第2話 誘惑エイリアン

「いててて、あっ、あの、大丈夫ですか?」




 制服を着た女子が心配そうにミツルに声をかける。





「だ、大丈夫です。」



「あっ、ちょっと顔見せて下さい!鼻から血が・・・」



「ぐぇっ、だ、大丈夫だよ?これただのケチャップだから・・・」



「なぁんで鼻からケチャップが出てくるんですか!ちゃんと見せてください、わたし保健委員長なので手当てできますよ。」



 

 この一瞬、ミツルの中で強烈な葛藤が生まれていた。




 この女子恐らくJKだ。保健委員長のJKが俺に対して手当てをしてくれると言っている。普通に考えて俺がこの先の人生で保健委員長のJKに手当てをしてもらえるなんてチャンス二度と来ないだろう。手当てってことはめっちゃ至近距離になるんとちがうか!?



 しかし、そんなことをしているうちにバスに乗り遅れてしまうだろう。この辺のバスは一度逃すとなかなか次が来ない。次のバスが来るまでの間に有能警察が有能っぷりを発揮しやがるかもしれん。



 JK保健委員長からの手当て か バス か・・・。絶望のデッドか至福のアライブか。その葛藤かっとうを制すきっかけは、ミツルの目線にあった!




―――JKの絶対領域。




これを認識して一秒後、ミツルはJK保健委員長からの手当てを決断した。



―――――




「・・・これでよしっ!もう大丈夫ですよ〜」




 止血が完了し、JK保健委員長は手当てに使った用品を救急箱にしまう。無論、バスは行ってしまった。




「あ、すいません。名前言ってませんでしたね。わたし、村雨学院高校の2年、金森シズクと申します。またケガとかしちゃったらいつでも保健室に来てくださいね!」




 ミツルは、このシズクが一体何を言っているのか理解できなかった。彼女の通う学校に縁が無い以上、その学校の保健室に行くことなどあるはずがないからだ。疑問は残るが、長居したくなかったので立ち去ろうとした。




「ありがとう、じゃあさようなら。」




 礼を言い、シズクに背を向ける。すると、




「何言ってるんですか、高校そっちじゃありませんよ?」




 彼女が何を言っているのか、ミツルはしばらく考える時間を要した。

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