人間ドミノ倒し

 山奥にひっそりと建つ屋敷の広大な庭に数十人の若い男女が直立不動で一列に立っていた。みな一様に怯えた表情を浮かべ、誰一人として服を着ていなかった。服の代わりに若い男女たちは体にガソリンを浴びせられていた。

 庭に並べられた百脚のパイプ椅子には金持ちが着席し、不敵な笑みを浮かべて若い男女たちを眺めている。

 一人の男がパイプ椅子から立ち上がり、前に進み出た。この屋敷の主だった。

 男はマッチに火をつけると、一番前に立つ女を押した。それと同時にマッチを投げた。ガソリンに引火し、女は燃えながら後ろに倒れ、背後の男にぶつかった。

 まるでドミノ倒しのように若い男女たちは倒れていき、火はガソリンを飲み込んで瞬く間に勢いを増していった。広大な庭に火の川が形成される。

 金持ちたちの狂ったような拍手が鳴り響き、燃え尽きる間際まで若い男女たちは悲鳴をあげ続けた。


 ――一年後、同じ屋敷でまた人間ドミノ倒しが行われた。

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