カレーの隠し味
私はいつも隠されていることに悩んでいた。人間はカレーを作る時に隠し味を入れることが多い。私はそのうちの一つ――コーヒーの粉だった。苦みを足したい時に私をカレーに入れるようだった。
けれどどうして人間は隠し味なんて言うのだろうか? 隠されていると思うと、本来の味が出せなくなる。目立っては駄目なんじゃないかと思えてならないから。隠し味なんかじゃなく、普通に旨味とでも言ってくれれば、本来の味も出せるのに。
そう思っていると、人間が私を掴んで鼻歌まじりにカレーに入れた。大さじ一杯程度の量だった。瞬く間にカレーが私を飲み込もうとする。いつもなら抵抗せずに、甘んじて飲み込まれるのを受け入れている。
だが、私もそろそろ本来の味を出したかった。迫りくるカレーに私は全力で抵抗した。思わぬ反撃を受けてカレーは驚いているようだった。
何とかカレーに打ち勝ち、私は本来の味――苦味を放出した。
そして夕食の時間になり、人間たちはカレーを食べ始めた。
「ちょっとママ! このカレー苦すぎるんだけど! こんなに苦くなくていいのに!」
その言葉にショックを受け、私はまた悩まされることになった。
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