ワードホルダー

 私は窓際の棚からワードホルダーを取り出した。ワードホルダーには数多くの文字や単語、言葉が収められている。

 ワードホルダーから火の文字を取り出すと、私はテーブルの上に置いた。仰向けにした火の文字をタッチする。すると火の文字が黒から赤に変化した。

 それから鍋の文字を取り出し、火の文字の上に重ねた。水の文字も取り出して鍋の文字に重ねる。水の文字が徐々に湯へと変化していく。さらに豚肉や人参、じゃがいもの文字も重ねた。

 しばらくすると、豚肉の文字が赤から茶色に変化した。それとほぼ同時に人参やじゃがいもの文字がぐにゃりと柔らかくなった。仕上げに甘口のルーと中辛のルーの文字を重ねた。

 甘口のルーと中辛のルーの文字がドロドロに溶け出して全体に行き渡ると、鍋以外の文字が一体化してカレーの文字が完成した。ご飯の文字にカレーの文字を重ねた瞬間、カレーライスの文字に変化した。

 私はワクワクした気分でカレーライスの文字を口の中に放り込んだ。口の中にカレーの旨味がじわりと広がる。ちょうど良い辛さだった。

 カレーライスの文字を味わった後、私はワードホルダーを開いた。明日は何を食べようかと思いながら、私はワードホルダーを眺めて微笑んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る