黒き死神が笑う日

ンヴェラの塔

　ンヴェラの塔は小高い丘の上に建ち、常に不気味な音を周囲に響かせていた。漆黒に染まっていることもあり、余計に不気味な雰囲気を醸し出している。

　ンヴェラの塔がいつから小高い丘の上に建っているのかを知る者はいない。制作者も建設した目的も依然として不明のままだ。学者の中には宇宙人が建設したのではないかと唱える者もいる。

　奇妙なことにンヴェラの塔には出入口が一切なく、中に入ることはできなかった。ンヴェラの塔の内部構造を調べようにも入れないため、学者たちは頭を悩ませていた。機械を使用して内部を調査しようとした学者もいたが、真っ黒な断面が映し出されるだけだった。

　人類は知る由もなかったが、ンヴェラの塔は反物質を人工的に生成するための塔だった。遥か昔、一人の天才が何十年もの歳月をかけて完成させたのがンヴェラの塔だった。気が遠くなるような年月をかけて反物質を生成する。目的は単純に反物質を生成することであり、単なる実験に過ぎなかった。

　少量でも危険な反物質が塔ほどのサイズで生成された場合、莫大なエネルギーが発生することになる。ンヴェラの塔は間もなく反物質の生成を終えようとしていた。

　地球滅亡まであと――。