第10話 幼馴染と彼
空き教室。
カーテンは全開で窓も開放している。太陽の光がちょうどいいくらいに、匿名性を壊すように降り注いでいた。
「君に悪いと思って、姉に教えたんだ。この空き教室のことを」
「……罪悪感?」
「ま、それだよね。君の……果実?だっけ?それをとってしまった罪悪感から」
「……」
「彼女の視線はいつだって君を向いていた。一途な視線に僕は惹かれていたんだよ。でも、なんであんなやつのことを好きなんだろうな、とか聞いてみたりしてさ」
「そこで、僕の存在を知ったのね」
「ああ、そうだよ」
「幼馴染という関係性だ。互いが互いを想い合っているのは当然だから、それを横取りするような真似は流石に気が引けたからねぇ」
「その割には
「逆だよ。横取りしたからこそ、僕たちは幸せにならなきゃいけない」
「……まあ、お互いが幸せならいいんじゃないか」
「……やはり、君は大人みたいだなぁ」
沢口は、くすくすと笑った。
「ところでこの空き教室、どうやって知ったんだよ?」
「……聞かないほうがいいよ。いくら温厚な君でも泣くから」
「……
「いや、教えたのは僕だ」
「だったらどうやって……」
すると沢口は立ち上がって、入口の前に立つ。
「ま、つまりはそういうことだよ。次第に君もわかる」
彼はそんな捨て台詞を吐いて、そうしていなくなった。煙のように。
しばらく静かに考える。
そういうこと?次第にわかる?
そして、察する。
「あいつ、馬に蹴られて死ねばいいのに」とか思ったけれど、口には出さなかった。まあ、出てたけれど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます