白-②
曇天。
扉の先は曇天であった。
おかしい。さっきまで晴れていたはず。倉庫にいた15分足らずでここまで曇るか?この世界にもゲリラ豪雨があるのかな…
問題はそれだけではない。肝心の人間が、またもいない。人っ子一人いない。
何より、見渡す限りの荒野。荒野でしかない。
……マズイのでは?すごくマズイのでは?
顔が引きつっているのが自分でも分かる。
後ろ歩きして倉庫に戻ろうとする。
壁。
可もなく不可もない、壁。
ホログラムの壁は閉じられていた。
「あの…」
背中で触ったからいけなかったのだ。手で触ればきっと開く。てか開け。
壁をベタベタ触る。あっちこっち触る。舐めるように触る。
開かなかった。
「あああああああああああああ!!!!」
私は壁を思い切り蹴った。
自業自得なのは分かるけど!ここまで酷い仕打ちじゃなくてもいいでしょ!ちょっとワープ体験したかっただけなの!反省したから許して!
壁はうんともすんとも言わない。許してはくれないらしい。
壁にキレてもどうにもならない。『壁にキレる若者!』的な記事を書かれてしまう。まずは落ち着こう。
「……この壁」
冷静になってよく見ると、その壁はコンクリートでも石でもレンガでもない、土でできているようだった。こんな大きな建造物に土を使うか?
さらにもう一つ。
壁は上にも横にもカーブを描いていた。
「これってドーム…?」
野球に興味のない私でも東京ドームくらいは見たことがある。
進撃の巨人のように円形に形成された壁かとも思ったが、垂直に立っているわけではないのでドームだろう。(ドームというより土でできたクソでかいかまくらと呼ぶべき?)
さて。
病院内で見た晴天。
荒野から見える曇天。
そして今私の状況。
ここから導き出される答え。
さっきまでいた空間の晴天は偽物、こっち側の人間は地球人をドーム内に隔離しており、私はその隔離から抜け出してしまった。
こんなところだろうか。
つまるところ、マズイ。
今は何もない荒野だが、日が落ちれば巨人やゾンビがわらわら集まってくることだって考えられる。ドームの外の空気は地球人にとって毒ガス…そんなこともあり得る。
なんにせよ、早めにドーム内に戻らなければ。
ウォールマリアにだって入り口はあった。壁沿いを歩いていたらきっと見つかる。私は壁を反時計周りに走り始めた。
「リーダー、キャリーさん、ちょっと」
「なんだ」
「どうしたの」
「壁から女の子が出てきました」
「んだと」
リーダーは双眼鏡を奪い取った。
「マジじゃねぇか」
「ジャヤさん、どうしますか?」
「…中から奴らが出てくる前に連れて帰るぞ」
「「
走り始めて1分を立たずして、不意に音が聞こえた。
タン。タン。タン。
ドームの中からではなく、地平線の先からでもない、荒野の外から。
タン、タン、タン。
私は足を止め、辺りを見渡す。
タンタンタン。
音は少しずつ、否。
もう、すぐそこまで迫っていた。
『よぉ地球人』
声は空から聞こえる。見上げると男二人、女一人が浮いていた。1秒前までそんなところに人はいなかった。装置なしで瞬間移動もできるし人の飛行も可能らしい。
『悪いがあんたは人質だ。おとなしくすりゃ乱暴はしねぇ』
『そのセリフ、犯罪者みたいですね』
『うるせぇ』
私には彼らの話している内容が分からない。だが分かることもある。
アレらは敵だ。ビリビリした空気、見下した態度、そしてあの目。
昔嫌というほど味わった。最近はすっかり浴びなくなったが、忘れたことはない。
ダメだ。
あれはダメだ。
頭が
悪意に関しては全身に穴が開くほど浴びていたが、殺意を浴びたことはない。私を殺す気があるかどうか、現段階では判断出来かねる。
――逃げられるか?
無理だろう。相手はワープできるし、空中に立てるような化物だぞ。無理に決まってる。
――救助は来るか?
分からない。私がドーム外周に出た時点で人が来なかったことからも、救助がくる可能性は低い。
――ではどうする?
最悪なのは殺されることだ。それが一番取り返しがつかない。最悪は回避しろ。
最も希望のある、最善策をとれ。
「あの」
『ん?』
会話して殺意があるかどうか確認しつつ、あわよくばドーム内または外から救助が来るまで時間を稼ぐ。確率が低くても0じゃないなら、それでいい。多分これが今の私にできる最善策。
たとえ来なかったとしても、できるだけ抵抗しない。それによく考えたら、アイツらが私を殺すのは容易だ。それをしていないのは殺せない理由がある、攫って人体実験される方が確率的には高そう。
やはり生存最優先。
もちろん、全部私の憶測だ。アレらが味方というオチも…それはないと思うけど。
一度死にかけたお陰か、ピンチになったときの思考回路が随分とはっきりしている。足も震えてない。短時間で人は成長できる。
絶賛成長期の中3女子だぞ私は。
「私、あなたたちの言ってることが分からないんですけど」
『…おいキャリー、あいつなんて言ってる?』
『いや私も分かんないです』
『自分もさっぱり』
三人は困惑しているように見える。もしかして向こうも私の言葉が通じてない?
『あいつ、俺が言ったこと伝わってるよな? あの白い腕輪が言葉を翻訳してくれてるんだよな?』
『報告ではそのはずですけど…』
『あの子も困ってるように見えますね』
『そりゃ困るだろ。これから誘拐されるんだから』
『その、「あの人たち何語話してるんだろう?」的な困り顔じゃないですか?』
『……………』
『……………』
『……………』
向こうも私の言ってること分かってないなコレ。困り顔で一斉にこっち向いたもん。この人たちマヌケなのでは?身振り手振りでコミュニケーションとってれば以外に時間稼げそう。
「あのー私この中に戻りたいんですけど! 出入り口知りませんかー!」
笑顔で呼びかけながらドームを指さす。
『あの子めっちゃ笑顔ですよ。絶対分かってないですよ』
『
これはワンチャンある。(パリピ用語)誰か今のうちに…
「すいませ――」
『まどろっこしい、やれ』
『
顔のいい男(望がいたらイケメンだと騒ぎそうだ)が部下っぽいひょろい男に何か言った途端、空気が変わった。
時間稼ぎは失敗したらしい。これだから短気は嫌だね。短気は損気だぞ。
私はしゃがんだ。今できる最善策をとるために。
タンッ。
その音ならさっきも聞いた。おかしいと思ってた。私もワープを使ったから勝手に奴らもそうだと思い込んでた。その音は随分遠くから聞こえたのに、気づいたら上空にいたから。
まるで瞬間移動みたいに唐突に。でもそれじゃあ荒野の外側から聞こえた音はなんだったんだ。
だから。
もしワープじゃなくて空を跳ねるように――私を助けた少女みたいに跳んでいたなら。
もしドームの周りにも結界のような何かが張られてて、この無限に続く荒野も幻覚で、奴らはそれをこじ開けて無理やり侵入してきたのだとしたら。
あの足音も突然現れた理由も説明がつく。
それなら。
私にも一発お見舞いしてやるくらいのことはできる!
足元にあった砂を掴んで前方に叩きつける。
「がっ⁉」
すんでのところまで迫っていたひょろい男の目に直撃した。よっしゃあざまぁみろ!
無抵抗?嫌なこった!何もしないで言い様にされるのはもうコリゴリなんだよ!
目をやられた男が壁に激突するより早く、私は外周を全力で走り出す。
やーいバーカバーカ!子供をナメてるからそういうことになるんだ――
『思ったより活きがいいわね、お嬢ちゃん』
女は私の前に立っていた。髪色は黒寄りのグレー。背は私よりも高い。165センチはあるだろうか。
『アナタが我々の言葉を分かった上でとぼけているのか、本当になんて言っているか分からないのか、どちらにせよ行動で示すのが一番よね?』
女は私に何か言い放つと、右手をこちらへ向ける。
この瞬間、目の当たりにする。
【魔法】
何もなかったはずのその右手に剣が形成されていく。
剣は私の喉元に突きつけられた。思わず両手を挙げる。
降伏である。
『殺すなよ』
『脅してるだけです』
イケメン男が上空から降りてきた。
『全く、手間かけさせんじゃねぇぞガキが』
男は迫ってくる。
『これ以上暴れんなら容赦しねぇ、と言いたいところだが』
男は不敵に笑い、そして。
右手の拳を握る。
『運搬中に暴れられたら面倒だ。静かになってくれや』
私は男を睨み付ける。目は逸らさない。剣を突きつけられていようが、そこだけは絶対に曲げない。
災害はどうしようもない。自然の力に抗うには人間は小さいから。
でも相手が人間なら、私は絶対に自分を曲げないし、へし折れない。
自分に誓ったのだ。もう二度と、脅威をもたらす者には屈しないって。
そこは譲らない。
そこは譲れない。
人って殴ると殴った方も痛いんだぞ!さぁ殴って骨折しろ!指の骨折れろ!
男は拳は振りかぶり――
「外壁に侵入者です!」
「あ”ぁ”っ”⁉ 数は!」
「3人…と、え⁉」
「どうした!」
「地球人が外に出てます!」
「はぁ⁉」
司令官はズームアップされたモニターを確認する。
「どこから外に出たんだ⁉ いやそれよりも早く救出に」
「―――
監視室の前をたまたま通りかかっていた少女はそう叫び、風のように走っていく。
「天井開けろ! 応援も急げ!」
少女は走る。柵をジャンプし、さらに
天井がゆっくりと開く。小さな穴しか開いていなくても、少女一人が通るには十分な大きさだ。
勢いよくドームの外へ飛び出すと、モニターで見たポイントへ急降下する。
そして。
『――ちぃっ!!』
拳が私に当たることはなかった。男は頭上から降ってきた「何か」を避けて後ろに引いたのだ。
『お前は! っっがはっ‼』
女が発した言葉を言い切る前に「何か」、ではなく「誰か」は女の腹を蹴り飛ばした。
あまりにも速すぎて全く見えなかった。
見えなかったがしかし、「誰か」のその顔は見えた。
その顔を見間違うはずがない。
目に焼き付けたばかりだ。
「全く、あなたとは縁があるみたい!」
聞いたことある声。
――諦めていた。
きっと
その程度、たかだか14歳の覚悟などその程度だ。中学生の強がりだ。
天才的なIQはないし、顔がカワイイわけでもない。足も遅いし、友達だって一人しかいない。
平凡、いや平凡以下だ。
誇れるものなんて何一つ持っちゃいない。
そんな欠陥品の、空っぽの私なんて、どこで死んだっていい。
だから反撃した。
あのまま突っ立ていればよかったものを、わざわざ怒らせることをした。
人体実験されて敵の糧になるくらいなら、やっぱりあのとき地球と一緒に死んだ方がよかったんじゃないかとも思った。
でも、それなのに。
どうしてまた、見つけてくれるの?
どうして貴女は―――
私を助けてくれた彼女だった。
地球から無事に帰ってきていたらしい。
「壁際に寄って!」
慌てて指示に従うと、少女は私の前に立つ。
「ケガは!」
「な、ない」
「じゃあ今回も間に合った!」
背中で顔は見えなくても、その声は喜びに満ちていた。
生存を喜んでくれる人がいるだけで、今の私には十分すぎる幸せだった。
『こいつぁ随分と大物が出てきたな』
男は先ほどまでのニヤついた笑みから、引きつった笑いに変わっている。少し震えているようにさえ見える。
『うわっマジかよ』
一般地球人に目をやられた上に壁とキスした哀れな男も起き上がってきた。鼻血が出ている。
『ゲホッゴホッ、え、エリュシオン・スカイノート…!!』
女は呻き声を上げながらこちらを睨み、ゆっくりと立ち上がる。口から血ではない液体を吐いている。人って本当に胃液吐くんだな…
『さて』
少女は小さく呟く。
背後は壁。右には鼻血男。左には胃液女。
正面にはキレ顔イケメン。
これが俗に言う、四面楚歌。
「あの、後ろの壁開いたりしないです?」
変な敬語になりながら少女に問う。
「壁? 確かそこは開かなかったと思う…」
そんな調子よく展開は運ばない、と落胆した次の瞬間。
「んん? ブハッ!!? もしかして食糧庫に飛んでそっから出たの⁉ んはははははははははははは!!!!」
爆笑である。こんなピンチなのにめちゃめちゃ笑われてる。恥ずかしい。
「な、何がそんなにおかしいの」
「いやーごめんごめん」
笑いをこらえながら彼女は振り返り、そして笑顔になる。にっこりと。
「あなたって、本当に運がいいのね!」
『やれ!』
『『
今この状況でどの口がそれを言うかと私がツッコむ前に、イケメンの叫びと共に左右の二人が突っ込んできた。(物理的に)
鼻血男は素手だが、胃液女の方は剣を持っている。対して少女は素手のまま。
「あ、危な」
ガギン。
少女は無事だった。どころか右掌で拳を、左手で剣を受け止めていた。左手に出血は見られない。
今の音はなんだ?まるで金属同士がぶつかるような…
「んっ!」
鼻血男の拳をそのまま掴むと、左側にぶん回す。
『あぁぁぁ⁉』
『ちょっ!』
叩きつけられた鼻血と胃液は彼方へ吹っ飛んだ。
あの小さい身体のどこにあんな怪力があるんだ。
驚くのも束の間、
『伊達にSランクじゃないってわけかい』
『…当然でしょ』
少女は右手をイケメンに掴まれる。
『私が出てきた段階で、引くのが正解だったんじゃない?』
『確かにな』
二人は何か話しているようだが、言語が分からない。
――あれ、あの子日本語喋ってたよね?
『自分がどこまでやれるか試してみたくてなぁ!』
ガギィン!
顔面に向けて繰り出された右拳に合わせ、左腕でガードする。
またも金属音。
『かってぇなオイ!』
『鍛えてるもんでね!』
ギリギリギリ。
金属の擦れる音。
身体を金属レベルにまで硬くしているのか?
男は右腕に力をこめているが、少女の左腕は動かない。
『…むっ⁉』
掴まれている少女の右腕が光り出す。
イケメンは手を放すと後方へ跳んだ。
『白…光魔法!』
『あんたは使わなくていいの?』
左手も光り始めた。両肘から下がピッカピカである。
一方イケメンは、両腕がバチバチしている。電気?
ちょっとかっこいい。
『受けて立つ』
『上等』
言葉は分からないが、状況は分かる。
20代そこらの男が、私と同じくらいの少女に対して挑んでいる。
私に対しての
正面から突っ込んできた相手を、守りつつ殴る。
傍から見ると完全にボクシング。しかしこれはボクシングではない。
『ほっ!』
『ぐっ!!』
少女が蹴りあげると、イケメンは防御しきれず空へと舞う。だがそこからが凄かった。
吹っ飛んだイケメンは空中で体勢を立て直し、そのまま空気を蹴って跳ねる。少女もそれを追い、空を跳ねる。
ドラゴンボール。
その空中戦はまるで、アニメの世界を目の当たりしているみたいだった。
これが異世界か。
二人は殴る蹴るを繰り返していたが、男の方が先に息を切らし、空中でバックステップをする。しかし少女はそれを許さず、追撃して殴りかかった。
ゴォン。
『ぐっ! つえぇ…!』
『もうおとなしくしろ』
実力差は歴然。あまりにも一方的で圧倒的。
弾けるような金属音は失われ、鈍い音に変わっていた。
男側の硬化が弱まっている。そんな風に感じた。
少女は光る左拳を構える。
恐らく相手はこの一撃を耐えられない。決着である。
『どうせ俺は捨て駒さ』
苦悶の表情を浮かべていた男が、笑う。
『だが、仕事はやる』
『……? …………!!!! しまっ』
彼女は私の方を振り向く。その顔に冷静さはなく、取り乱していた。
私は見上げていた顔を無意識で左側に向ける。
鬼の形相をした胃液女がこちらに一直線で向かってきていた。
剣はいつの間にか持っていない。出し入れ自在か。
『クソッ!』
少女も身体を
水。鉄砲水。
胃液女の後方、鼻血男が妨害を行っていた。
両手から水を噴き出している。
少女は飲み込まれるも見えない何かで水を吹き飛ばし、再びこちらへ向かう。
しかし、まだ遠かった。このままでは胃液女が先に私の元へ着く。
諦めるな。
この命は彼女に拾われた。
今すぐそこに彼女がいるのに、私が諦める訳にはいかない。
走っても、逃げられない。捕まる。
目潰しは…しゃがんだ時点で警戒される。最初の1回がまぐれだった。2回目はない。
胃液女は私の顔面に向かって右手を伸ばす。
私は左足を踏み出す。右手を大きく開く。
距離は5m、3m、2m、1m。
(反撃する気か⁉ 魔力硬化も無しに! いいだろう、その右手砕いてやる!)
私の腕力で金属を全力殴打すれば右手が折れるだろう。
最善策。
目潰しもダメ、殴るのもダメ。
ならば叩く。
狙うのは、耳。
耳への張り手なら硬化してたってちったぁ効くんじゃないのか!
さぁ。
タイミングを合わせろ。
叩きつけろ!
視界が陰に覆われる。頬と額に
バチィン!!
「は! か⁉⁉」
陰が晴れる。
女がよろける。
予想通り、耳周りは驚くほど硬かった。手首がもげそうなほど痛い。
が、痛がっている暇はない。
私は身体をひっくり返し、今度は後方に一歩踏み出す。しかし。
その先へ、進めなかった。
吐き気を催すほどの恐気。
『殺す』
殺す。そう聞こえた。
その言葉に、思わず振り返ってしまう。
手には剣が握られている。
燃える、
離れていても感じる、
ああ。
先ほどまで彼らが私に向けていた視線に、殺意など一切なかったのだ。
今のこの女を見れば一目瞭然である。
――打ち止めだ。
もう策は思い浮かばない。身体も頭も動かない。
詰んだ。
終わった。
ごめんなさい、名も知らぬ恩人。
せっかく拾ってもらった命を目の前で散らしてしまって、本当に申し訳ない。
どうか悔やまないで、私の運が悪かっただけだから。
4歳の男の子にできることが私にはできなかった。
お礼は後回しにしないで言っておくべきだね。
二度目の走馬灯は流れなかった。
――考えてみれば偶然だった。
彼女の腕が光っていたことも。
二人の戦いがドラゴンボールみたいだと思ったのも。
私が諦めの悪い地球人だってことも。
何より、さっき使った目潰しという技。
元は天津飯の技だったらしい。私的にはクリリンが使ってるイメージの方が強いけど。
本来は頭部に手をかざしながら使用する、相手の視界を奪うその技の名は。
「『は?』」
剣の切っ先が私の肉体に届く、すんでのところだった。
辺り一面をまばゆい光が覆う。視界が白に包まれる。
静寂の
だが視界は真っ白なままだ。何も見えない。
「あああ!! あああああああああ!!!!!」
女の悲鳴が聞こえる。
『雑魚地球人が!! どこに行きやがった!!! ぶっ殺す!!!!!』
剣を振り回してるようだが、距離が掴めない。早くこの場を離れないと…
「ありがとう」
女の金切り声の中、静かに聞こえたその声に。
私は笑う。
「遅いよ」
「ごめん。でもおかげでまた間に合えた」
閉ざされた白のなかで、ほんの少しシルエットが見えた。
それを確認すると、意識が遠のき始める。
……この短期間で何回気絶するんだよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます