第7話 初めての魔法
「さて、次は
ひとしきりスキルの凄さを実感した後、現在使える魔法の全ての試すことにした。もっとも、残る一つだけの魔法しか使えないのだが。
「『
手を体の前に勢い良く差し出し、体のエネルギーを手のひらから放出するイメージで魔力を送り出す。
この行為自体が非常に恥ずかしかったが、あの痛みの試練によると魔法を唱える際にはイメージと動きを付けると良いらしい。
唱えた瞬間に体の中の暖かい何かが虚空に抜けていく感覚があり、体の力がやや抜ける。今抜けていったものが恐らく魔力なのだろう。
――魔法を使ったのは分かった。しかし、何も起こらない。
「どういうことなんだ? 確かに創り出したいものをイメージしたはずなんだけどな」
この魔法は物を創造できるということで、元の世界では馴染み深い刀剣をイメージしたはずだが……何故だか創り出せない。 なぜ刀剣を選んだのかっていうもの一度使ってみたかったというのが主な理由だった。もう一度同じイメージで魔法を唱え、エネルギーが抜ける感覚を味わっても、待ち望んだ結果は得られなかった。
どうしても疑問に思い、
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“この世界で”一度見た“物質”を召喚可能。その条件として創造対象の構造を把握していなければならない。
MPがある限り使用可能。三秒間の間のみ触れずとも操作可能である。
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ああー、なるほど。この世界、いわゆる転生先のこっちの世界で俺が見たものじゃないと駄目なのか。というか、構造を理解しないと創造不可の条件が非常に厳しい気がする。
例えば刀剣を作りたいのであれば刃の部分は〇〇で出来ており、柄の部分は〇〇で組み上げられている、などとそこまで己が理解していなければならないのだ。もしかしたら
こちらの分析するを先に作っておくべきだったのか。一日待つので今回は魔法はお預けということに。非常に残念である。
「それにしても、少ししんどいな」
ステータスを見ると、今の残りの魔力は1000を切っていた。不発の分が案外体に負担を掛けており、体は気だるく、手先がやや痺れる感覚がある。
ふとここで一つの疑問が湧く。もし魔力が切れてしまった場合、俺の体はどうなってしまうのか。この不調が更に悪くなると、目眩などが起こる可能性が高い。
「やってみよう」
同じく刀剣を創り出すイメージで魔法を唱え続けたが、当然ながら不発、不発、不発である。
残り物質創造一回分の魔力残量になった時、体に明らかな変化が訪れる。
「はぁ……体が風邪ひいてるみたいに重くなってきた。呼吸もなんか苦しいし、やっぱり使いすぎるとデメリットがあるか」
倦怠感と喉の閉塞感、そして手足のしびれがより強くなるという明らかな不調が発生した。体の使いすぎはどこの世界でも良いことではないのだろう。
完全な魔力切れになった場合には倒れてしまう、などそんな想像が頭を過ぎるがこの時覚悟を決めた。
「一回、全部の魔力を使い切ってみようか」
一呼吸置いて、もう一度同じように物質創造を唱える。
魔力が抜け出る感覚を味わった後、冷凍庫の中に放り込まれたような寒気と、世界が高速で回り始めたかのような目眩が襲いかかる。
「う、わっ……こんな感じ……なのかっ」
経験した事がない激しい目眩と過呼吸、そして体の不調に思わず足元から崩れ落ちる。
当然先程よりも体が重く、頭も視界もぐるぐるしている。
そして何よりも――
「魔法の使用頻度はしっかり考えた方が良さそうだ」
どうしようもなくなってしまったため、この洞窟の硬い床で目を閉じ、眠ることにした。
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目を開けるといつもと何ら変わりない風景が俺を現実に引き戻してくれる。
だが、体はいつものように――とはいかなかった。
「……筋肉痛、空腹、乾き、頭痛、今の状態はこんな感じか」
目眩は魔力が回復したためであろうか。今のところは体も大丈夫だ。
「とりあえず早く食料を見つけないとほんとに駄目だ。野垂れ死にしそうだ」
寝てる間にも一日が過ぎたであろう。直感的に
喉の乾きを癒すため、安全な食料を見つけるため、そして何よりも魔法を使えるようになるために、物などを詳しく理解出来るようになる能力を創る事を決心した。
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