その結末

「おいおい、またかよ」


彼は暗闇の中で声をあげた。実はこの会社では停電は珍しいことではない。社長が電気の契約アンペアをケチるため、電子レンジや掃除機などを同時に使うと、すぐにブレーカーが落ちるのだ。

この停電がどれほどのタイムロスに繋がるのかを考えながら、彼は給湯室のブレーカーを上げに向かった。


しかし、ブレーカーに異常はなかった。窓から他のビルの様子を見るが、灯りはともっている。ではこの停電はいったいなんだ?


そこにディレクターが様子を見に来た。彼は、何も異常がないことを伝えた。


「これじゃ仕事ができませんね」

「とりあえず部長に報告しとくか」

「報告したところでどうにもならないと思いますけど」


結局、停電は朝になっても続いていた。デッドラインを超えてしまったのだから、これは賠償問題だ。始発電車で出社してきた部長は、社長とともに先方に謝罪に行くと言った。

しかし、出社時間になっても社長が来ない。携帯にも連絡が繋がらない。


その日、ガラの悪い男が会社を訪ねて来たことで、社長が夜逃げしたことがわかった。男は借金の取り立てに来たという。電気料金の支払いは、少し前から滞っていたそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あるゲーム開発会社の悲劇 六地蔵 @goyaningen

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ