あるゲーム開発会社の悲劇

六地蔵

正念場

もう10年以上前の話である。彼はゲーム開発会社でプログラムのリーダーとして働いていた。とは言ってもメーカーなどの大手とは違い、下請けがせいぜいの中小企業だ。


その日はいわゆる正念場だった。ゲーム内容へのテコ入れを重ねに重ね、さらにはそこにバグも加わり、本来の締め切りを大幅に超過していた。

明日の朝10までにROMを焼き、バイク便に手渡す。これが本当の意味でのデッドラインだった。今では考えられいほどアナログなやり方だし、セキュリティ的にも問題がある。しかし当時はこれ以外の方法がなかった。


時間は午前2時を過ぎている。このバグをとった後、仮眠中のスタッフを叩き起こし、総がかりでチェック。正常に動作することを確認し、その上でROMを焼く。ギリギリだが勝算はある。それに、いろいろあったが最終的には満足のいく作品ができたと思う。だから、一刻も早くバグを潰して…。


その時、視界が闇に包まれた。

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