

これら全員の共通点は事故死ということだけだった。

ただ、これらの事は新聞紙の小さな記事にしか記されていないことだった。


そして、彼は、帰ってきた。

少しは明るくなっていたが、旅行中も見えていたようだった。

結局、彼は気にしないということを選んだ。

二週間、彼は、交通事故に遭い、死亡した。

私は、彼が何かに追われていたということを彼の家族に伝えなかった。

その後も、この現象にあった人は事故で死んでいった。

職場を離れた後も同様だった。


私は、祖父からこの話を幼い頃に聞いた。

残念なことに、私が小学校を卒業する前に祖父は亡くなってしまった。

老衰だった。

その後、私はこの話を忘れていた。

けれど、私は祖父の話を信じるしか無かった。

私の友達は、それが見えていたようで、結局、彼もまた事故により死亡してしまった。







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影人 葵流星 @AoiRyusei

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