第5話 幼馴染

「マリちゃん?マリちゃんなのか?」

「覚えていてくれたんだ。ありがとう」

久しぶりの再会に、時間が止まった。


しかし、疑問が過る。

「しかし、マリちゃん。いったいどうして?」

「それわね・・・」


マリちゃんは、少し間を置いて話し出した。

「裕彦くんは、パラレルワールドって知ってる?」

「聞いた事あるけど、詳しくは説明できないな・・・」


マリちゃんはさらに続けた。

「今の時代、つまり元いた時代ね。」

「うん」

「プロ野球の2チームが合併したよね」

「ああ。2004年だったかな・・・」

「その2チームが、まだあったらと、考えた事はない?」

「よくあるな・・・」

「20××年の時代に、その2チームが存在している世界がある。

それがパラレルワールドよ・・・」


「わかりやすい説明を、どうも・・・」


「あのね、裕彦くん」

「何?」

「私、ずっと考えていた・・・もし、裕彦くんとお別れしなくて、

今も仲良しさんだったら、素敵だろうなって・・・」

「確かに、時々おもうよね」

「時々?」

「いえ。いつも思います」

「よろしい」

何だか懐かしい、遠い昔も、こういうやりとりをしていたような・・・


「ねえ、裕彦くん」

「何?」

「裕彦くんは、どう思う」

「何を?」

「君が生きていた世界を、続けて生きるか?

それとも、パラレルワールドの世界を新たに生きたいか?」

「それって、あの2チームが存在いている世界ってこと」

「ちがうわ。もっと広い意味」

「広い意味か・・・」

俺は悩んだ・・・


「実は俺・・・」

「言わなくていいわ」

マリちゃんは、俺の頭に手を当てた・・・


しばらくして・・・


「ありがとう。裕彦くんの気持ちはわかったわ。

今日は会えてうれしかったよ」

「マリちゃん・・・君は一体・・・」

「それは、ヤボ。じぁあね・・・」


その一言とともに、意識が遠のいていった・・・


「・・・くん」

「ZZZZ]

「忠彦くん、起きて」

その声に、目を覚ます。


「あっ、目が覚めた?」

「マリちゃん?ここは?」

「寝ぼけてるの?学校の教室よ・・・」

「教室?」

見慣れた風景が、目に飛び込んでくる。


「授業中、ずっと寝ていて先生、怒ってたよ」

「そんなに寝てた?」

「うん」


あれは夢だったのか?


「いいよな幼馴染は?」

友人が冷やかしに来る。

「朝、起こしに来てもらってるんだろ?」

「そんな漫画みたいな事ないよ」


幼馴染か・・・いいもんだな・・・


幼稚園の頃に引っ越す予定だったが、急遽中止になり、以来ここに住んでいる。

マリちゃんとは、そのころからの付き合いだ・・・


「裕彦くん」

「何?」

「何の映画、連れてってくれるの?」

「映画?」

「約束したじゃない。放課後一緒に映画に行こうって・・・」

映画・・・共通の趣味として、ふたりで観に行っている。


「今、凄いのやってるよ。アクション映画の新作」

「よし、それ行こう」

幼馴染、いいものだ・・・


このまま。、年寄りに成っても仲良しでいたい。

そう願わずにはいられなかった・・・


今日は、プロ野球の優勝が決定する試合がある。

合併問題があったが、白紙に戻ってよかった・・・


今日は早く帰って、テレビで観戦しよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

平行世界 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る