プロットをたてよう

 ネタ出しからお話のタネができましたら、次はプロットをたてます。

 プロットは書かないでそのまま本文に入る人もいますが、僕は必ず書くようにしています。

 それというのも、書いているうちに話の方向性を見失い、着地点を忘れ、いらん後付設定をぽこぽこ生み出した挙げ句に書き上げられずに放り出す、という経験を幾度となく繰り返しているためです。

 プロットはいわば旅に出る際の地図、航海中の海図のようなもの。書き上がりがだいたい何文字になるかの目安もたてやすくなりますし、あると大変心強いです。


 プロットをたてるには、まずはコマが必要になります。人生ゲームとかで使うあれ、人間を表すあのコマです。つまりは登場キャラクターのことですね。

 「自分が生み出したキャラクターは我が子みたいなもの。コマ扱いなんてできない」という方もいるかと思われます。同感です。僕もそう思います。他人に自分の創作キャラについて語るときは『うちの子』という呼び方もします。

 ですが、そういう感情は別として、僕は必要とあれば登場キャラ全員を抹殺することもいとわないので、『我が子』と呼ぶのもおこがましいですし、執筆中は一貫してコマとしての扱いをしています。

 そのせいで毎回毎回血なまぐさい話ばかり書く羽目になるのですが、まあそれはそれとして閑話休題。


 最初は、多くのコマは必要ありません。

 とりあえず、『主人公』『ヒロイン(性別は問わない)』『敵』の3つだけ、考えておきます。

 彼ら3人を作中世界に放り込んで、お話のはじまりはじまり。

 彼らがその世界で、どんな風に生きてきたか、どうやって生きていくか、なぜ出会うのか、なぜ対立するのか、どんな善行を、または悪事を働くのか。

 ざっくり妄想して、お話の骨子をざっくり決めます。

 最初からあまり緻密に詰める必要はないです。どうせあとから嫌になるほど緻密に考えることになるので。まずはざっくりいきましょう。


 次に、全体を『起』『承』『転』『結』の四段階にわけ、さらにそれぞれを『序』『破』『急』にわけます。新人賞向けの10万字の作品を書くときは、さらにさらにそれぞれを『序』『破』『急』にわけます。

 たとえば、『村人の青年がある日勇者として覚醒し、さらわれた姫を救うために魔王と対決する』という物語の場合、『勇者が覚醒して旅立つ』までが『起』の内容になり、『勇者として覚醒する』シーンが『起―破―破』になります。

 起承転結は、それぞれ同じ長さにはなりません。物語の中で最も尺を取って語られる部分が『承』になります。

 前述の例になぞらえると『魔王討伐の旅路、新たな仲間を加えたり危機にあってなんとか乗り越えたり、仲間のひとりといい関係になったりする』あたりが『承』です。

 ここをだらだらした平坦な道のりにすると、読者は飽きます。その前に、書いてるこちらが飽きます。いけませんね。

 なので、様々な出会いや別れ、危機やその打破を繰り返して、いい感じにどきどきわくわく感を演出する必要があります。

 主人公がひたすら無双する話だと、このパターンにはまったく合致しないのですが、僕は俺TUEEEE系の話がクソ嫌いなのでそういう話は書きません。なのでそういう話の書き方は知りません。


 『転』で、ストーリーはどんでん返し、あるいは大きな転換点を迎えます。

 勇者一行が魔王城に突入するもすでに魔王が何者かの手によって倒されていて真の黒幕が立ちはだかったり、勇者といい仲になっていた仲間が実は裏切りもので背後から刺されたりするわけですね。

 そこから勇者が華麗な復活を遂げるからこそ読者としては非常にテンションが上がる場面になるわけですが、ここでは『ご都合主義』に気をつける必要があります。

 要するに、『華麗な復活』には、必ず伏線が必要なのです。伏線も無いのに復活されると、読んでる僕は「はァ〜〜〜〜〜????」ってなります。

 たとえば、危機に陥った勇者が唐突に神様のご加護を発動させて正義の光が敵を焼き払いました、とかは「は?」ってなります。

 「うしろから心臓を一突きされたが、今までどこにも描写がなかったけれど実は筋トレが趣味で服の下に重厚な鉄板を仕込んでいたので無事だったぜ」とかもだめなわけです。

 僕だったら、序盤でヒロインからもらった思い出の品を胸ポケットに入れていたので刃物から守られたとか……あ、だめですね。心臓つらぬかれてますね。

 まあとにかく、一旦は追い詰められるわけです。ピンチに陥り一時撤退、としてもいいでしょう。


 『転』におけるピンチは、『意外な展開』であるわけですが、これは読者にとって、ではなく、の意外な展開にしてください。

 先程の例で言えば、一緒に旅する仲間が裏切り者であり、その事実は登場人物の独白を聞くことができる読者だけが知っているとする。読者が裏切り者の存在を知った途端、なんてことない団らんの場面が、勇者が暗殺されるかもしれないはらはらどきどきの瞬間に様変わりするわけです。そして、満を持して裏切り者が刃を勇者の背に突き立てるとき、「勇者! 後ろ後ろ! ああーっ!」となってくれる……といいな。

 そんな風に、読者にしてほしい反応を想定しながら、精一杯そうなるようにシーンを組み立てていきます。


 絶体絶命の危機……かーらーのー華麗な復活!

 そこから『結』ははじまります。

 勇者は最後の敵を打倒し、姫を助け、国へ帰る――<目標>を達成して、旅から日常へと帰還する。そういうシーンになります。

 ここで大切なのは、<目標>は必ず達成させること。勇者が魔王を倒す話なら、必ず魔王あるいは黒幕とは対決させて、その勝負にけりをつける。姫は連れ戻す。そうして、物語をちゃんと完結させてください。

 新人賞に応募する作品で、多いのが「俺たちの戦いはこれからだ!」エンドだそうです。

 物語の最後に「とりあえず敵は倒した……だがこいつの裏にはまだ真の敵がいるらしい……不安だ……なんか姫も見つからないし……でもとりあえず帰ろう」とか勇者に言われたら「は?」ってなりますよね。僕はなります。

 続き物として連載するなら別ですが、新人賞に応募する作品に『次回作への引き』は必要ありません。

 「そうは言っても受賞したら続きを書くのだし、ある程度次に続く予感があった方がいいんでしょう?」と言う方もいますが、安心してください。そもそも僕らはまだ受賞していないので『受賞したあと』の心配はいりません。

 受賞したら、どうせ受賞作品は書き直すことになるんですよ。次への引きが欲しかったらそのときに編集者さんから「引きいれてくださいな」って言われますのでそのときにいれればいいんです。

 とにかく、応募原稿は『結』のシーンでしっかりばっちり締めて、それひと作品で過不足なく読めるように整えてください。……って、新人賞のQ&Aに書いてあった記憶があります。電撃のQ&Aでも昔書いてあった気がするのですが、今確認してみたらそういう事実はありませんでしたね。僕の脳内で勝手に合成された記憶だったようです。おかしいなー。



 以上、非常にざっくりした『プロットのたて方』でした。

 偉そうに断定口調で書かせていただきましたが、プロットの書き方はほんとに千差万別です。売れてる作家さんの書き方本など参照して、自分にあった方法を探してみてください。

 僕の場合は上記の構成とともに、とにかく読者に「はァ〜〜〜〜〜????」と思わせないように、ということを気をつけています。

 「はァ〜〜〜〜〜????」は厄介ですよ。

 一度でも「はァ〜〜〜〜〜????」と思われたが最後、もうそのあとどんなに感動的な場面を書いても「はァ〜〜〜〜〜……(呆れ顔)」で流されます。そも、読んでもらえれば良いほうで、大抵の読者は「はァ〜〜〜〜〜????」と思った時点でブラウザを閉じます。少なくとも僕はそうします。

 読者の落胆というのは、本当にこわいこわい壁なのです。

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