六色<ロクシキ>
――――六
そう告げられてから2週間が経った。
随分と長い14日間だった気がする。
さて、私たちは今、山中を車で走っている。
運転手は政府のおじいちゃん。そして隣には。
「ミキ、起きて。もうすぐ着くよ」
「ん、んん……」
昨日も寝る直前まで特訓していたせいで、完全に寝不足である。
元々徹夜には慣れているはずだが、慣れない環境で身体だけではなく心も疲弊していたらしい。
人間なかなかうまくいかないものだ。
「大丈夫?」
「大丈夫……」
ミキ、と。
私を呼び捨てするのはつい先日まで
「ちゃんと寝てってワイズも言ったでしょ。初仕事なんだから」
「ギリギリまで詰めておきたくて……」
「今日の仕事は調査だけだから、そんなに緊張しなくてもいいのに。真面目なんだねぇ」
「うぅ……」
褒められると、どうリアクションとればいいのか分からなくなってしまう。
褒められ慣れていなすぎる。
「何があるか分からないし、エル、の足引っ張りたくないし」
呼び方がぎこちない。
コンビとして行動するなら、お互い呼び捨てにしようという話になったのだが…。
やっぱり苦手だ。
「視覚強化の成功率上がった?」
「100回に12回…」
「2回増えたなら上々だね」
2増えただけで褒めてくれる。天使か?
五感の中で視覚が最も多くの割合を占めている(割合は忘れた)。他の四感はすんなり強化できたが、視覚だけはなかなかうまくいかない。
才能がなくもなく、あるわけでもない。
私らしい。
「最初なんだから、少しずつ成長してくれればいいよ」
エルは軽やかに答える。
人の成長を待ってくれるとは、なんと心の広い大天使エル。
思わず祈りそうになった。
「お二方、到着でございます」
運転手が口を開くと、森を抜けた。
私はずっと関東に住んでいたので、こうして本物の"村"を見るのは初めてだった。
本当にテレビで見たような"村"である(馬鹿にしているわけではない)。
「こんなとこで、奴らは何してたんだか」
「それを調べるのが今日の私たちのお仕事だぜ」
魔法政府では随時不審者の情報を募集している。
山に男女の怪しい二人組をみた。
そんな目撃情報を受け、こうして出張したのだった。
「その通報って二人組を見てから、何日か経ってるんでしょ?」
「この村電話がないみたいだから、別の用事でふもとに下りたついでに通報したみたいだね」
シェルターは魔法モリモリ科学モリモリだったのに、ここまで文化レベルの差があるとは思わなかった。
そもそもこの世界に四輪駆動の車があることにも驚いている。空飛ぶ車くらいあっても不思議ではないのに。
「まぁだからこそ、ミキの初仕事の場所として選ばれたんだけどね」
最初の目撃から2日ほどでその二人はいなくなったらしい。まずはフィールドワークから始めようということで、危険度の低いこの仕事になった、という話だ。
いきなりあの空中戦のような戦闘にならなくて本当によかった。
私、まだ跳べないし。
「
運転手と別れ、村長の元へ向かう。
そういう手はずになっている。
村で一番大きい建物へ向かっていると
「なんだい。他にもいたのかい」
農作業帰りのおばちゃんに話しかけられた。
他にも?
「すみません。私たち政府の者なんですけど、村長さんのおうちってあの大きい家で合ってますか?」
「政府? じゃああんたたちの方か。ああ、村長ならあの家で合ってるよ」
「ありがとうございます」
「合ってるってさ」
「みたいだね」
何やら気になることを言っていたが、エルはあまり気にしていないようだ。
「ま、あとで聞けばいいよ」
「……読心術まで使えるの?」
「いやーそういう系の魔法は使えないねー。脳筋だもん私」
私の表情で何を考えているのか分かったらしい。そんなに分かりやすかったのかな。
「そりゃあんな短時間で2回も死にかけたら、慎重にもなるよね。恐い思いさせて本当にごめんなさい。反省してます……」
「その話はもうしないって言った」
「あ、ごめん……」
ワイズさん――博士は宣言通りエルを叱ったらしい。エルからハチャメチャに謝られた。
次から気を付けようねと注意して終わらせた(謝られるのってなんか苦手)。
村長の話は概ね通報と同じものだった。
ただし。
「村の男たちがイノシシを狩りに行った際、聞き慣れない生き物の鳴き声がしたそうなのです。それを聞いた一人曰く、『おそらくは虫類の
「やっぱり関係あるのかな」
「謎の二人組が現れたあとに聞こえたとなると、ね」
登山しながらの作戦会議。
「ていうか敵は森にトカゲでも放ったの? 目的が分からなすぎない? "ノーブルガーデン"って環境破壊が目的の組織なの?」
「んーー」
ノーブルガーデン。
意味は立派な庭、とか見事な庭、辺りだろうと博士は言っていた。
「奴ら、街だろうが森だろうが砂漠だろうが海の中だろうが、どこにでも現れてはそこを占領してるんだよね。一度陣取ったら居座ることが殆どで、今回みたいに撤退することって珍しいから、何か理由があるんじゃないかとは思ってるんだけど」
「イノシシにおしっこでもかけられたんじゃないの」
「それで帰ったなら精神が貧弱すぎる……」
ツッコんでもらえるの嬉しいな。
「そもそもその二人組がノーデン(ノーブルガーデンの略)の所属かどうかすら分からないしね。」
確かに。
「怪しい二人組」なだけでノーデンと決まったわけではないのだ。
何事も決めてかかるのはよくない。
「とりあえず登山道を歩いてきたけど、さすがに手掛かりになりそうなものないね。そろそろ道を外れる頃合いか……」
ついに来てしまった。
舗装されてない山道を歩くのは初体験である。この2週間筋トレしていたとはいえ、ここまで登るのですらかなりしんどかった。体力が持つか心配。
「それってどれくらい歩く予定?」
「暗くなるまでは」
「ぐっ」
「ほら行くよ」
エルは道なき道をずんずんと進んでいく。
私もゆっくりとその後ろ姿を追う。
いつか私も、後ろではなく隣を歩ける日が来るだろうか。
ここから無言で山中を歩き続けるので、そろそろどうしてこうなったのかを思い出してみよう。
ワイズ博士と別れたあと、マンションで望と再開した。
号泣している望と望
なお、望
彼女に何があったか説明すると、すごい褒められたけどすごい叱られた。
至極当然。
腕の検診で再び病院に行くと伝えると、「心配だから私も行く!」の一点張り。
やむなく同行させた。(望が警備員に止められたり、イケメンと衝突したり、案の定ハプニングに巻き込まれた。少女漫画の主人公か?)
「待っていたよミキ君。それにお友達も」
「いえーい昨日ぶりー」
到着した研究室には、ワイズさんともう一人。
エルも待っていた。
「こんばんは」
「初めまして! 浦井望です! 呼び方は
「初めまして。私の名前はワイズ・ミシェル。ワイズでいいよ。はい、次エル」
「えー初めまして! 私の名前はエリュシオン・スカイノートです。エルって呼ばれてます。よろしくね」
ナチュラルに自己紹介を始める望に動じず、二人も自己紹介する。
……完全に乗り遅れた。
「えっと、リクナミキさんだよね。いやー大変だったねー無事で本当によかった!」
「エルのせいでもある」
「ア、本当にすみませんでした……」
一瞬で枯れる植物のよう。
「助けてもらったのは事実ですから。もう気にしないでください」
「今度から気を付けます……」
部屋に来て早々、気まずい空気になってしまったが、
「あのーワイズさんってもしかして偉い人ですか?」
「むむ? まぁそうだね」
望が沈黙を破る。
というか質問が直球すぎる。
恐怖という感情がないのか?
「博士だったりします?」
「博士でもあるね」
「本物の博士!! 博士って呼んでもいいですか!?」
「いいよ……博士ってだけで喜ばれたのは初めてだ」
ワイズさんは恥ずかしそうに目をそらす。
「ワイズ照れてる。珍しい」
「うるさい」
博士とエルは年こそ離れていれど、軽口を叩ける仲のようだ。
大人とそういう関係を築けるのは、少し羨ましく思う。
「まぁ雑談もほどほどにして、そろそろ腕を見せてもらえるかな?」
「はい」
ようやく私に話が回ってきた。
博士の前に座ると、彼女は私の右腕の包帯を少しずつほどく。
出てきたのは何の変哲もない、いつも通りの私の利き腕だった。
「動かしてみて」
腕をグルグル回す。異常無し。
「指先は?」
指を動かす。異常無し。
「とりあえず大丈夫そうだね。あとは血液検査だ」
「ヒェ」
注射器を見た望は後ろを向いた。
「血見るのダメ……」
小声でそんな声が聞こえてくる。
私の左腕に注射器が差し込まれ、大量の血が抜き取られ――なかった。
「少ししか採らないんですね」
「今回のは簡単な検査だからね」
注射器をトレイの上に置くと、7つの試験管が刺さった試験管立てを用意した。
管の中には透明な液体が入っている。
「なんの検査ですか?」
「まー見てなって」
1本目の試験管に血液を垂らす。
鮮やかな赤に変化した。
「ふむ」
2本目の試験管に血液を垂らす。
鮮やかな青に変化した。
「おお」
「わお」
エルも声をあげた。
色が変化するのは珍しいことなのだろう。
3本目は緑に変化した。
「む?」
「マジか」
「何? 何してるの?」
後ろを向いたままだった望が近づいてきた。
4本目は黄色。
「……!」
「え」
「実験?」
5本目は
「pH?」
望を除き、とうとう無言になった。
6本目は白。
「pHに白なんてないよね?じゃあ違うか」
7本目は……血の色のままだった。
博士は注射器を再びトレイに戻すと、しばらく黙っていた。
エルは私と博士を交互に見ている。
「白衣で悩んでると余計に博士っぽい」
お前この状況で平然と喋っていられる胆力すごいな。
尊敬するわ。
「属性魔法」
試験管を見つめながら、博士は語る。
「天球では、属性を色で表すんだ。火や爆発なら"赤"、水や氷なら"青"、みたいにね。全部で七
いなかった。
いなかった?
それは――
「……君は天球史上二人目の、六色使いだ」
二人目。
「どうせなら一人目がよかった」
なんて傲慢なことも思ったが、口には出さなかった。
命の恩人たちに対する謙虚さを失ってはいけない。
この星の歴史が如何ほどのものなのか無知であるため、二人目という数字の重さがイマイチピンと来ない。
一人目が1000年前とかだったら歴史的快挙ではあるが。
「それってその、物凄くすごいことなんじゃ……?」
語彙力が足りない。
「ビックリし過ぎで、この部屋ごとひっくり返るくらいには驚いてるよ」
確かにさっき、机の上のペンが浮いていたような幻覚が見えないこともなかった気がするのだが多分気のせいだろう。
「ただ……その」
「?」
「「………………」」
博士とエルが顔を合わせている。
意味深すぎるアイコンタクトやめない?
不安になってきた。
――いや、逆に。
初代六色使いは神話にしか登場しないとかそういうヤツか?
そういうレベルか?
有り得る。
異世界転移したら最強の能力持ってた系だ。
なんだ!私もようやく主人公の番が回ってきたってワケかい!
14年で回ってきたなら早い方かな?はっはっは。
チートで世界救えちゃうなぁ!!
死にかけたお陰で手に入れたアイデンティティ!こんな最高の力を生かさない手はな――
「エルが一人目なんだ」「私が一人目」
「…………………………………………エ?」
「エルちゃんが一人目なの?」
「うん」
一体どういうことだ。
なんだそれは。
「それって」
「ミキ君、すまないがもう少し詳しく調べさせてくれ。エルも診た方がいいな。準備しよう」
「手伝います」
「二人はそこで待っていてくれ」
「はーい」
「はい」
……どうやら主人公は私ではなく、エルの方だったらしい。
身体検査が終わると、望はソファーで眠っていた。
……1時間くらいしか経ってない気がします。
あなた8時間くらいお昼寝してませんでしたか?
まぁいいけど……。
「結論から言おう。ミキ君は間違いなく六色使いである。そしてエルの方だが、身体になんの異常もない。健康そのものだ。ひとまず安心していい」
「よかったぁ」
「もしもエル側で魔力減衰とか起きてたら一大事だったからね」
なんらかの原因で、エルが私に魔法を譲渡してしまった可能性も考えていた。
博士はそう語った。
どこの馬の骨とも分からない地球人に、歴史上初の六色を奪われていたら、本当に一大事だったろう。
恐過ぎる。
「じゃあミキちゃんの魔法は……」
「断定はできないが、エルと接触したことがトリガーの可能性は非常に高い。それとも
「ワイズ」
「……ああすまん。また考え込んでしまった。そうだな。少なくとも今現在で"この"現象に名前をつけるとしたら……
「どうって言われてもなぁ」
エルは難色を示したが私は嫌いではない。
「名称はまた今度考えるとして、『史上二人目の六色使い』をどう扱うのべきなのかが、今最も優先すべき問題だ。
「拘束されるだろうね」
オイ。
それじゃあ私に襲い掛かってきた三人組と何も変わらないぞ!?
政府とは名ばかりの犯罪者集団じゃん!!
「解剖はされなくても、部屋に閉じ込められるかな。さながら夏休みの観察日記みたいに。魔法の成長段階とか記録されてね」
今まで穏やかだったエルだが、その言葉には怒気を孕んでいた。
「厄介事を避けるなら、ミキ君には黙っていてもらって、この事実はなかったことにするのが平和かもしれないな。多分それが一番手っ取り早い」
「私もそれがいいと思う。魔法暴走に関しては、何か対策できそう?」
「腕輪に細工して、強い魔力反応と同時に魔力吸収をしてもらうとか……」
待て待て待て。
隠すのか。
せっかくのこの
14年間生きてきて、ようやく手に入れた私唯一の
「あ、あの」
思わず声を挙げる。
「私は魔法を隠して、普通の生活に戻るということですか?」
「ええ。だってこれ以上あなたを危険な目に遭わせる訳にはいかないもの。このシェルターも、もう少ししたらいろいろな施設が解放されて、退屈しなくて済むはずだよ」
違うんだ。
退屈がどうとかじゃない。
私が言いたいのは―――
「――――ン。ああ、なるほど。エル、そうじゃないな。彼女が言いたいことはそういうことじゃないんだ。つまりミキ君、君はこう言いたいんだろう? 『せっかく魔法を手に入れたのに使えないのか!』ってね」
「え」
エルは驚愕し思わずこちらを向いた。
「失念していた。そりゃそうだ。だって地球には魔法が無いんだから。フィクションの世界。それが今、目の前に、ある。さらには六色なんていう絶好の
「で、でも、あんなに恐い目に遭ったのに」
「まー正直気持ちは分からない。だって
たった今、推し量ろうとしたって無駄って言ったばかりでは?
「…………はい」
図星も図星。
図星過ぎて心臓が
心☆臓。
「くくくく。そうだった。君はそういう子だった。病院で勝手に機械使って抜け出すような、好奇心の塊みたいな
「ワイズ! また悪い事考えてるでしょ!」
「なぁ、少女! 魔法使えるようになりたいかよ!」
「ちょっと!」
先ほどは別人のように、目が爛々と煌めいている。これがこの女の本性か。
エルの静止ももはや耳に入っていないようだ。
……気に入らねぇ。気に食わねぇ。
どいつもこいつも、私のことをモルモットだと思ってるのか。
「なりたい、です」
「だろうなぁ! だが少女が思ってるほど、
私は。
「ああ安心しろ。辞めたくなったらいつでも解雇するからサ! やる気があるなら出来るとこまでやってm」
博士は言い切る前に、口を紡いだ。
否、紡いだのではなく紡がされた。
「熱くなり過ぎ。いい加減にしろ」
エルの静止が――拳が入った。
グーで左頬を殴った。
車椅子は大きく右に傾き、そのまま倒れる。
あ、あばばばばばば。
マジか?え、マジか。
ポリコレとかに引っかかりませんか?
かかるよね???
「……いま丁度
心配は無用だったらしい。
倒れていた彼女は、ゆっくりと浮き上がる。
横になっていた車椅子も元の位置に戻る。
そして何事もなかったかのように、椅子に座った。
「サイコキネシス……!?」
「これはあまり期待しない方がいい。エルの使えない魔法は、ミキ君も使えない可能性が高いからね」
左頬を真っ赤に腫らしながら、博士は平然と続ける。
平静には戻ったようだ。
「まだ続けるのその話。ごめんねミキちゃん。もう一回よく考えて」
「やります」
「ええ!?」
「ほらね? だから言っただろ?」
エルは私を睨み付ける。
一瞬たじろいだが、私も目を逸らさない。
「
「そのときは自分でなんとかする。それに本当に困ったときは、きっとエルさんが来てくれるでしょう?」
「だから、私が行けないこともあるって」
「――――信じてるから」
「……会って二、三日しか経ってない相手をそこまで信用する根拠は何?」
「私と会ってからの貴女の行動が示してる」
「闘ってるうちに熱くなって、目的を忘れちゃうような私を?」
「うん」
「今回は間に合ったけど、次は間に合わないかもしれない」
「絶対に間に合う」
「絶対はない」
「絶対だ」
「どこからそんな自信が」
「なんとなく」
「なんとなくで命を預けるのか!?」
「預けるよ」
「……無責任」
「残念だけど」
あの闇の中で、貴女が手を握ってくれたから。
「死ぬ覚悟を終えて目を瞑っていた私を、無責任にも助けてしまった自分を恨んでね」
「ッ!!」
逃亡を許さない追撃に、エルの顔が赤くなる。
「ふふ、こりゃ期待に応えるしかないんじゃないか?」
「おかしいでしょ。魔法初心者の地球人とコンビ組んで、護衛しながら、一人前に育てろって?」
「端的に言えばそうだね」
「ミッション難易度が高すぎる。私まだ14歳なんですけど……他に適任がいるでしょう?」
まさかの同い年だった。
「残念! 事情を知っているエルとしか組ませるわけにはいかないのだ」
「あ………………もーーーーーーーーーーー!!!!」
頭をかきむしっている。
綺麗な髪の毛が台無しだ……。
再びこちらを睨んでくる。
「言っとくけど! 私と組むってことは私の下に付くってことなんだからね! パシリみたいなモノ! それでもいいの!?」
「うん」
「そくとう!! 即答じゃん! そこにプライドはないのか!」
「魔法教えてくれるならいい」
「魔法大好きかよ!!! 魔法の訓練だけじゃなくて、腹筋腕立てとかもやってもらうからな! 各100回ずつくらい!」
「最初20回からでもいいですか?」
「少なっ!! そこは嘘でも頑張りますって言っとけよ!」
「嘘はよくないと思います」
「何故ここで正直者アピールなんだ! あーーーーーもーーー分かった! やりますよ! やってやりましょう! それで満足なんでしょう! ねぇ!!」
「よろ ^^」
「チャットか!!!」
博士は爆笑している。
愉快。
「ぜぇぜぇ……もう感情がぐちゃぐちゃだよ……驚いたり怒ったりツッコんだり……」
「「お疲れ様です」」
「ハモるな!!!」
「んむにゃ、アレ? 終わった?」
あんな激闘があったにも関わらず、爆睡していた能天気ッズ望ちゃんが目を覚ました。
「よく寝てましたね」
「おはよー」
伸びながら身体を起こす。
「いろいろ話はついたのー?」
「ついた」
「よかったねー」
間の抜けた応答。
和む。
「お二人とも、ミキが失礼な事言いませんでしたか? って博士、そのほっぺは?」
「これは私の不注意による事故みたいなものだ。気にしないでいいよ」
「わお。それはご愁傷さまです。エルちゃんは……なんか具合悪そうだけど大丈夫?」
「だ、大丈夫。仕事してただけ……」
「私たちと変わらない年でお仕事なんて……お疲れ様です」
「…………ありがとう」
「?」
妙な間に望は首をかしげているが、お疲れ様ですという単語はさっきツッコんだばかりだ。
言葉のチョイスが絶妙すぎるよ我が親友。
「じゃあ、もう帰ってもいい感じ?」
「ああ。今日はわざわざ来てくれてありがとう」
「はぁ……いろいろ方針が決まってよかった……よ」
「ありがとうございました」
4人そろって頭を下げる
「くくく、明日から頑張りたまえよ、少女」
博士は少しだけ、さっきまでの悪人面に戻っていた。
だから応えてやろう。
「――――少女じゃありません」
そういえばすっかり忘れていたが。
自己紹介がまだだった。
「
大きく息を吸い込んだ。
「これからよろしくお願いします!」
六色会議、これにてお開き。
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