第6話 初恋。タイムマシン。
6 初恋。タイムマシン。
オレはついにタイムマシンを発明した。半世紀をかけてつくりあげた。いや、全生涯をかけてつくりあげたといっていい。もう老いぼれだ。
さて、どこにいくか。未来社会にいくには、歳をとり過ぎている。だいいち、なにもしらない――新世界にいくのは怖い。
オレの育った時代にいってみたい。おれはセッカチだ。そう思い立った瞬間。炊飯器のスイッチを入れる気軽さで入力した。なにか持っていかなければ。手に触れた卓上のモノをポッケにつっこんだ。
少年がじっと少女をみつめている。
「美智子さんのこと好きなのか? だったら声をかけてみたら」
オレはオレの育った時代に来ていた。
AKB48を卒業した前田敦子をさらに幼くした感じの美少女。
それにしても、どうしてオレは女の子のなまえをしっているのだ。
「ほら、勇気を出して……。言葉にださなかったら、なにも始まらないよ」
少年はそれでもまだモジモジしている。マダルッコイったらありやしない。
「ほら、この本をあげるから。おもいきって……」
少年はオレから本をもらうとうれしそうにほほ笑んだ。オレは少年の背中をプッシュした。そこで、滞在時間切れ。
あれからどうなったか。オレの机に小さな本がある。バイブルだ。
『初めに言葉ありき。』
線が引いてある。だいぶ昔に引いたらしい。少年はあのあと、少女におもいきって言葉をかけたのだ。もう鉛筆の線もうすれかけている。
「おーい美智子さん。お茶――」
オレはカミサンに声をかけていた。
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