割れた空から海水

 学校が終わって仲の良い友達数人と帰り道を歩いていると、いきなり耳を劈くような音が辺りに響き渡った。

 突然の轟音に友達と顔を見合わせていると、頭に何かが降ってきた。

 反射的に空を見上げ、私は絶句した。空がひび割れてパラパラと欠片らしきものが降り注いでいた。

 状況が理解できず、友達とともに固まっていると、割れた空から膨大な量の水が一気に地上に向かって落ちてきた。

 私はパニックに陥った。他の人々も私と同じようにパニックに陥っているようだった。

 逃げる間もなく、地上は水で覆い尽くされた。微かに感じる塩分の匂いで海水だと分かったが、なぜ空から海水が落ちてきたのかは分からなかった。

 友達とは離れ離れになり、割れた空から断続的に落ちてくる海水で、街が崩壊する様を見つめることしかできなかった。

 徐々に薄れゆく意識の中で、最期に見たものは、海水に浮かぶ死体の群れだった。

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