第4話 異世界へ
ポタポタと水が落ちる音がする。
「っ……? ぁぁ……?」
目を開けるとそこは洞窟のような空間であった。白い鍾乳石ようなものがあたり一面、そして天井一面に生えているが、全くもって生物の気配がない。
頭はガンガンと痛むが、横になっていた体を起こし、現状を確認する。
良く見ると、どこかしこもつららのように鍾乳石が生えていおり、そこから水滴も落ちてくるようで地面が濡れている部分もある。
眩しい光に包まれた後に落下してきたわけではなさそうだ。どこから入ってきたのか、入口はない。
今いるこの空間は見た限り広く、ドーム状になっている。
そして、いきなり問題がある。
「出口は?」
出口と思える場所がないことだ。完全に転送されてきたようである。そんな技術は元の世界になかったはずなんだけどな。
「あの女神どんなところに転生させて……ん? 俺は転生だったんだよな? でも体は元のままだし……転生って赤ちゃんからじゃないのか?」
全くあのドジ女神。と呟きつつも立ち上がる。
「たしかアイツは説明はあちらで、とかいってたよな。しかし――こうも洞窟の中だと異世界って感じはしないよな」
鍾乳石が生えている洞窟は元の世界にもあり、新鮮味を感じなかったが、体にこれまで存在しなかった何か暖かい違和感があることに気がつく。
「あの女神、俺の体に何しやがった。身体の中に湯たんぽでも入れたのかよ」
ついに人体改造でもされたのか、など考えていると
(……さん……夕……さん! 聞こえますかー?)
少しずつクリアに聞こえてきた脳内に響く高い声音はそうすぐには忘れない。あの女神だ。
(すいません! 色々あって遅れました!)
「……取り敢えず何がなんだか良く分からないんだが詳しく教えてくれ?」
(はいっもちろんです!)
色々あったについては聞かないことにした。さらに混乱を招くと思ったからだ。
(あっ……あと声に出さなくても聞こえるので念じるだけでいいですよ!)
そうだったのかよ。傍からみれば俺は生えている鍾乳石に向かって話してるようにみえるだろう。生き物がいるかどうかは分からないが、少し恥ずかしい。
(じゃあまず聞くが、ここは何処だ?)
(ここは私の世界の一つであるルミナ。それと貴方がいるところは――ってあれ? なんでそんな所にいるんですか?)
(質問に質問で返さないでくれよ。余計絡まるだろ)
(あぁっとちょっとお待ち頂けますか?)
(ああ)
大体この流れは悪い流れだ。またあの女神がなにかやったのか?
(あっ)
「はぁぁ……」
ため息をついてしまった。
転生したばっかりなはずなのに疲労感が募る。転生者って大変なんだな。
「えぇっとあの、すみません……」
(もういいって……ここはどこなんだ?)
「えっと、そこは……人間界の近くにありますが、一応魔界の洞窟ですね」
聞き捨てならない言葉が幾つかでてきたな。人間界? 魔界? ほんとにファンタジーの世界に飛んできたのだろうか。
「えっとこの世界では幾つかの種族がいます。代表的には、人間、魔人、獣人、竜人……他にもいますが代表的なのはこんなものです」
(本当にファンタジーの世界だな。この洞窟の中じゃ全く実感がわかないが。――話を進めようか。この体の中にある違和感はなんだ?)
(ええっと、それは魔力です)
(そうか。まさかその程度の説明で俺が納得できるとか思ってないよな?)
(えっ? 納得できませんか?)
わざとなのか? 完全に挑発しているようにしか感じないんだが。
(冗談です。魔力とは魔法を使うときに使う力と考えて考えて構いません。筋肉が体を動かす時のようにエネルギーを使うのと同じ扱いですよ)
(ということは俺にも魔法がつかえるのか……?)
(はい! 使えますよ!)
これを聞いてワクワクしない男はいないだろう。化学でも証明できない未知の能力なのだ。
(先程とは違い、ワクワクしているようですね!)
(そりゃ……な)
(あっ大事なことを忘れてました……ステータスはしっかり反映してますか?)
(ステータス?)
ゲームのキャラクターになったようだ。もしかしたらこの世界はゲームの世界なのかもしれないな。一応ゲームの世界に入ってるという意識で過ごすことを頭に入れておこう。
(先に言っておきますが、この世界は一人一人が意識を持ち、目的をもってます。断じて自動プログラムではありません!)
シャーリンは自慢げに話す。やはり神の世界でも凄いことなんだろうな。
(取り敢えずステータスと念じて下さい!)
恥ずかしいがやって見るか。中学生の記憶が掘り起こされたのは俺だけの秘密だ。
(ステータス)
――――――――――――――――――――――――
名前 波風 夕 レベル1
年齢 17
性別 男
HP(体力) 100
MP (魔力)500
ATK(攻撃力) 20
DEF (守備力)30
DEX(器用さ) 20
AGI(敏捷性) 50
INT(知力) 25
LUK(運) 0
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