人間パフェ

 私はウキウキした気分で、食器棚からグラスとタッパを取り出した。グラスとタッパをテーブルに置くと、工具箱から鋸を手に取り、床に視線を落とした。

 台所の床には可愛い弟の死体が転がっていた。ほんの少し前に『人間をふんだんに使ったパフェを食べてみたいな』と呟いたら、弟が自分の体を使っていいよと言ってくれたのだ。私のために自分の身を捧げてくれた弟にはキュンとした。

 弟の死体を椅子に座らせると、だらりと垂れ下がった右腕を持ち上げ、その真下にタッパを移動させる。

 力を込めて鋸を前後に動かし、右腕を付け根から切断する。溢れ出た血液がタッパを満たした。タッパに蓋をすると、冷凍庫に入れた。

 それから切断した右腕を食べやすいように輪切りにし、血液に絡めてフライパンで数分ほど焼いた。思いの外、美味そうな見た目に仕上がった。焦げ具合もちょうど良い感じだった。

 グラスの底に輪切り状の肉を半分だけ敷き詰めた。残りはまた後で入れる。弟の死体から両眼を抉り取り、舌も鋸で切り落とし、軽く焦げ目がつく程度に火を通した。

 冷凍庫を開けて確認すると、血液は良い具合にシャーベット状になっていた。冷凍庫からタッパを取り出し、スプーンで血液シャーベットを掬ってグラスに入れる。その上に残りの輪切り状の肉を敷き詰める。さらに血液シャーベットを載せる。仕上げに両眼と舌を血液シャーベットの上にそっと載せた。

 私は弟の死体の正面に座ると、スプーンで両眼と舌、血液シャーベットを同時に掬って口に放り込んだ。血液シャーベットのシャリシャリ感と両眼のコリコリ感が絶妙なハーモニーを生み出し、美味しかった。舌の食感もたまらなく美味かった。

 血液シャーベットを食べ進めていくと、輪切り状の肉が顔を出した。輪切り状の肉に血液シャーベットを載せて口に入れる。可愛い弟のエキスがたっぷり詰まった肉は非常に美味しかった。今まで食べた肉の中で一番美味いといっても過言ではない。

 あまりにも美味しくてあっという間に食べ終えた。

「とっても美味しかったよ」

 私はそう言って微笑むと、弟の死体にもたれかかった。 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る