ギルティ エリート
明日原たくみ
第1話 はじめまして犯罪者
「・・・ここで臨時ニュースが入ってきました。きょう未明、東京都
殺害されたのは
犯人は
まだ犯人の手がかりが判明していないのは不幸中の幸いだが、いずれ何か証拠も明らかになっていき、やがては逮捕されてしまうだろう。走りながら手元のワンセグで報道を見る男、「星野 ミツル」はその事件の犯人だ。
金が欲しくて、一か月前より水上市周辺の金のありそうな家々に侵入し、金目の物を盗んでいた。これを何度も繰り返して慣れていくうちに調子に乗って、知りもしない事務所に侵入したのだが、物色中に従業員の岡田に発見され、
腹部から出てくるおびただしいほどの血と、死にゆく人間の姿を初めて目の当たりにしたミツルは、かつてないほどの後悔に襲われ、どす黒い感覚を味わった。しかし自首する気にはなれず、怖くなって逃げだした。要するにクズだ。救いようのないクズだ。社会不適合者も
しかしこのクズ、このあと逃げている最中に警察に捕まることはなかった。先に言っておくと、彼はこのあと偏差値42の高校に赴任することになる。
―――――
「とりあえず朝イチのバスに乗って水上市を脱出しよう。6時23分のバスだな。それでひとまず栃木辺りに向かって・・・」
コンビニで購入した、朝食の欧風カリーパンを食べながら段取りを考える。なかなかシャレオツな朝食だ。他人の金でシャレオツな朝食をとるクズの姿がそこにはあった。
「やっべぇ、意外とバス停まで距離あるじゃねぇか。間に合わねぇかもしれん!」
計画的に空き巣するわりには、こういうドジもたまにする。その計算高さが悪事にしか発揮できないというのは、彼が
ミツルは走る、バスに乗り遅れぬように。食後に。しかもよりによって消化の悪いカリーを食った後に走る!
当然のことながら、人間である以上いくらクズであるとしても食後に激しく動くと「
「は、腹がぁ・・・」
腹は痛くとも、スピードは落とさない。弱音は吐けども走りを止めない。これぞミツルの精神力!ミツルは鬼教官からの厳しい訓練を受ける軍人並の精神力で腹痛に耐えている。えらいぞ人殺し!
「ここの角を、左だぁ!」
左に曲がればバス停はすぐそこ。ゴールは直前、勝ちは確定した!
・・・ように思われた。
「ぎゃあ」
「あびゃああ」
ミツルは、左の角から右折してきた女子と衝突した。
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