終末看護師

ふと過ぎ行く数瞬の合間に

浮かび上がる不確かな情景に一人

明け方の陽光に照らされる淡い影を抱くのです


熱に浮かされて地上を離れることに躊躇いはなく

先程まで見上げていた星々の幾星霜を馳せては

自身のちっぽけな呼気を聴くのです


それを繰り返していると星は燃え尽きて宙を染め

私たちを燃やす光が溢れ出します

私は眼を焼かれて

夜の断末魔が貝殻の潮騒のように耳に残るのです

朝はやってくるのです

誰にでも無慈悲に

夜は過ぎ去るのです

誰にも看取られずに


3578226番 手記『潮騒』P32「終末看護師」

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