第2話 ふいに……老いが
2 ふいに……老いが
ふいに、背後から肩甲骨のあたりをつきとばされた。
なんとか態勢は維持できた。
女がわたしの脇をとおりぬけた。料金箱に硬貨を入れる音。
「なんてひとなの。あやまりもしないで」
妻の声がした。
バスには、わたしたちいがいに乗客はいなかった。
つきとばされるまで、気配はなかった。
わたしの背後でふいに、女は3D化したのか。
異次元からの……刺客か? バカなことをかんがえるものだ。
女は平然とした後ろ姿をみせたまま群衆の中にまぎれた。
もし、彼女がナイフを手にしていたら、刺されていた。
まったく気配すらかんじないまま刺されていた。
いや、たしかに、わたしは刺し殺されていた。
死んでいた。
剣の道を極めたはずなのに。
これではただのオイボレだ――自尊心を刺し貫かれていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます